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第66回岸田國士戯曲賞クロスレビュー

演劇クロスレビューは本来は若手劇団をレビューするのだが年に1度の特別編。
(でもコロナのせいで身動きできないので、これが本編になってる気もする)

岸田國士戯曲賞クロスレビューは、候補になった作品をレビュワーが10点満点で評価する。

前回のはこちら

今回の候補作は、この企画の立案者である公社流体力学が自分のnoteで紹介しているので参考にどうぞ。

今年の受賞作は山本卓卓『バナナの花は食べられる』と福名理穂『柔らかく搖れる』ですが、さてこの受賞、当然?それとも意外?どう判断したんでしょうか。
レビュワーはヤバイ芝居と公社流体力学です。

intro(ヤバイ芝居)
 Twitterでも書いたが『岸田國士戯曲賞』運営側のメッセージが良くも悪くも鮮明になってきた気がする。(その年の)演劇状況への「批評性」と戯曲の「多様性」と賞としての「話題性」だったり全てに目配せしてますよ、と。元々「作品賞」と「作家賞」と「新人賞」の狭間の賞なのでそれらは要素として含まれていたけども。運営側の推す候補と審査員の「演劇とは」のスリリングな戦いが、ここ数年の岸田。その流れで言うと(正しいかは別として)審査員を大幅に変える時期だと思ったりもする。ただの観客が偉そうにって言われたら、ごめちゃい。ちなみに上演は一本も観てません。今年も去年も予想は当てているから許して。始めます。

小沢道成(EPOCH MAN) 初候補
『オーレリアンの兄妹』
会場 : 下北沢駅前劇場
家出をした絆太と晃子の兄妹。2人はとある家に入り込む。何処からか声が聞こえるその家には最新の設備が整っており高価な服や豪華な食べ物が置いてあった。両親の暴力から逃げてきたのだ2人は不思議な家で過ごす。そのうち2人の間に不和が生まれる。

【ヤバイ芝居】
 『虚構の劇団』以降のソロアクトはまだ未見のまま、読む。まあ『ヘンゼルとグレーテル』(が原作)だ。魔女抜きの。不在なのか内なる存在なのか。父と母から支配されていた兄と妹が逃げだした先で(暴かれる)兄の支配から逃れようとする妹。で、終わる。構造の先が2人の別れしか書かれていないので「ここからじゃね?」と思った。後から小沢が中村中と共演する為のホンと知ったので描かれていない部分も2人の中では(余白として共有され)ビジョン化されているから舞台では別に気にならなかったんだろうな。そういう意味で「俳優が書いた戯曲」って腑に落ちるのが、何にせよオールドスタイル。誰にとって?。
4点。

【公社流体力学】
 ヘンゼルとグレーテルをモチーフにした作品。やがて、兄に暴力性の芽が見え始める一方で妹は独立をする。暴力から逃れ、前に進み続ける自立した女性を描く話。そういう作品は好きなのだが、思うのはコレここまでの長さ必要?という所。兄の暴力性が見えるまでの過程を描く為なんだけど。割と一般的な兄妹の風景にしか読めず。普遍的な兄に抑圧される妹から変わる話だとしても、ここまでの分量必要か?虐待を含める大きな暴力から逃げるを描くにしては生ぬるい。結果、20分くらいの短編でも成立できるよなぁという薄さが気になった。まぁでもエンタメとしてよくできてる。
5点
合計≪ 9点 ≫

笠木泉(スヌーヌー)初候補
『モスクワの海』
会場 : ニュー風知空知
老婆が一人倒れているところを見かけた女性は何とか助けようとする。しかし、周囲の人間は無関心だった。老婆は女性と話すと同時に、老婆の過去の出来事が描かれる。

【ヤバイ芝居】
 遊園地再生事業団と「宮沢章夫のエッセイ」の中でお馴染みの方だったので「影響あるかな」と考えて読んだら「影響ないってこともない」ぐらいの実に豊穣な文体。もう読むだけで面白い。字面とか行数だけで躍動感がある。上演を直で想像できる楽しさが詰まっていて(「俳優が書いた戯曲」って腑に落ちる。あれ?)出版されたら日本中で上演されそうな(題名がハイブロウ過ぎるかしら)そんな受賞作は最近ないでしょ?「戯曲は上演を前提に限定されない」のは知っていても別役やつかや北村想で演劇を始めた人間としてはそういうのも岸田の領分だと思う。俺の受賞作はこれ。10分あれば、どこまでも行ける。
7.5点。

【公社流体力学】
 ザ・静かな演劇という感じ。最初読んだ時は数々の先行作のフォロワーの一つという印象だったが、再読してみるとラストシーンに至るまでの道筋が見事に描かれている。倒れている老婆を助けようとする女性の声を無視する男たち。この作品において女性は老婆の息子を含めて男たちに冷遇をされている。老婆は弱い存在として描かれているが、最終的には誰の力も借りずに一人で立ち上がる。それまでの淡々とした過去回想の果てにこのダイナミックなシーンが鮮やかに描かれていて、そこから老婆を見届けた女性が飛翔するシーン。作中使われていた飛翔のモチーフが最後の最後に奇麗にはばたいた。
7点
合計≪ 14.5点 ≫

加藤シゲアキ 初候補
『染、色』(東京グローブ座)
 深馬は周囲から才能を注目されており、彼女もいる恵まれた美大生。しかし本人は鬱屈とした思いがあり深夜に街の壁へグラフィティアートを描いていた。ある日、自分のグラフィティが何者かによって書き足されていた。その犯人が真末という女性だと付きとめた深馬は、2人で合作をするうちに闇に沈んでいく。


【ヤバイ芝居】
 あらゆることに疎いので、あ、この人なのかって認識。読んだら予想を裏切らず「ジャンルとしては青春ミステリぽい小説の舞台化作品で戯曲ってよりはシナリオ」だった。一言で言えば「演劇らしくない」のである。じゃ「演劇らしい」ってなんだよ。コンテンポラリー演劇マナーで言うなら「そんないちいち名前は口にしない」とか「いわゆる説明的場面が多過ぎ」とか技術面だけでも引っかかるとしてだ「え、これが演劇ですよ」って世界線どころか世界は実際にあって、そこで暮らす人に「演劇ってのはこうなの!」って言語化できる?って話。頼んだよ、審査員。俺的に3点だけど7点の世界もあるので中間点。
5点。

【公社流体力学】
 如何にも商業作家の書いた作品という感じ。都合よく女性に惚れられる主人公に、ありがちな芸術と青春の悩み。出来の悪いライトノベル。しかし、作者は最後に世界が反転する真実をお見舞いする。何故、真末が惚れたのかも伏線として効いて来る。が、残念それは失敗する。今更手あかのついた実は主人公がおかしかったオチって。このオチはするにはもっと丹念に伏線を仕込まないといけないのに、それが弱いので唐突に感じる。そして、真実が明らかになった後に作中のなにもかもが反転しなきゃ駄目なんだけど、特にこれといったことが起きずに終わる。え?このオチ必要?候補になったのが不可解な作品。でも、毎年このレベルの作品が候補になるから風物詩だね。
4点
合計≪ 9点 ≫

瀬戸山美咲(ミナモザ) 3年ぶり4回目
『彼女を笑う人がいても』(世田谷パブリックシアター)
  新聞記者の伊知哉は東日本大震災の取材を続けてきたが、配置転換により継続できなくなった。そんな時、亡くなった祖父・吾郎も新聞記者だったと知る。1960年、安保闘争の最中に女子学生が命を落とす。彼女の死の真相を追う吾郎。2021年、伊知哉は吾郎の道筋を辿る。

【ヤバイ芝居】
 力作。丁寧な作りで細かい穴はない。それでも「記者」ってコスり倒された素材で傑作にするのならアクロバットが必要だと考える。過去と現在という設定がそんな影響しあっていなくて「シームレス」ってわざわざ書かれているくらいだから繰り返しに過ぎないってことなのか。確かに山場っぽい過去の記者と上司の会話むしろ今っぽいもんな。で、こういう「(静かな演劇とポストドラマを通過した)ネオリアリズム演劇」(だからそんな言葉はない)は劇言語で躓いちゃう。『染、色』もだけど「そんな風に人は喋るのか」みたいな。虚構性が強まってリアルが遠ざかる。今これ(安保)を書く意志と視点はリスペクト。
6点。

【公社】
 3.11と安保。どちらも権力に服従したジャーナリズムの敗北を描いており、これ読んで作者の意図が分からないという人はいないだろう。ここにあるのは、機能していないジャーナリズムへの怒りであり、それでも抗う人々への応援である。思想は立派だし、流石の技術力。ただ、なんとなく俺たちの戦いはこれからだ的打ち切りエンドに感じてしまうのは何故か。この終わり方では作中には怒りしかなく底が浅いようにも感じる。
5点
合計≪ 11点 ≫

額田大志(ヌトミック)初候補
『ぼんやりブルース』
 会場 : こまばアゴラ劇場、芸術文化観光専門職大学劇場 
 6人の人物がばらばらに発声する。それは言葉の断片からやがて音楽のように聞こえる。やがて、他愛もない会話やふと思いついた言葉たち、友人からの手紙が思い出されていく。

【ヤバイ芝居】
 フィクションでしかない言葉からリアルが立ち上る。戯曲には見えない形式から演劇が立ち上る。岸田における「これ戯曲?」史上最大の作品。よく最終選考にきたね。もう戯曲ってか、スコア。物語性を切ったのが、良い。前衛的な作風にコンサバ乗っけたらダメ。って言ったの岡田利規だっけ?「おーい、声聞こえる?聞こえない?聞きたいな聞いて欲しいな」ってだけの作品で、これは絶対に今のリアル。確かにぼんやりとだけどブルースだ。ブルースって基本は愚痴。って言ったの岡田利規だっけ?(んなこたない)スコアだけならブルハでも単純だけど、ブルースは加速していく。あ、ゆら帝はスコアで見ても変かも。6.5点。

【公社】
 一読して似てるなと思ったのはジョン・ケージの楽譜。あれは、楽譜という指示書であり芸術作品。これも同じで、戯曲という指示書であり芸術作品。文字の羅列は現代詩にも通じ眺めるだけで楽しいが、指示通り動けば作者の思う通り上演できる。読むだけで音やその空間までもが脳裏に浮かぶ。良い戯曲は私に上演させろと思わせる。これを読んでそう思わない人間はいないのでこれは最高の戯曲。音楽家であり演劇人でもある額田大志という男の面目躍如。でも、受賞となると・・・あまりにもパフォーマンス要素が強すぎて・・・こういう作品こそとるべきなんだけど。
8点
合計≪ 14.5点 ≫

蓮見翔(ダウ90000)初候補
『旅館じゃないんだからさ』
 会場 : 渋谷ユーロライブ
 閑散としているレンタルビデオショップ。そこに新人バイトとして雇われた初日に彼女がお客さんとしてやってくる。しかし、彼女が映画を7か月返却してないことが判明。しかも、それは彼女のカードで元カレが借りたものだったため、バイト先に彼女の元カレがやってくる。

【ヤバイ芝居】
 これをコントではなく演劇と見なす世代はもう溢れかえっている。と、啖呵を切らずとも純粋なファルスとしても評価はできる。三谷幸喜だってこれやりたかった筈って言い過ぎかな。これが最終選考に残るなら何年か前に地蔵中毒も行けたじゃんてのは言い過ぎだな。「滅びゆくレンタルDVD屋での恋愛模様」ってドラマで押し切った潔さ。これに何か付け加えると野暮なのよ。『コーヒートラベル』の設定を深めてレンタルCDも置いて映画のチョイス含めてもっと熱狂的にするとか考えられても野暮なのよ。この戯曲を青年団企画で演るの想像してごらん。ラストなんて『東京ノート』に見えるよ。言い過ぎだよ。
6点。

【公社流体力学】
 コントユニットがノミネートされる快挙。ビデオ店を舞台に、様々な人間関係が入り乱れる。その中心に低予算映画『コーヒートラベル』を置くのが良い。微動だにしない一般人が映り込むシーンはその説明だけでも面白い。冒頭の信玄餅のやり取り含め、ズレた感性は流石。しかし、爆発が足りない。テンポの良い会話が続くがそれをヒートアップさせるような大事件が欲しい。速度が足りない。あと、セリフ中心でト書きが少ないので若干読みづらい。劇団員が読むだけなら良いし上演には関係ないんだけど、こういう風に文学作品として評価する場だと読みづらさはマイナスかなと。
5.5点
合計≪ 11.5点 ≫

ピンク地底人3号(ももちの世界)初候補
『華指1832』
会場 : in→dependent theatre 2nd
京都でダイナーを経営する桐野京子は聴覚障碍者であり、聴覚能力のある息子ひかると暮らしていた。 ある日、ひかるは恋人の優子を連れてくる。意気投合する京子と優子。それと同時に京子と亡くなった夫との生活も同時に語られる。2つの時代が進む中、優子に隠された秘密が明らかになる。

【ヤバイ芝居】
 レイ・ブラッドベリ『華氏451度』のオマージュ(じゃなかったらビビる笑)であろうタイトル(何で指で何で1832かは読んだら分かる)だからって直接の関係はないけど、抒情的なドラマとディストピア的描写が(『高架下』の存在が何よりも)ブラッドベリぽい。視覚障害者を(例えば「ディスコミュニケーション」みたいなドラマに落とし込むことなく)登場させる『手話演劇』というチャレンジが現代演劇として成功していると思ったので、これを対抗と予想した。Twitterで「演劇の観客は誰なのか」みたいな問いを見た(高野竜だっけ?)。「誰でも」だけでなく「誰か」に見せたい演劇もあるべきだと考える。
7点。

【公社流体力学】
 手話が第一言語として使われている作品であり、上演時に言葉を手話で演じて初めて意味を持つ戯曲である。でも、ただセリフを手話にしますではなく些細な動きにも意味があり、動きのト書きに対する作者の意識の高さを感じる。物語としては、過去と現在を行き来することによりサスペンス的に描き。また、ラットマン等ある種のファンタジーで混沌とした人間ドラマが描かれる。手話を用いたドラマ演劇なのでヘビーで固めというイメージに反して、(ヘビーな物語なのは当たりなんだけど)物語の面白さという部分が主張しており楽しめる。ただし、死の真相が明らかになるシーンははストレートでも良かったんじゃない?
7点
合計≪ 14点 ≫

福名理穂(ぱぷりか)初候補
『柔らかく搖れる』
会場 : こまばアゴラ劇場
広島県のとある家族、父を川での溺死を亡くした一家、夫を火事で亡くし居候することになった従妹とその娘。離婚して戻ってきた長男、ギャンブル依存症の次女が父の一周忌に戻ってくる中で、長女の樹子はパートナーである女性の愛と共にやってくる。

【ヤバイ芝居】
 上演時に好評がTwitterのTLを席巻していたけど、受賞には驚いた。戯曲を読んだ時は「それぞれのエピソードと人物を微細に描き切って、好感は持てる……でも」という感想。個人的に岸田の受賞作(に限らないか)「癖が強い」のは重要なんじゃないかと思っていて。過去の完成度が高くても取れない作品の共通点は「癖」が無いから。って鐘下辰男はどうなんだ。福名理穂はその癖がよく分かんなかった。これが面白かったのは「本当に」オムニバス作品なことでオムニバス作品が岸田を取るの初めてじゃない?(じゃない?)1話1話の距離感(まさにディスタンス)が現在だ。ズームの画面を思い起こす。無理に繋がらない。
6点

【公社流体力学】
 川で溺れた父の死が全編にわたりバックグラウンドで存在している。そんな父を殺した川はそばにあって、それがまるで人生の闇がすぐそばにある登場人物たちを象徴するかのよう。従妹、長男、次女と不幸の展覧会みたいなのが並ぶがドラマティックに描くことはなく淡々と描く。青年団リンクならこういう描き方だもんねという感じ。最後のセリフが恐ろしく感じた(考えすぎで怖いと感じたのは私だけかもだけど)が、まぁ私が面白いと感じたのはそこくらいで全体的には薄い味付けの割には素材の味がしない。でも、技術はあるよね。
 5点
合計≪ 11点 ≫

山本卓卓(範宙遊泳) 4年ぶり3回目
『バナナの花は食べられる』
会場 : 森下スタジオCスタジオ
 出会い系サイトで明らかにサクラだと分かる相手に応援メッセージを送った男、穴倉の腐ったバナナ。やがて、サクラの男と意気投合し探偵稼業を始めた2人は風俗嬢、他人の死が見える男、バナナの運命の人と出会い、そして定められたバナナの死へ向かう。

【ヤバイ芝居】
 岸田には「作家賞」の側面もあるので読み終わって山本卓卓でいいじゃんと。本命。テン年代小劇場のトップランナーである山本の3度目としては申し分のない作品。奇妙な柄の登場人物たちがメタ的な自意識を持ちながらも現在進行形の問題を切実に駆け抜けるという山本節が綺麗に決まる。過去作にあった辻褄合わせに見える終止符も改善された。弱者たちが個人から集団になり悲劇的な結末を超えて生も死も肯定するというドラマ(って書くとありがちだがありがちになってはいない)は一種の感動を呼ぶ。それでも7年前に『うまれてないからまだしねない』で「新人賞」の側面で山本卓卓が受賞した世界線を想像したりはする。
7点。

【公社流体力学】
 この人を熱心に追いかけてきてなかったからここまでエンタメが強いのを書けるんだと驚いた。突飛なキャラばかりだけど、皆愛嬌がある。バナナなんてキモいけど愛されるキャラという矛盾する造形だがこれが見事成功。何でバナナはこんなに愛らしいのだ。楽しいの中で、生きることの難しさや人と人の分かりづらさ、段々と色濃くなる死という人生の苦悩が盛り込まれているがそれを怒涛の勢いで読ませる筆力。面白いから8点と思ったが、バナナのとある行動で終わる幕切れのあまりの鮮やかさに1点プラス。受賞作は単行本出るから皆読め。
9点
合計≪ 16点 ≫

結果 (20点満点)
1位 山本卓卓『バナナの花は食べられる』 16点
2位 笠木泉『モスクワの海』 14.5点
2位 額田大志『ぼんやりブルース』14.5点
4位 ピンク地底人3号『華指1832』14点
5位 蓮見翔『旅館じゃないんだからさ』 11.5点
6位 瀬戸山美咲『彼女を笑う人がいても』 11点
6位 福名理穂『柔らかく搖れる』11点
8位 小沢道成『オーレリアンの兄妹』 9点
8位 加藤シゲアキ『染、色』 9点

Outro(公社流体力学)
 私は、超絶大本命を『バナナ』、対抗というか同時受賞するなら『華指』、獲れるか怪しいが私は好き枠の大穴に『ぼんやり』という布陣で予想をした。
 結果的には、1位の点数を出した『バナナ』が受賞し納得である。獲るべくして獲った結果である。問題は同時受賞が『柔らかく揺れる』という所である。
 福名のこの作品は同率6位である。割と下の評価である。福名の受賞で2年ぶり7人目の青年団からの受賞者であり、本当に青年団好きだなぁという感想。
 クロスレビュー的には1位が16点という評価は昨年の金山寿甲(東葛スポーツ)と同じであり、ここがクロスレビュー高評価の壁という感じがする。なので17点とか出たらそれはもう受賞確実なのだろう。というかやっぱり去年金山受賞でよかったよね。
 2位は昨年が13点だったのに対し、今年は14.5点と14点が3作品。同率6位の11点は昨年だったら同率で3位だった。
 そう考えると今年は中々の豊作だったのではないかと思う。
 だからこそ、同時受賞福名の驚きがある
 今年は、かなり意欲的な候補達が出そろい、結果的には常連と青年団演出部(しかも両方アゴラ上演作品)という結果ではあるものの確実に岸田は変わりつつある。来年の候補がもう楽しみである。

執筆者プロフィール
ヤバイ芝居
(1971生。ヤバいくらいに演劇を観ない観劇アカウント。since2018秋。Twitterでヤバイ芝居たちを応援していたら九龍ジョーに指名されて『Didion 03 演劇は面白い』に寄稿したのが、人生唯一のスマッシュヒット。noteを始める。)

公社流体力学
(永遠の17才。2015年旗揚げの演劇ユニットであり主宰の名前でもある。美少女至上主義を旗印に美少女様の強さを知らしめる活動をしている。やってることが演劇かどうかは知らんが10代目せんがわ劇場演劇コンクールグランプリ。note

演劇クロスレビューは執筆者を募集しております。東京近郊在住で未知との遭遇に飢えている方を求めております。(一銭にもならない活動ですので、その点はご了承ください)

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