見出し画像

マテリアルとツールと遊び心のミルフィーユ -Fragment Case-

服や鞄、小物で"ファスナー"fastener"ジッパー"Zipper、という呼び方をするが、ズボンと言う場合には"チャック"がしっくりくる。昭和生まれの男やさかい…

"チャック"… という言葉は、いつ何処からいらしたのか?
今更、気になってその語源を調べてみた。

先ず最初、アメリカの発明家が靴紐を結ぶ不便さから"ファスナー"fastenerの開発を始め、後に軍服に使用され量産されて広まり…

その後、アメリカの他社が"シューッ"という擬音のZipから"ジッパー"Zipperと名付け販売して…

またその後、昭和初期に広島尾道市にあった会社が製造、巾着袋と開け閉めが似ていたことから"チャック印"として販売、日本で"チャック"という名前が定着した… だった。

スペインでは全然違う… cremalleraクレマジェラと呼んでいた。

しかしファスナー、最初は靴紐を結ぶ煩わしさが始まりだったとは…

YKK エクセラ 5号 チェーンダブル & 3号 チェーンシングル


ファスナーは、長年使用で壊れたり… 
リペア職人の元には、頻繁に服やバッグ、財布などのファスナー修理が入ってくるという。昨今の作りの甘さも多々あるという…

ファスナー部分の糸を切って外し、新しいファスナーに交換、元の箇所にセットした後、工業用ミシンを操り元の縫い穴に針を落とし縫っていく。
(劣化した革や合成皮革Synthetic Leatherなどの場合は修理不可もある。)

革製品リペアは結構厄介やね〜って言うと…
"アンタの総手縫いも厄介やろ"と言われた。。。まぁ、そうなるか…

YKK エクセラ チェーンダブル
1つ1つ入念な磨きをかけた、ひかり輝くエレメント…


おじさんも、キラキラな日々を送りたい…


エクセラファスナー -EXCELLA-

手芸やレザークラフトなどをされる方も使うファスナー、販売店などでは、数10cm単位でセットされているモノが多いかと。
服飾関係や専門職は、チェーンと呼ぶ長いファスナーをその都度カットして使う。わたしも数種類の色、サイズを在庫として持っている。

チェーンは、テープとエレメント務歯の種類や色の組み合わせとなり、特にテープカラーはかなり豊富、販売店の在庫に無い色も多く受注生産など取寄せ品となる。

わたしが使用するYKKのEXCELLAエクセラは、金属製のエレメント1つ1つに入念な磨きをかけた高級ファスナーで受注生産、m単位で発注、納期は一ヶ月程度かかる。以前も少し紹介しているが、もう少し詳しく。

-YKK COLOR CARD-
ファスナーテープ色見本帳
テープカラー 全582色
観音開きタイプ、長過ぎるので横から
アップ その1
アップ その2
アップ その3…とアシスタント
微妙な色の違いだらけ… めちゃめちゃ悩んだグレー系は、329番にした…
329番のファスナーチェーン
わたしは金属メッキはニッケルシルバー色で統一している
その他ファスナーには必要不可欠なモノを下で…
エクセラ用 上止め&下止め
ファスナーの頭側と尻側に付けるもの、スライダーのストッパーである
左5号用、右3号用、ファスナーにはサイズがあるのよ…
エクセラ専用スライダー
小さいのが3号、大きのが5号、右の2つは引き手が無いモノ…どうするのかって?
わたしは革で作るのよ、こんな感じで
エクセラ 5号 チェーンダブル
ダブルはスライダーを2つセットできるので逆開が可能
リュックや旅行バッグ、ビジネスバッグなどに多いかと
エクセラ ダブルは特別な形状
エレメントが分厚く丈夫で磨かれている
先端の左右が小さな山型
エクセラ シングル (一方向のみ)
スタンダードタイプと形状は同じだが磨かれていて滑らか…


今回、このエクセラ シングルを使用した財布を作ったのだけれど、その紹介の前に、ちょっとニッチなモノを…


革の漉き割り加工&革漉き機 -Split-

ちょっとニッチな話と"超ニッチな機械"が出てきます…

製品革は"原厚"という厚みで作られ、タイプに依るが厚いもので4〜5mm、わたしの使用する革は大体、原厚2mm前後ぐらい。

半裁などの大きな革のまま厚みを調整してくれる"漉き割り屋さん"に依頼し、大きなバンドマシンという業務用の機械で、一定の厚みに漉き割り加工スプリットしてもらう。

原厚2mmを全漉き1.2mmとか、ある程度大きめにカットした革を1.0mmなどよく使用する厚みにお願いする。

一般的にブランドは量産することが多いので、全てのパーツに裁断した後、パーツ漉き、部分漉きなども漉き屋さんへ依頼する。

フレンチカーフレザー  ネイビーブルー & アイスグレー
カットした3枚の革の床面(ウラ)
一番右、タンナー印が押されたモノが原厚で2mmぐらい
左の2枚は別々の厚みに漉き割り済み
-革漉き機-
これが超ニッチな機械… 過去、中古購入したわたしの所有物
部分的に不必要な厚みを漉き落とす機械で、細かな漉きを入れる
漉き機の丸刃
左端が刃になっていて高速回転する仕組み
高速回転しているところへ、革を左から右へと流し入れ、部分的な漉きを行う
見えやすいように細い革を置いたが、本来は色々なパーツ革サイズ
端部分に斜め漉きを入れたパーツ革の床面
これらが重なって…
-遊び心のミルフィーユ-
後にこんな感じに… ミルでもフィーユでもないけど…
総革製作&デザイン上、同色数枚の重なりもあるので…


例えば厚み、お札は約0.1mm、官製はがきや薄い名刺が0.2mm程度、厚めの名刺で0.3mmぐらい。薄い部分でそれぐらいの厚み。

革漉き機は、幅数センチを部分的に漉くことに特化した機械であり、例えばA4サイズなどの革を一定の厚みにベタ漉きなど出来なくないが、あまり綺麗にはならない。小さなパーツ革までぐらい。

刃研ぎやセッティング、漉き方も含め経験と慣れが必要だが、ベストな状態で製作するための"細かな漉き作業"は欠かせない。

フラグメントケース 製作風景

フラグメントケースFragment Caseって何やねん…て?
"形状として薄いタイプの財布"で、カードポケットとファスナーコインケースなどに加え、その他ポケットなども備えている。

"fragment"(英)は、破片や断片。少なめの小銭、お札、カードなどまとめて入れる… 断片を収納するケースという意味から来ているのかな? 
コインカードホルダーcoin card holderという呼び方もあるけれど、形状が違うモノも多い。

それでは、先の漉き加工した革やファスナーを使ったフラグメントケースの製作風景と、よく登場するこれまた"ニッチな道具"たち…

フレンチカーフレザー、 ネイビーブルー & アイスグレー
荒裁ちパーツを適当に…サボり気味で…(笑)
-ダイヤルシックネスゲージ-
革の厚みを測るニッチな道具、必要不可欠な道具なのよ…
"陶器の器"… 関係ないけど、切った革を入れたり
どこで買ったでしょうか? 前の投稿記事を読んだ人はわかると思う(笑)
ファスナー取り付け部分を本裁ち
色々進めて、カードポケットを組み立てなど
ファスナー周り手縫い後、口元を手縫い
-ワックスリネン糸と菱錐-
糸の色はネイビーより深い色のダークブルー
ハンドルの木はリグナムバイタ、和名は癒瘡木
-玉捻-
化粧ラインを入れる道具で真鍮製
こちらのハンドルはエボニー、和名は黒檀
チョップ…
"先ほどのミルフィーユ" 
Millefeuille, Bon appétit!…(笑)
お気に入りのドイツ製の手縫い針
最終の手縫いが終わり、燃え尽きる… まだ仕事は残ってるけどな…
クリップは厳選した100円ショップ製…(笑) 
裁断した革の端をイタリアの水性コバ仕上げ剤でペイントして乾燥中…


手縫い仕立てのフラグメントケース

キャッシュレス決済が多く、カードと少なめの小銭やお札で、すっきりポケットにも収まりやすいお財布、フラグメントケース。
カードポケット、ポケットの裏面も革を貼って仕上げております。

Tanneries HAASフランスタンナー アース社  Derbyダービー 型押しフレンチカーフレザー 、わかりやすく言えばHermèsエルメスのアイテムでは"Veau Epsom"ヴォーエプソンという名で使用される革…
そんな材料革の上に乗せ、素人がカメラ撮影の練習をしてみた。。。

まず、ネイビーブルーの上に道具とか置いて…
アイスグレーの上
ちょっとだけ持ってるユーロ紙幣&硬貨…
ウラ面はカードポケット3つ、そのウラにポケット
ファスナーコインケース
チャックと呼ばないで…(笑)
仕切りポケット
糸が本来より明るい色… 今書いていて気付く
この時ネイビーブルーの糸を間違えて置いている…まぬけ… 


noter皆様とは縁がないような… 日常生活で役に立たないであろう…
私のマテリアル&ツールコレクションでした… (笑)
ニッチな道具と戯れながら、総革&手縫いで仕立てております。

好き勝手に書いておりますが、道具や材料を知り、正確さ丁寧さを忘れず、何よりも安易なモノづくりにならないように作っています。

ではまた、¡Hasta luego!




この記事が参加している募集

私のコレクション

仕事について話そう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?