見出し画像

革の手縫いに欠かせない菱錐 -Diamond awl-

わたしは革小物製作の際に、ヨーロッパ目打ちという道具と菱錐等を使って縫い穴を開けて行く…
ひとつひとつ穴を開ける、とても地道なことをやっている。ご苦労様…

ヨーロッパ目打ちと研いだ菱錐
通常とは違う"駒合わせ縫い"という技法
通常と同じくヨーロッパ目打ちで底と側面は途中まで穴を開けておき、菱錐で縫い穴を貫通させる
切れ味の良い菱錐が必須と言っておく
縫い終わった底面、丸く切って整えたコルクで…
小さな針山でした。
手縫い針、左がドイツ製、右がイギリス製



最初の頃は道具の仕立て方を覚える、試すのに結構な時間がかかった。
道具の違いか? わたしの技術的な問題か? 理想とは違うことばかりで…
ちょいちょい… いや、定期的に途方に暮れていた。

知識も経験もない頃は、そんなことの連続ばかりだった。
そんな時は、よく見ていた番組"プロフェッショナル 仕事の流儀"での様々な職種のプロの人たちの姿、チャレンジ、苦悩、葛藤、ロジック、歩を止めずに進む… そんな物語と自分を無理やり重ね合わせ、検証しながら…
とりあえず、"あと一歩だけ、前に進もう♪" と口ずさんでいた。今もたまに。

道具に関して革包丁やヨーロッパ目打ち、その他材料のことをいくつか書いたが、あまりスポットを当てていなかった菱錐(Awlオウル)のことを主に書きたいと思う。

ここから先、画像で尖った金属の刃を見ることになるので…
先端恐怖症の方は、スゥ~っとスクロールして、スキをポチっと押して退出して下されば結構です。。。


革の手縫いに欠かせない菱錐 -Diamond awl-

革の手縫いに使う菱錐(ダイヤモンドオウル)は、主に木製などのハンドルに菱形をした鋼材が固定され、先端は研がれた刃、菱刃(Diamond blade)が付いている。フレンチオウル(French awl)という菱形でなく、平たい板状のモノもある。刃の巾(横巾)も種類があり、鋼材にも種類がある。

ハンドルの柄の形も丸いモノ、フラットなモノ、サイズや形状はメーカーによる。刃がハンドルと固定されているモノ、ハンドルから刃が外せ他の刃と交換できるモノもある。ただ交換可能な鋼材の軸径、規格や条件はある。

ブレード部分。用途により刃先の形状は違う形に研いでいる。
サクッと刺さるよ。。。
全てフラットタイプのハンドル。
ハンドルの木材はココボロ、パープルハート、オリーブウッド、ユソウボク、黒檀など。

他にもいろんな種類の木材や材質のモノもある。
フレンチオウルばりに研ぎまくった菱錐。
韓国製の平たい形状のフレンチオウル、最初から切れ味が悪過ぎだったので何度か研ぎ直した。
唯一、ほぼ購入した状態の菱錐、使用頻度は少なめである。
最初から綺麗な形状だった、これを仕上げた方は腕が良いと思う。


切れ味が悪い、ただの鋼材に…

菱錐… 完全なる素人の頃、こんなモノどう研げばいいのか…と。
確実に失敗するし失敗すれば研ぎ直し、どんどん短くなってしまう…
いや、短くてもいいのか…しかも短い方が安定するかも…とやってみるも、予想通りの最初以上に切れ味が悪い、ただの鋼材に成り下がった…

今度は値段の安い錐の刃だけ買って、刃を交換できるハンドルに取り付け、研ぎの練習してみたが、鋼材の硬度が柔らかく弱い…切れ味も含めダメダメ…
新たな菱錐を買っては、研ぐ練習を繰り返し… 繰り返し…
ひとり、リピート アフター ミー…

上手く行かない時は、何が良くないか? 検証の繰り返し…
心を燃やせ… 歯を食いしばって前を向け…

刃先が一番細いタイプ
主に駒合わせ縫いという製作物の時に使う。

荒研ぎでしっかりと刃を付けた状態から、慎重に丁寧にサンドペーパーの番手を上げ研ぐを繰り返し、最後の方は研ぐより磨くという感じで金属磨きに使うピカールと青棒を塗り込んだ革砥で仕上げ、バフ研磨なども試した。
わたし向きの形状に仕上げられるようになるまで、何度やり直したことか…

その後も道具を変えたり、革を変えたりすることで研ぎ直しを続けて、今の形状に至る。長かった、無知からの脱出… 未だ修行中でもある。


刃物やオウルに使う鋼材の特徴

鋼材の専門家でなく奥深く知らないので、主観となる。
ほぼ鋼材は通称HSS /ハイス鋼と呼ぶハイスピード鋼(high-speed steel) が付いている。日本語だと高速度鋼… ハイス鋼でいいです。。。
刃物鋼や切削工具用として使われるハイス鋼には、粉末ハイスと溶解ハイスなどがあるらしい。
出汁の粉末タイプ、液体タイプぐらいしか… 何となくの、雑な理解力。。。

この6本の他にも2〜3本持っているが使っていない、完全に眠らせている。。。


オウルは細く鋭い刃
、研ぎも繊細である…わたしにとってはね。
先端は細いまたは薄いが、今まで欠けたり、折れたりは皆無である。
硬度が高い鋼材のおかげか、優しく扱っているからか…

オウルに使用される鋼材の条件を考えれば、元々は刃物に使う用途の鋼材でなくとも高硬度で切れ味良く、耐磨耗性に強く、靭性として粘りがあり、錆びに強ければ…とても好ましい。わがまま言いたい放題だが…
実際そういう鋼材で道具は作られていたりする。

久しぶりに道具販売のサイトをみたが、中国製オウルが増えているような…
そのまま使えるタイプだと思うが、使用する鋼材の違いもある。鋼材は良しとして、切れ味は仕立てられ方次第、買わないと絶対にわからない。。。
道具製作などに使われる鋼材をオウルのブレードに使用しているメーカーがあったが、それはそれで有りだろう。
条件を満たしたフレンチオウルなら、ひとつ買ってみても良いかと思ったが結構な値段だったので、そっとそのサイトを閉じた…

メーカーの違うヨーロッパ目打ち
木槌などで革に打ち込むが先端は刃に近く磨かれ仕上げられている

ヨーロッパ目打ちの場合、菱刃でなくていい、フラットなフレンチオウルでも良い。菱目打ち用に仕立てられた菱錐は、わたしには使えない。


安来鋼をルーツに持つ鋼材

次は、日本の歴史と伝統を持つ安来鋼(ヤスキハガネ)を使った革包丁。
個人的に、もののけ姫の"たたら場"を思い出すが、若い人は鬼滅の刃か…
玉鋼や刀ではなく、和鋼である安来鋼をルーツに持つ鋼材"青鋼"である。
青鋼、白鋼は料理包丁の鋼材によく使用されている。

安来鋼(YSSヤスキハガネ)の製造をしていた日立金属の日米ファンド連合への売却により、2023年1月に株式会社プロテリアルに社名変更した。
現在は株式会社プロテリアル安来工場で製造しているとのこと。日本の伝統はより進化して行くのだろうか…

わたしの使う革包丁は青鋼、通称青紙2号と一番硬い青紙スーパー
いづれも硬い鋼だが20mm、30mm、36mmの刃巾、平たい形状で同じ角度にて前後に研ぐので、まだ研ぎやすい。スーパー…もっそ硬いけど。

手前でボケている斜め包丁とピントの合ったモノが青紙スーパー。
凸凹なのは梨地という加工が施されている。
奥の2つは青紙2号、30mmと36mm


最後に

日本や海外の鋼材会社も、世界の工場と呼ばれる中国で生産していることもあり、レザークラフトツールでも中国製はそんな鋼材の使用なのだろう。

単純に刃物はしっかり研げば切れる。研ぎ方は好みの形状、角度などもあり、技術的で繰り返しの練習で身に付いて行くことかと。
欠けやすい、欠けにくい、長持ちするかしないかは要となる鋼材の質の違いでもあるし、あまりにも鋭角に薄く研ぐと高硬度でも欠けやすい。

どこの革包丁が良いかわからないという人も多い。
わたしも使っていない所のモノまではわからない、画像だけでわからない。
国産の火造りと呼ばれるモノであったり、刃物の作り手の鍛冶職人さんや、道具を仕立てる職人さんの個性や腕の差も多少なりあるだろう。
1本買って使ってみる… としか言えない。

ではまた、¡Hasta luego!

 







この記事が参加している募集

この経験に学べ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?