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毎日読書メモ(241)NHK交響楽団定期演奏会で小林愛実ちゃん聴いてきた! そしてのだめとかのことを考える。

池袋の東京芸術劇場で、NHK交響楽団のA定期を聴いてきた。1月のA定期に反田恭平くんが出演するので、1回券発売前に確実にチケット入手しようと、12月―2月の3回券を買ったら、2月のA定期、指揮者パーヴォ・ヤルヴィとピアニストイゴール・レヴィットが来日出来ず、指揮者下野竜也、ピアニスト小林愛実に変更! はからずも、ショパンコンクール凱旋定期みたいになった、冬のA定期である。イゴール・レヴィットはブラームスのピアノ協奏曲第2番を演奏する予定だったが、ピアニスト変更に伴い曲目はシューマンのピアノ協奏曲に変更。
前プロの「序奏、スケルツォとフィナーレ」とメインの交響曲第2番は変更なし、結果的にオールシューマンプロ。自分でも演奏したことのある曲ばかりだが、こうして全部シューマンでまとめてみると、バランスがよくて感銘を受ける。
ショパンコンクール期間中、ずっとずっとショパンの曲を弾いてきて、帰国したあとは取材攻めでよれよれだったと思うのに、反田くんも愛実ちゃんもリサイタルやったり、こうしてオーケストラと共演したり。ピンチヒッター公演まで引き受けて超人的な活躍である。
協奏曲やるときは基本暗譜だよ。ピンチヒッターで引き受けた協奏曲だって、全部頭の中に入れて、数回のリハーサルで指揮者やオケとテンポ感を合わせて、30分以上かかる曲を作り上げていく。
先月反田くん見た時は、ショパンコンクールのために大きな身体を作る、と公言していただけのタッパで、がんがんにパデレフスキ弾く姿に感銘を受けたが、それと較べると小林愛実、線のように細い。でも、弱々しい感じはしない。鋼のような力強さがほとばしり出ている。演奏はそんなに大きな音を鳴らす感じではなく、堅実に美しく弾く。アンコールはショパン。
ピアニストの身体の中には、沢山の引き出しがあって、それまでに学んできた曲がそれぞれの引き出しに収められ、この曲を演奏、となったらその引き出しを開けてさっと弾ける態勢に持っていけるものなのだろうか。

と思うと、どうしても、二ノ宮知子『のだめカンタービレ』(全25巻、講談社コミックスキス)を思い出す。コミックス的に、汚部屋に住み、千秋に掃除も料理もさせてしまう天然キャラのだめのイメージが強いと思うが、ずっとずっと読んでいると、ピアニストがどのようにして曲の魂を掴み、自分のものとしていくかという過程がじっくりと描かれていることに、心を奪われる。1曲1曲が余りに丁寧に描かれていて、こんなスピードでしか曲を自分の中に取り込めないのでは職業的なピアニストになんてなれないのでは、と不安になってしまう位である。
小林愛実は、たぶん、のだめとは似ていない。3歳でピアノを始め、7歳でオーケストラと共演、9歳で国際デビューを果たす、という経歴は、どちらかというと、恩田陸『蜜蜂と遠雷』の栄伝亜夜に似ているか。亜夜は母親の死によってピアノが弾けなくなるという挫折を味わっているが、そこ抜きで。今日のコンサートは、元々の曲目(ブラームス)からシューマンに変更しているが、彼女のキャリアの中で、シューマンなら、自家薬籠中の物として披露できる曲目ということか。のだめがしたみたいな会得のための苦闘はもうずっとずっと前に終わっていて、引き出しを開ければさっとオケと合わせて、カデンツァ鳴らして、一つの完成形の音楽を提示できるようになっているということか。
山場の多いシューマンの協奏曲を、緊張感途切れることなくロマンティックに鳴らし続ける小林愛実を見ながら、のだめだったらどんな風に弾くのかな、などと考えていた(邪道か)。これから何十年も、反田恭平が、小林愛実が、さまざまな曲をそれぞれの解釈で弾き続けていくのを見ていくことが出来るのが、すごく楽しみだ。見て行けるように、自分も元気で長生きしなくちゃ、と、生きる張り合いまで出てくるよ。
音楽の神様に感謝だ。
トップ画像は、東京芸術劇場の夕方の様子。

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