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毎日読書メモ(260)『極北』(マーセル・セロー/村上春樹)

マーセル・セローは英国の作家にしてテレビキャスター。同じく作家であるポール・セローの息子(ポール・セローの『ワールズ・エンド』も村上春樹が翻訳している)。マーセル・セロー『極北』(村上春樹訳、中央公論新社、現在は中公文庫)、美しく、寂しい感じの表紙に、ブランド的な「村上春樹訳」が付され、内容も何も知らずに、矢も楯もたまらず持ち帰る。一言でいえば近未来ディストピアもの。息苦しくも、心摑まれて必死で読み進めた。

村上春樹マニアとして、本屋で手に取って、そのまま持ち帰った本。何の先入観もなく読んで打ちのめされる。この未来はどういう未来なのか。そして、あえて位置関係や自分の由来を遠回りにしか描かず、読者をさまよわせつつ少しずつその未来を可視化させていく。南には何が残っているのか。0311以降だからこそ考えさせられることもあるが、実際は小説も翻訳もそれ以前に終わっていたとのこと。これは現実の告発ではなく、作者が抱えていた問題意識を、未来という舞台で描いたもの。宗教とか核とか、色々な問題を描きつつ、ときどきはっとする美しさに心を打たれた。
(2012年6月の読書記録より)

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