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毎日読書メモ(189)『冬の喝采』(黒木亮)

2013年9月の読書日記より:
黒木亮『冬の喝采(上)』講談社文庫(現在は幻冬舎文庫)
箱根駅伝関連本をまとめて買っていた頃に読みそびれて、今更ながらに読んだが、これはすごい! 経済小説の作家として活躍する作者自身が、早稲田の競走部の部員として、箱根駅伝を走り、同年齢だった瀬古利彦からタスキを受け取り、1位のまま次にタスキをつないでいるのだ! 中学生で陸上を始め、自己流の練習で脚をこわし、でも、絶対また走るのだという執念で箱根駅伝のランナーにまで到達した作者の強さに心を打たれる。また、中村清という、不世出(?)の指導者の強烈さも余すところなく描いている。ランナー必読。
黒木亮『冬の喝采(下)』講談社文庫(現在は幻冬舎文庫)
ランナーとして読むと、そのトレーニングの過酷さとか、理不尽な怒りをぶつけられながら、萎えたりいやになったりしながらも、ふと気づくと昨年の自分より明らかにスピードが上がっているすごさとか、瀬古の鈍感力とか、体重管理とか、マッサージ無しにはいられない身体になって、箱根で引退する決意とか、まぁ何から何まで面白い。レース中の心理的葛藤とかも。意外と浪人して早稲田に来て競走部に入った部員とかもいるのが興味深い(勿論スポーツ推薦もあったんだと思うが)。ラジオで部分的にしか中継してなくて、1時間に1回レースの様子を知る郷里の両親の話とか。最終年、1年生ランナーとして3区を走った金井豊の名前を見ると、彼がS&B陸上部合宿中の事故で亡くなったことを思い出し泣けてしまう(本文中には出てきません)。そして、最後に、自分の出自を知り、自分は血によって走らされていたのだろうか、と思う作者の姿とか、もう、ランナー仲間と語り合いたいこと満載。

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