見出し画像

川添愛『数の女王』(東京書籍)が面白かった!!!

川添愛さんは言語学者で、仕事関係でなんとなく存じ上げていた方なので(向こうはこちらを知らないけれど)、研究書とは全く違ったジャンルの本を何冊も上梓されているのを本屋の店頭で見て、感心していたのだが、昨年刊行された『数の女王』を、朝日新聞の書評欄で出口治明さんが絶賛していたのをきっかけに、読んでみることにした。

文系脳で、数学的なセンスのないわたしが読んでわかるんかいな、と思うような様々な数字が出てくる。素数がなんとか、とかそういうフレーズを読んでいると小川洋子『博士の愛した数式』を思い出す。美しい数。

物語世界の中では人も妖精も皆、自分の運命数を持っている。数字が大きいほど立派で、素数であればなおさら素晴らしい(乱暴なくくり)。因数分解できる運命数はそこを突破口に敵に狙われたりする。様々な要素を持つ数字が紹介される。過剰数、友愛数、フィボナッチ数列、フェルマーの小定理、カプレカ数、巡回数、様々な不思議な数字が出てきて、数字の美しさとか面白みとかが窺い知れる。抽出され紹介されるサンプルを見て感心しているだけでは数学者にはなれないけれど。

数字をあやつる魔女は、まるで白雪姫の義母のように、人を支配し、悪政を敷く。それを取り込もうとする悪の力、倒そうとする人、受容しようとする人、多くの血が流れ、返り討ちによって魔女を倒そうとする者もいる。数字をうまく取り入れた小道具たちで魔法をかけたり、攻撃したり、強くなったり。神になろうとする大それた望みにも数字が使われる。

物語は全体として暗いが、主人公ナジャの、数字を探求しようとする志と成長が周囲の人に希望を与え、最後までハッピーエンドを信じて読み続ける力を与えてくれる。

難しい設定を丁寧に描き、ファンタジー世界を構築する作者の力に感嘆。出口さんは、同じ川添さんの『聖者のかけら』(新潮社)も絶賛していたので、また読んでみようと思う。


#読書 #川添愛 #数の女王 #東京書籍 #数学 #フィボナッチ #フェルマー #出口治明 #聖者のかけら #素数 #博士の愛した数式

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?