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毎日読書メモ(210)新井満の思い出的な

昨年12月に、アーティゾン美術館へ「M式「海の幸」ー森村泰昌 ワタシガタリの神話」展を見に行ったとき(感想ここ)、あわせて見た常設展示の中に「挿絵本にみる20世紀フランスとワイン」という特集展示があり、ユトリロやデュフィなどの小品や出版物などが展示されていてとても興味深かった。その中に、トップ画像にあげたラウル・デュフィの「開かれた窓の静物」という水彩画があり、一目見て、はっとする。これは、新井満『ヴェクサシオン』(文藝春秋、のち文春文庫)の表紙に使われていた絵だ!

電通に勤めながら作家活動を行っていた新井満は、先に「ワインカラーのときめき」の歌手として名前が出て(1977年)、その後『ヴェクサシオン』で野間文芸新人賞(1987年)、『尋ね人の時間』で芥川賞を取り(1988年)、おしゃれな作風でそれなりに面白く読んだ記憶があるが(ジョージア・オキーフの絵の表紙が印象的だった『サンセット・ビーチ・ホテル』も好きだった)、どちらかというと映像とか音楽方面に活動をシフトしていて、長野冬季オリンピック開幕式のイメージ監督とか、「千の風に乗って」の作曲、歌唱などの印象が強い。Wikipediaで確認すると、小説作品より音楽アルバムのリリース数の方が多い位だ。
函館旅行に行ったときに大沼国定公園に「千の風に乗って」の立派なモニュメントがあるのを見たが、晩年は大沼で過ごし、創作活動をしていたとのこと。デュフィの絵を見る、ほんの10日くらい前に訃報を聞いたばかりだったこともあり、不思議な縁を感じた。

しかし今、作品紹介を読むと、なんじゃこりゃ?という感じも(Amazonの紹介文を以下引用)。今これだけ読んでも、全然物語は思い出せない...。

『ヴェクサシオン』(文藝春秋):生きるとは、自分なりの零を描くこと。どうせ同じ零なら、がむしゃらに加算させるより、静かに零を富ませ、いとおしみたい。エリック・サティのように―。徹底して醒めながら、醒めることでより深く結びつく、新しい恋愛の形を提出した、野間文芸新人賞受賞作。表題作と対の関係にある姉妹編『苺』を併録。
『尋ね人の時間』(文藝春秋):“失われたもの”を求めて尋ねさすらうカメラマンと女子大生の、実を結び得ぬ“絶望の愛”。現代人の心の空洞を“引き算の美学”で描いて衝撃を呼んだ芥川賞受賞作。
『サンセット・ビーチ・ホテル』(文藝春秋):絶絵(絶海のタイポだね)の孤島にも廃棄物が押し寄せる。摩天楼そびえる大都会の人々の空疎な心うち。もしかするとこの惑星はもうあまり長くないかもしれない…。滅亡からの回生をねがう新鋭の問題作。

本屋で新井満の小説を買うことはもう出来ないのかな、と思うとちょっと寂しいような気もする。

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