桐野夏生『グロテスク』(毎日読書メモ(404))
過去日記より、桐野夏生『グロテスク』(文藝春秋、現在は上下巻で文春文庫)の記述を拾ってきた。2日間で一気読みしたらしい。
1日目:昨日借りてきた桐野夏生『グロテスク』(文藝春秋)読みつつ出勤。東電OL事件を題材にした小説だが、有名大学の付属高校をモデルとしたと思われる描写が出てきて、身近な学校だったこともあり、自分が通っていたわけでもないのに、きっとこういう感じはあるに違いない、と膝を打ちつつ読む(本当かはわかんないけど、っていうか一応小説なんですけど)。
2日目:子どもが寝て、風呂に入った後はひたすら『グロテスク』を読む。東電OL事件を下敷きにしているが、被害者は2人いる、という設定で、両者と共有する過去を持つ女が語り部として、被害者が残した日記や、犯人の上申書を披露しつつ、話を進める。それぞれの証言は少しずつずれていて、ちょっと「藪の中」っぽいところもあるが、犯人が誰であるかはこの本においてはテーマでない訳で、それぞれの登場人物が抱える闇(しかも、それが闇であると、本人は信じないようにしている)が、語り手の思いととともに描かれるのだが、実のところ、もっともグロテスクな闇を抱えているのは、語り手本人である、ということが本を開いてすぐから、読者にはなんとなくわかっていて、それを追認するための小説、という感じ。東電OL事件だけでなく、オウム事件についても触れられていて、ややこれってお腹いっぱいすぎやしないか?、という感もあるが、見事なまでに誰も幸せになっていない。みんな自分のしていることに、主観的に超納得していて、でも客観的には怖い、という感じしかしない、という、暗い暗い、でも説得力のある小説。昔職場が一緒だった子に勧められて読んだが、なるほどー、とため息。そのうち佐野眞一のノンフィクションも読んでみないとね。(2004年8月の日記より)
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