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大島真寿美『チョコリエッタ』『虹色天気雨』『ビターシュガー』『ピエタ』(毎日読書メモ(287))

大島真寿美、前に、直木賞をとった『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』の感想を書いたことがあるが(ここ)、元々は時代小説作家ではなく、現代小説の書き手。しかし、ヴィヴァルディと彼を愛した女性たちの物語『ピエタ』なども話題になり、テーマの幅はとても広い。

最初に大島真寿美の名前を知ったのは、2011年にNHKでドラマをやった「ビターシュガー」の原作者としてだった。『チョコリエッタ』はそれより後で読んだ。風合いはそれぞれに違うけれど、感想をまとめてあげておく。

『チョコリエッタ』(角川書店、のち角川文庫):他人には理解出来ない気持ちを、誰もが抱えている、ということを、小出しに発信するチョコリエッタ。救われたいと思っていない、という態度を取りつつ、自分が変わっていくこと、その課程が断片的ながら記録されることで、少しずつ生きやすくなっていく高校生の少女の物語。どの登場人物も感情移入しにくく、主人公の暮らしもかなりいびつだけれど、それでも生きていく、という感じで読む一冊。(2012年3月の読書メモ)

『虹色天気雨』(小学館文庫):現在図書館で『ピエタ』待ち中で、初の大島真寿美となりました。女友達との群像、がテーマ? 中学・高校時代からの腐れ縁の友と、気のおけない関係を築きながら、周囲の男女とゆるくつながっている市子を語り手に、奈津、まり、奈津の娘美月の生き方が、さらっと、でも堅実に描かれている。奈津の夫憲吾はどこに行ってしまったのさ、というミステリではないらしい。ドラマ化が決まってから読んだが、3人のキャストを先に知っていても誰が市子、誰が奈津、誰がまり、という予想は大はずれであった。うーん、そういう意味で映像化を意識していない作品?(2011年11月の読書メモ)

『ビターシュガー(虹色天気雨2)』(小学館文庫):『虹色天気雨』と続けて読む。市子と奈津とまりを囲む環境は、登場人物的には大きく変化していないが、その愛情模様は激動。その中でも淡々とゆききするみんな。楽しげな関係性が心地よい。そして、出番は多くないが、この2冊の影の主役は房恵だね! ときどき浮上してきては登場人物も読み手もぶっとばされる感じです。(2011年11月の読書メモ)

『ピエタ』(ポプラ社、のちポプラ文庫):図書館で順番待ちして読んだ『ピエタ』、ヴィヴァルディの晩年と、彼を愛した女たちの物語。楽譜探し、というテーマは一種ミステリ的でも? 大島真寿美のここまで読んできた小説とテーマが全然違うので、彼女が何故こういう物語を書こうと思ったのかがよくわからないが、ヴェネツィアの光景を思い浮かべたり、彼の作った音楽を脳内で鳴らしたりして読むのは結構楽しかった。(2012年2月の読書メモ)


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