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第一詩集『AM 1:40の木星探索。言葉を紡ぐぼくらに遺されたものは、ミライテイリ。』



目次
 
第一部              未定定理
未確認架空論物体K
コーヒーアレルギー
恋と宇宙と私と、多面体
有り触れていてよね
宇宙旅行には行かないよ
脱出ポッド
ハリボテ世界軸
ぱーそなりてぃ・おーそりてぃ
 
第二部              木星探索飛行
木曜日に向かって、探査機。
ピーコックブルーの湖畔
秘密道具の外側で、またね。
微睡の停泊
雨あがりの碧空へ
 
第三部              AM 1:40
おとなぼっち
ニュクスになる前のこと
砂糖みたいな楽園で
真空の歌
Me-de-
カーテンに浮いた遥遠の街
コンクリートでも i
石油王
Sono Namida dé Sinouyo.
えほん博物館
月9
美術室の人体模型
アポロLv.9999を目指した夏休み
惑星軌道上のラブレター
不燃ごみの日
平凡だね、メロンソーダ。
ギャグ漫画
青春おばけ
花いちもんめ
昨日の誰かと、今日の私はちょっぴり似ている
つがい
科学発明部🧪アイドル
自己嫌悪の仲直りに
マカロンの甘さに言い訳は不要。ゆえに幸福。
前日談・あるいは後日談
線香花火の夜に
コンテンポラリー
卒業アルバム
 
第四部              言葉を紡ぐぼくらに遺されたものは
言葉を紡ぐぼくらに遺されたものは
六畳一間
宇宙の私たち
無音

あとがき


第一部  未定定理


未確認架空論物体K

そこはかとなく夢の続きを見ていたい
曖昧憮然としたお気持ちのままで
 
永遠に何処にも行けないでいけたら
良いのになぁ(I cannot do it.)
 
手に出来ないものを渇望して
それが唐突に幸福だから哀しい
 
恋も愛もその酸いも甘いも
無知でしかいられなかった
 
それでもこの愛おしさは本物ですか?
それを信じてもいいのですか?
 
決して手に入れられることのない
その愛おしさを
 
無限大記号みたいに信じていて
仮初の切なささえも信じていて
 
架空を繰り広げるしかないこの世界は
大馬鹿者だ
 
机の上に好きな物を広げるんだって
手っ取り早いしあわせ、だね
 
それより私の机上は
生活と空論の食べカスだらけだよ
 
物語症候群はこれだから厄介なのだ
現実に一等近いその場所で、夢を見よう
 
ただの文字列となって、
ただの粒子となって、
 
溶けていけたら、良いのになぁ。
(I cannot love it.)


コーヒーアレルギー

飛びそうで飛べないニケ像
本当に日記を書いてしまうのかい?
日記を書くなら詩人にはなれないね
 
冷たい飲み物がコーヒーしかなかったから
僕は僕のまま、鼓動を慟哭して
震える手と軋む胸に別れを告げなよ
 
詩人にはなれないよ
コーヒーアレルギーなんだから
砂漠地帯の真ん中で
カラッと晴れた空を睨んで
ひとりぽっちで突っ立って
 
星の王子さまは何処にもいなくて
君もひとりぽっちなのさ
仲間意識が形作るものは
ただの青春
 
本当に欲しいのなら諦めた方がいい
それは階級主義者の特権だから
幻想を抱くことが出来るのかい?
今の君に
コーヒーアレルギーだけの個性に
 
夢は夢のまま
幻は幻のまま
尊い犠牲の上のまま
知らない方が良いこともあるのさ
 
そう教えてくれたのは誰でもない
ひとりぽっち同志の宇宙船だから
 
ありふれた日記を書きなよ
そうすれば詩人にならなくてもいいんだから
 
ほら、
飛行船が宇宙に向かおうとしているよ
 
不相応だね、僕たちみたいだ。


恋と宇宙と私と、多面体

追いかけていたのは夢
駆け出していたのは君
 
トンネル抜けて手を取ろう
舞い上がって宇宙の、果て
 
火星に行きたいあの人と
私は地下でモグラりらる
 
午前一時六分の魔法
最終電車に、乗って
 
ふわっと舞って私は宇宙
寝静まった夜をかけてゆく
ふわっと舞って私は宇宙
空が高いから
 
 
手にしたかったのは愛
手に入れたものはなんにも無い
 
街頭路地裏の黒猫
わたしは一人、ぼっち
 
からっぽ嘘つき私の世界
たった存在(ひとつ)にしがみつく
からっぽ嘘つき私の世界
星も落ちてくる
 
 
真夜中のパンケーキは罪の味がしている
夜明け前のホットミルクがまた愛おしい
君とあたしの、間に
いつかの記憶が、あるのなら
あたしはきっと、幸福だ
 
火星人のあの人に恋をした
それがあたしの、、、
さぁ、多面体的に恋をしようか
 
ふわっと舞って私が雨
今宵もひとりで眠るのよ
からっぽ嘘つきあなたの嘘
気づかないふりをする


有り触れていてよね

私にとって「書く」ということは
私自身を文字列にするための、
あるいは粒子にするための、
そのためだけの、
 
飽くなき永遠の
戦いなのかもしれなかった。
 
言葉の破片があちらこちらに
散開していて、
天の川の星屑みたいに
珈琲でも飲んでいるらしい
 
呆れた!
 
あ、はは。
 
一銭にもなり得ないから
こんなにも自由なのかもしれない
流れ星になるために
私にはテトラポットが必要だった
 
日常に根ざした言葉で
詩人にはなれないよ
小説も書けないよ
 
生活に根を下ろした言葉は
誰の言葉でもなくなるよ
 
ハティになりたい
ハティになりたい
それから、見知らぬ誰か
 
理解を得られないからこそ
この文字列たちは詩でさえあるのだ
 
有り触れていてよね
それでいて何処か天才でいてよね
 
飲酒運転なんかして
捕まるなんてことだけはしないでよね
ハングオーバー!になるなら
まぁ、許すけど
 
有り触れていてよね
それでいて何処か非存在でいてよね
 
在り来りな教養とか
敷居の高い映画論とか
そんなのは切り捨てていこうね
今だけを生きていこうね
 
有り触れていてよね
それでいてつまらない大人になんか
 
ならないでいようね
関わらないでいようね
いつまでも子どもみたいに残酷に
美しく残酷に、楽しく残酷に、
 
生きていこうね。


宇宙旅行には行かないよ

宇宙旅行をした
夢の中で
 
私は転生して
宇宙飛行士になっていた
火星かなんかの周りを
ぐるぐるしながら
ただひたすらに記録を取る
 
清潔な真っ白の宇宙船の中
ひとりぽっちで
 
すると地球が滅びるのだ
木っ端微塵に吹っ飛ばされて
(荒唐無稽なのは許して欲しい
何せ夢の中の出来事なのだから)
 
地球が滅び
私は取り残された
本当の本当に
ひとりっきりで
 
しばらくして
私と同じように
宇宙船に乗っていた同業者たちが
探索機を宇宙に放つのだけれど
どうしてか
私の姿は見えなかったらしい
 
転生した未来の世界では
言葉なんて通じない
 
その世界で
母や家族のことを思ってみても
それは私の知らない家族
チロルっていう名の
チワワ犬なんかもいるらしい
 
突然にひとりだと感じた
怖くなって目を覚ました
 
喉がカラカラに乾いていた
鼻がなんだか詰まっていた
私はいつの間にか泣いていた
 
あぁ
ここは私の知る世界だ
 
時計を見ると
時刻は午前零時半
約一時間半の宇宙旅行だった
 
なんにもやる気が起きなくて
未来も特に楽しそうじゃないや
今なら別に死んでもいいかな
かみさま、しんぞうをにぎりつぶして
 
そんな風に眠りに落ちた私への
罰だったのかもしれない
 
なんにもやる気は起きないけど
未来も特に楽しそうでもないけど
おかあさん、おとうさん、おとうとよ
いつまでも、げんきでいてください


脱出ポッド

脱出ポッドに乗って
月へ行こう
 
目を背けた真実はそのままに
地球儀回して蹴鞠にしよう
 
紙飛行機は青空に
幼い私は真空に
 
彼女は言った
フォロワーが増えたから
自己紹介しなくちゃね
 
SNSってなんのこと
憧れの職業ランキングってなんのこと
 
どうせ一千年後には誰もいない
賞賛する者も される者も
 
脱出ポッドに乗って
月へ行こう
 
太陽も地球も無くなって
真っ暗闇の月へ行こう


ハリボテ世界軸

常々私は世界観というものを提示していたいと考えていて。
だけれどもそれを素直に書くことには飽き飽きしているんだ。
 
味のしなくなったガムみたいに。
へばりついて取れないよ。
 
明日もまたやってくるから。
私は言葉を紡いでいる。
 
生きていくには物語が必要だよ。
世界軸というものに翻弄されていたいな。
 
ずっとこのまんまでいいのに。
それでも私は忘れるんだろう。
 
明日になって。
M子ちゃんと夢の国に行って。
ぱさぱさの楽しさだけを受け取って。
そうしたら綺麗さっぱり忘れるんだろう。
 
張りぼての現実だけで生きてんだ。


ぱーそなりてぃ・おーそりてぃ

秋の空気を感じると、私はいつまででも永遠にこの虚無を抱えながら生きていたくなるんだけど、多分死にたくなる人もいるんだろうね。
お気に入りのカーディガンの愛しさは何処からやってくるのだろうって考えてたよ。永遠なんてものがないからお洋服はこんなにも可愛いんだね。エンドロールなんてものがあるから物語はこんなにも幸せなんだね。
私を殺したいのなら女の人になれば良いと思うの。ぱーそなる・すぺーす、女性に対してだけほんの少しばかり狭いみたいだからさ。何故だろうね?
無意識に気を許していると、朝のカマキリみたいになるよ。えすかれーたーに取り残されて頭だけ挟まっちゃってたカマキリみたいに。虫たちにも処刑ってあるのかな。ばぐず・らいふ。
何だか死にたくなってくる眠さだなぁ。
多幸感に包まれて死ね。あと、爪は伸びるし眠たいね。
気まぐれの優しさは何の思いやりでもないって知ってるけど。正義論をぶちかましてJKに殴られたい。
めんどくさい事を考えるのなんてやめてさ、いつまでも自由でいようよ、僕達。永遠に幸福でいようよ、僕達。矛盾論理に牙向いて、どこまでも好きなことをしていようよ、僕達。


第二部  木星探索飛行


木曜日に向かって、探査機。

憧れが当たり前に変わって随分と久しい。僕はついに大人になったのかもしれないね。
マスカット味のきゃんでーをぼりぼりと噛み砕いた。じんわりと広がる甘さが嫌になった。
木曜日が逆行軌道に乗って遠く遠くに消えていく。飛行機雲はその残留物なんだって。
カプチーノの泡にでもなれたら良かったのに。君は可哀想だね。
 
探査機を飛ばしてあげるよ。憐れみは時として残酷だったりもするけどさ。


ピーコックブルーの湖畔

夢にまで見たような景色がすぐそこに広がっていた。
私はやっぱりあの日のことを忘れられなくて、ないた。可愛さが可愛さとして正しく評価されていたあの頃のことを。
豪胆な美しさをきちんと美しいものであると信じる純真さにこそ、きっと永遠は存在していた。
 
いつの間にか薄汚れてしまった夜空みたいに、流れ星はよく見えなくなって。涙の溜まった瞳にあざとさなんか、感じ取ってしまって。
 
ピンヒールを履いても転ばなくなって、溝にかかとを置き去りにすることもなくなって。キラキラした宝石は、エナメルガラスにすり替わって。
 
私たち、怪盗みたい。
まっさらな夏の入道雲さえ、盗めてしまいそうね。


秘密道具の外側で、またね。

本当は嘘でもなんでも良かったんだよ。
相合い傘のビニールが広がって、雨音が歪に鳴った。
抱きしめて欲しいなんて言わない。ただ、生きていて欲しかった。
貴方と貴方の好きな人が、生きていて欲しかった。
私たちの間には四次元ポケットが隔たっていて。多分それはどこまでも残酷な童話だから。
手を伸ばすのも無駄で。だから私は指の骨を外した。
軟骨の軽やかな音が、唯一の現実逃避だった。
 
愛していたんだ。
こんなにも軽薄な告白だってあり得るんだよ。それがどこまでも哀しくて、切なくて。
けれど、四次元ポケットの銀河系にぶち当たって。私、明日には忘れていると思う。
 
貴方を愛していたこと。
きっと、すっぽり忘れてるんだよ。


微睡の停泊

絶え間のない眠気に誘われて、ゆうらりゆうらり船を漕ぐ。果てのない水平線の向こう側。夢の名残りの夕暮れが泥む。
終わらないで、世界。
慰めみたいに歌った貴女の声が聴きたくて。空にそっとカモメが飛んでいる。
 
真っ赤な光が水面を染め上げ、私たちは口付けを交わした。反故にした約束も、枠組みに収まったままの物語も、たぶんきっと虚構なのだ。
ただ、決められた道をなぞり歩く。繋いだと思われた手は果てもなく、ひたすらに。
 
――――貴女を待っている。


雨あがりの碧空へ

私は死ぬとき、一体誰のことを想うんだろう。
本当はすごく寂しいんじゃないかって気がした。
でもそれだけだった。
 
💧☂️🌈☔️💧
 
新人類、孤独を埋め込んだ心臓。
制圧できたら、人類の勝利だね。
"誰か"を想って歌うあなたが、私は少し羨ましいんだ。
 
🛰🌕🌏🪐🚀
 
雨あがりの、泥水ばかりの毎日で。
それでも青空にかかる虹はきっとすごく綺麗なんだろう。


第三部  AM 1:40


おとなぼっち

不純物のない私だったなら
あなたは愛をくれたのね
 
顬に轟いた鼓動
顬に落とされた接吻
 
鼓膜の奥から囁いた
愛を 罪を 願いを
 
純粋無垢な私のまま
氷の底で眠りについて
 
鼓膜の向こうで
確かに震えた
 
あなたの低いテノールに
私は何も返せなかった


ニュクスになる前のこと

こんな季節のそんな朝には
どうしてたって逃避行
 
あんな人人のとんでもない勘違いに
小旅行という名の逃亡劇
 
求めて踊って
愛して狂って
 
そんな季節のこんな明日に
どうもしないで死体アソビ
 
蔑む道化の夢見る聴衆に
世界という名の絶望劇
 
求めて踊って
壊して遊んで


砂糖みたいな楽園で

書きたいものを描けばいいんだな、と思ったら。結局、詩しか残らなかった。
だから、詩を書いて、死を描いて、詩人が死んだら、その灰を集めて、造ったのが、小説になった。そんな、あなた。
星屑みたいに不死鳥になって、砂塵みたいに銀河になって、愛している。


真空の歌

ふわっと重力が舞い、私は宇宙。喪うのはいつかの私だから、さよならは夜明けだ。街並みは今日も無害で、私は泣きたくなる鼓動を抱え込んだ。そして明日はまた昨日になる。夜の帳は貴方の色、接吻を強請る幼子に。傷口は消えるも私は『 』を失った。すべての代償は、、だれ?


Me-de-

ただそこに
世界があるだけ
 
水溜まり
 
いつかの下書きに
思い出ばかり
淡くなって
 
さよならだね
って言わないで欲しい
 
空が光って
多分私たち、メーデーになれる


カーテンに浮いた遥遠の街

今日も明日も明後日も
ディテールがあたしを生かす
 
食うも飽いたも間違って
シャンベルタンの赤石に祝う
 
空も空いたも微睡んで
ルベライトの明日に架かる


コンクリートでも i

何気ない毎日を
変わらないことの言い訳にはできないよ
 
例えセロハンテープが
上手くめくれなくても
例えシャドウパレットが
粉々に砕け散っても
 
ときは過ぎる
限りのない永遠みたいに
 
そうして僕たち
ひとりぼっちの言葉を
知ってしまうんだろう
 
無機質物体上の虚無に
さよなら、マカロン。


石油王

空は藍色から橙色へ、焼けていった。
樹樹は漆黒に染まり、夜は始まった。
南国で買ったポストカードによく似ていて、旅先の空気がした。
 
こんなよるなら、えいえんにつづいてもかまわないや。
あたし、ねむれないよるでもあいせたみたい。
 
ミラーボールも 甘いお菓子も
不燃ごみでよかったじゃんね


Sono Namida dé Sinouyo.

いつだって夜は絶望だ
見たくもない朝日を思って
泣いたりなんかしてやらないけど
 
凡そ七インチ弱の液晶画面が
ぼくを彩るすべてだ
ブルーライトが目に痛くて
でも死にたくなる理由には
なり得ないから
 
会えなくてもいいよ
理解できなくてもいいよ
 
ぼくら、
優しさで人を殺さないでいたいだけだよ


えほん博物館

とある研究機関。
まさしくマッコウクジラの白骨死体。
面白いギャグなら三回言ってもいいよ。
つまらなかったら一昨日からやり直しの人生だね。
ワニに欠伸をされたので。
わたしの人生はひゃくまんねんの貯金があります。
 
貯金箱は真新しいからね。


月9

咀嚼された毎日に
薄ーーーっぺらい
塩味だけ
 
消費されてゆく
お言葉様に
愛し愛された
それは錯覚
 
緩やかに
下ってゆく
低気圧
 
改変された
コピー用紙
見よう見まねの
恋模様
 
淡い水玉模様で
ラッピング


美術室の人体模型

明日が終わると知っていて
頬に手をあてた、きみの
可哀想な歯列をなぞって。
 
覚えたての言葉を虚無に
空想夢想に怯えてみせて
勘繰ったのは君の方だよ。
 
寂しい嘘はつかないで
貶めるためだけに生きている
可哀想だから可愛くて。
 
愛されたいなんて
虚構に消えてって、
肋骨だけが真相だね。


アポロLv.9999を目指した夏休み

苛まれて、劣等感。
浪費者たちの未来に幸あれ。
 
飽きるまで言葉を綴って。
呆れるまで愛をうたって。
 
可もなく不可もなく
私はどこまでも劣等生だ。
 
銀河惑星の向こう側、
真空パックで生き埋めにして。
 
泳ぐ金魚は鮮やかに
たゆたうことなく
夏の陽射しへ飛び込んだ。
 
お別れの挨拶
さよおなら


惑星軌道上のラブレター

夢が 想いが やさしさが
愛が 願いが さみしさが
ネオンライトをキラキラ受けて
瞬いている
 
人類はそれを美しいと呼んだ
 
見ず知らずの人の言葉が
突き刺さって 歯車は動き出す
 
夢が 想いが やさしさが
愛が 願いが さみしさが
有象無象の幻を生み出して
食べられる


不燃ごみの日

食い縛った奥歯が欠けて
早くここから抜け出したいのに
何もしないという不甲斐なさばかり
 
募って
摘んで
恥じて
死んで
 
澄み渡る秋の夜長
つんと空気が食い散らかす
無様で
醜悪に
塗れて
 
スナック菓子の包装紙みたい
千切られて
放り出されて
あとはたぶん
不燃ごみ


平凡だね、メロンソーダ。

砂漠に咲く
サボテンの花
 
砂浜をかけてゆく
麦わら帽子に消えた夏
 
柔らかな肉片を
あいして
あいして
だきしめて
 
高い空の彼方に浮かぶ
入道雲
 
溶けて
消えた
ひとなつのメロンソーダ


ギャグ漫画

朝 軟体動物みたいに
骨 満員電車にのって
シャキシャキしていく
ちょっとずつ
宇宙人を辞めてくんだ
足りないのは昨日だった
 
震える指先が必要としてるよ
糖分 塗れにまみれて くるりんぱ
夜が明けないことも
そりゃあるんだよ
 
だってここはノンフィクション
白馬の王子様は何処にもいないよ
帰るべきお城もないんだよ
 
私はただの土まみれ根無し草
今日を生きるので精一杯、なのさ
 
「今」だけを正解にして生きている
私はたぶん微睡みなんだ
 
エモさが加速してく
夜の続きみたいな朝が来て
寝落ちた私だけ置き去りだ


青春おばけ

愛を伝えようと思ったが
それは出来ない
何故なら私にとって彼女は
どこまでも美しいフィクションだから
 
ルブタンのピンヒールみたいに
歩くには適していない
ただの幻 ただの虚構
 
綺麗なままで死んでいて、と
軽々しくそう言ってしまうような気がして
すこし、怖い
 
永遠のない未来みたいな物なので


花いちもんめ

いいね、に殺される僕達
承認欲求の毒を飲もうよ
真夜中過ぎの楽園で
 
傲慢にも
愚かにも
 
誰かの人生に口出ししたくて
虚無感に苛まれた自信の為だけに
数値化を希望します!
 
有り触れていてよ、切実に
宇宙も星も大地も歴史も
本当に本当は必要となんてしてないよ
 
それでも、
いいねってする
あの子が欲しい


昨日の誰かと、今日の私はちょっぴり似ている

微熱の私も笑っていろよ
流星群を頬張ってさ
 
膝丈紺色のフレアスカート
高校生の制服みたいで私は好きだよ
まだ十代のままで存在していても
大丈夫みたい
世界に許される必要悪でいたいんだよ
 
ぐるぐる回る天体観測
望遠鏡を担いでいこう
限りもなく澄んだ明日の向こう側
 
君が祈る明日のこと、


つがい

幸せであれ、セカイ。
無秩序であれ、うちゅう。
星と星の間をスキップして、
わたしたち、賞味期限切れ。
 
幸福であれ、くちびる。
虚空であれ、熱帯夜。
踊る踊るさかなの群れに、
わたしたち、星の子達。
 
小指と小指を絡み合わせて
わたしたち、幸せであれ。
 
熱帯魚の夜に知っている、
愛の在処。


科学発明部🧪アイドル

「きのうの私」から脱退しよう
歌って踊れるアイドルになろう
絵日記描いてあの頃にもどろう
 
夕陽と朝日が眩しくて
きっと君は夜を忘れて
淡い淡い思い出と
ぽろぽろ泣いた世界旅行
 
婚約指輪とピンヒールも
海月と海牛の餌になった
さいえんすふぃくしょん
愛を唄おう
はっしゅたぐ上のねおんさいん


自己嫌悪の仲直りに

さすらい人に祈りを捧げる
ただただ謙虚であれ
遠くの北極熊が哀しみに暮れた
 
おとぎ話もいつかは終わる
めでたしめでたしは始まりの合図
 
きらりと澄んだ宇宙の音色に
沈まないで宇宙船
 
ふわふわと無重力に従って
放物線を描くんだ、宇宙服
 
なし崩しに手を繋いで
僕達、銀河800光年先を
あいしてた


マカロンの甘さに言い訳は不要。ゆえに幸福。

言葉を神格化したらオワコン
世界の侮辱罪であれマカロン
 
ふらっと辿り着いた先が
雪の国でも 夢の国でも
地下帝国でも
 
嘘とはったりと言い訳に
そうとは知らずに
らぶれたーを送っているんだ、
詩人たち
 
それでもいいじゃないか
っていうのもまた大袈裟に恋してる
 
何かを愛するのはひどく卑しいことだね


前日談・あるいは後日談

少しだけ君の言いたいことが分かったよ。散りばめられた金平糖に足が傷付けられるから、私たちは臆病なんだね。いつまで経っても宇宙旅行には行けないね。真空で死ねたら楽なのに。どうしてか最後の一歩を踏み出せないまま、無様な大人になっちゃったんだ。濾過して蒸発させて、星屑になれよ。


線香花火の夜に

ずっと好きじゃなくてもいいよ
歪みすぎた劣情は
どうしたって恋情にはほど遠いもの
 
落ちぶれた敗者の記憶に
あの頃の花火が上がった
 
熱さまシートで頬を冷まして
この目が開くなら私は何者でもないわ
 
ずっと好きじゃなくてもいいよ
待っていなくても
ここはどこかも分からないから


コンテンポラリー

どうせどうせの八王子
行き詰まった毎日に
灰色コンクリートの4面体
 
愛して欲しい
って欲してる
 
いいやいいやのハチ公前
交番勤務のお姉さん
行きずりの街で小説書いてる
 
愛して欲しい
って欲してる
 
つらつら重ねる路地裏に
眠たい子猫みたいに踞る
新しい世界をください
 
図書館前の孤児として


卒業アルバム

愚かで爽やかな彼女たちは
罪悪感を棄てたっていい
 
軽々しく軽率に
朝まで踊り狂うんだ
 
付箋に落書きされた恋とか愛とか
呆れるほどのジャンクフードたち
 
支離滅裂で荒廃的な
理性も知性もすっからかん
 
それでも下品に堕落しない境界線を
トゥシューズで駆けていくわ


第四部  言葉を紡ぐぼくらに遺されたものは


言葉を紡ぐぼくらに遺されたものは

さよなら、ありがとう
ぼくらはぼくらのままここにいるよ
世界は丸くて優しくて
ぼくらは悲しい生き物なのだ
 
言葉を愛そう
まるで君を愛するみたいに
言葉を描こう
まるで君を抱きしめるように
 
夢を見るためだけに
ぼくは今、ぼくらを失う


六畳一間

地球の裏側に
 
落っことされて
 
暗い宇宙を
 
覗き込み
 
一人部屋の
 
玩具が啼いて
 
セミダブルほどの
 
小惑星の中
 
胎児のように
 
丸くなって
 
そうして僕らは
 
言葉を知らぬ


宇宙の私たち

くしゃくしゃに丸められた紙屑
こなごなに砕かれた星屑
 
合わさって
宇宙になって
私たちは共にいる


無音

言葉を前に
私は無力だ
 
存在の後に
私は非力だ
 
何も
何も
何一つ
 
青空の中に
私は透明だ
 
春風の外に
私は暗闇だ
 
何か
何か
彼方へ
 
地球の上に
私は生命だ
 
宇宙の下に
私は塵屑だ
 
何に
何に
何者に
 
故郷の間に
私は記憶だ
 
水底の
記憶だ


あとがき


 初めまして。遠藤さやです。読み返してみて、一体どこまで懐疑的なんだろう、と不思議な気持ちになりました。
 詩って不思議だな、と思いながら、思い続けながら、ずっと書いてきました。時には焦燥感から、時には義務感から、そしてある時は死なないために、書いていました。
 ここに描かれるのは、私の残像であり、私ではない誰かであり、ただの虚無であり、ただの文字列です。読者の皆様が何を感じるのか、何も感じないのか、それが知りたいような、そんなことどうだっていいような、そういう曖昧さを愛しています。愛しているから、懐疑的にもなるんでしょう。それは私の中で矛盾にはなり得ません。
 ところで、読者の心に何も残さない文字列たちに果たして意味はないものなのでしょうか。そうしたら、詩って何なのでしょうね。共感を得るためだけなら台詞でいいですし、自白をしたいのならエッセイでいいですし。ちなみに私は言葉の実験みたいだな、って思っていつも書いています。さながら詩人たちはマッドサイエンティスト、というところでしょうか。
 虚構でも、無秩序でも、一向に責められずに存在を許されている文字列たちは、「詩」だけだと思うのですが、世界の見解は違うかもしれませんね。それもまた一興。
 文字列たちの空虚さに辟易してもらえれば及第点とします。
 この詩集に興味を持っていただき、そして最後までお読みくださり、ありがとうございます。また、どこかの文字列でお会いできることを祈って。


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