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ほんとうは誰にも見せたくない、2週間

スイスに来た

当初の予定は、イースターホリデーの1週間だけだった。
でも、2週間いることになった。

私の社会適応力の低さ故に、ドイツでの生活がまたバタバタしてしまって、住む場所がなくなったから。

まあなんとかなるだろうと思いつつ、家を探してくださいと知り合いに丸投げし、
職もなにも決まっていない状態で、先週ドイツから夜行バスに乗った。

結果からいうと、なんとかなっている。
家もいい感じの環境で見つけてもらって、帰ったらそのまま住めることになったし、仕事もちょっとだけなら決まった。
あとはまあ、選り好みしなければ、ジャパレスでいらっしゃいませーしたりすれば、生きていくのに困らないくらいは稼げるんじゃないだろうか。

ドイツに帰るまでは、去年大阪から上海まで乗った船で出会ったスイスファミリーの家に泊めてもらっている。
私はなんと運がいいのだろうか。
神も仏も菩薩も輪廻もご加護も息吹もなにも信じていないし、人間性に欠陥があるので大体のことにはありがたいとかあんまり思えないけれど、
今回のことはほんとうに、カアバ神殿に向かって土下座したくなるほどに、ありがたくて、ありがたくて、たまりません。

小学生の頃からずっとずっと、スイスにはいつか来るんだろうなと思っていた。
でも、留学だとか旅行だとかはまったく現実のものとして感じられなかったし、
子どもの頃にカナダやハワイでトラウマを負っていたので、そもそも海外になんて行きたくないと思っていた。
だから大学生の頃には来なかった。
それでも今になって自分で決めて自分で来るなんて、びっくりしているけれど、こういうのが私のやり方だなって、勝手に腑に落ちている。

チケットを買って寝坊しないように気をつけて、めんどくさくならないように周りに言いふらしたら、それだけでもう、どこへだって行ける。
ググって出てくるところなら、どこへだって行けちゃうんだ。

スイスは、小学生の私が思い描き、感じた通りの場所だ。
特に私が今ステイしている都市は緑が豊かで、中世の街並みそのもので、穏やかで、それでいて人々の教養レベルはとても高くて、心に余裕があって、何もかもが豊かにうつる。

もちろん、それだけがスイスではなくて、負の側面もある。
難民だとか、保育園が足りない&高いだとか、政治がどうとか、話題は世界中どこも変わらない。
先日、数時間だけ他の都市に立ち寄ったときは、綺麗な街並みだとは感じたけれど、ここほど好きだとは思えなかった。
それでも、私はスイスの人たちみんなに良くしてもらって、大都市とは思えないような自然に囲まれて、美味しいチーズとチョコレートを食べて、毎日泣きそうだ。
ドイツ語はまだまだだけど、言葉を交わすほぼ全ての人と驚くほど考えが通じて、言いたいことがうまく伝えられる。
とても相性のいい人と出会って、恋に落ちた瞬間みたいだ。

こんなにも安心できる場所があるなんて。
他のヨーロッパの都市とはまた違って、すごく安心できる。
ドイツもベルギーもルクセンブルクもオランダもフィンランドも、それぞれよかったけれど、
ここの安心感は、目を見張る。
川を眺めて読書をしても、ただ裏道を散歩しても、買い物をしても、もちろん観光客らしく大聖堂に登ったりしても、なにをしていても、空気がゆるやかだ。
生活に、心に、余裕があるとはこういうことだと、肌で感じている。

イースターの期間だからとか、春だからとか、そういうプラスの要素があるから、余計にそういう感想を抱いているのかもしれないけれど、
私はここが好きだ。ほんとうに好きだ。

最高以外に表現のしようがない最高な川のある最高な都市で、寝る場所と食べるものを与えてもらって、毎日驚くほど親切にしてもらう日々を送っている。

仮に住んだりしたらきっと、思いつきもしないほど面倒なことがきっと待っている。
それでも、あの川があって、とても穏やかで親切で心にゆとりがある豊かな人たちに囲まれて暮らせるのなら。
他の国や地域よりよっぽど耐えられるに違いない。

素敵なんて言葉を使うのをためらうほどに素敵な人たちと同じ土俵に立てるように、がんばりたいと、素直に思えた。
日本でも外国でも、たくさんの普通じゃない経験をして、このタイミングで来てよかった。すごいぞ私。

ここでの出来事をすべて仔細に書いていたら嘘になってしまう気がするし、自慢したいわけでもない。私のこの経験は、見世物じゃない。
だから、書かない。

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