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個人的な体験/大江健三郎(3)


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読み終わりました。

この小説のプロットとかテーマとかについて私に語れることはほとんどありません。
だって私は子どもを産んだことも産ませたこともないし、その子どもが脳に異常を抱えていたなんて経験ももちろんないし、ていうかまだ独身だし。玉山鉄二ください。

だからなんというか、妻やその義両親との関係性に悩んだり、子どものために夢を諦めなければならないと落胆したり、異常のある子どもから逃げ出したくなったり、とかいう感情をリアルには知らないんですよ。
でも確かにそれらがたくさん降り掛かってきたら逃げ出したくなって、非道徳的とか非人道的と呼ばれる行為が正当だとかそういうふうに考えて行動してしまうっていうのは、なるほど確かになあ、って。
まったく同じ体験というのはできないだろうけれど、似たような状況に陥ったとき私はどう振る舞うのかなあ、どう振る舞うべきなのかなあ、とか考えたけどぜんぜんわかんないや。
責任とらなきゃいけないとはなんとなく感じるけど、逃げだしたいとか夢を諦めたくないとかの感情をどう抑えたり折り合いつけたりするのかなあって。まあ夢はどうにかして叶えればいいと思うけど!

有り体に言うと、考えさせられる小説って感じでした。考えさせられるわ〜って言葉の響きは1ミリも考えてなさそうだからあんまり好きじゃないんですけどね。

あとこの本に限らず大江健三郎さんの著書はぜんぶそうなのかもしれないけれど、比喩や形容が多いしそのどれもが見事だなと感じました。
ふつう、文章は形容詞から腐るとまで言われるのに。こんなにたくさん形容した文がすべてまとまりを保ちつつそれぞれ生きているのはすごいなあ、と。
形容詞から逃げるんじゃなくて生きた形容詞を生きたまま文の中で飼えるようになりたいですね!

個人的には性描写ってすごく気分悪くなるんですけど、この本のそれは具体的なわりに私の脳がそこまで拒絶しなくて、なぜかと問われればそれが具体的であるからこそ、だと思う。俗語ではなく教科書で見る単語で書かれているとどこか安心する、みたいな。



今日は少し前に近所にできたギロッポン感の強いお寿司屋さんに行きます。
あと友人がカズオ・イシグロのことをカズオナカグロイシグロと言っていたので図書館の検索機でカズオナカグロと検索してしまいました。みなさんもお気をつけて!

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