灯火エン*enca_toe

日々の暮らしの中のかけがえのない瞬間を捕まえてnoteに書き記していきます。本業はフリ…

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日々の暮らしの中のかけがえのない瞬間を捕まえてnoteに書き記していきます。本業はフリーの翻訳者。一男二猫の母。

最近の記事

【育児備忘録】夜中の授乳には猫が必要だった

 息子はほぼミルク派だったので3ヶ月くらいまではだいたい規則的に3時間おきに授乳していた。泣いたら、ミルクを作り、おむつを変え、とりあえず左右の母乳にトライしてから、ミルクを飲ませ、ふたたび寝かしつけるというルーティーンを続けていた。   この3時間間隔というのは、おむつを変え終わった途端うんちが出たり、寝てくれないうちにまたお腹が空いてしまったり、授乳と授乳がつながる事態になったりする。どこかの隙間でお風呂とご飯と家事もこなさなければならない。ただミルクは腹持ちがいい

    • 【育児備忘録】私たちはBluetoothみたいなのでつながってる

       出産という大きな節目を境に、決定的な違いと呼べるものはいくつかあるけれど、そのうちのひとつに「とうとう私たちは別の人間になってしまったんだな」というある種の切なさが私にはあった。  夜中の破水からはじまったはじめての出産は翌日の夕方までかかった。大きなお腹に別れを惜しむ余裕はなく、気づけばこのお腹は空になってしまっていた。    赤ん坊を無事この世界に生み出したことは真におめでたいことだけ。それでもかれこれ11ヶ月、自分の臓器のひとつみたいな感覚の生命体がある日

      • ドボンバーグの季節

         今年もドボンバーグの季節がやってきた。  ドボンバーグの季節は秋と冬の間にやってくる。厳密にいうと、鍋が美味しくなる季節で、夫の実家の庭に最初のゆずが収穫できる時期だ。  ドボンバーグは夫にしか作れない。しかも作り方は秘密だそうで決して教えてくれない。  ドボンバーグはたいてい一人用の土鍋に入っていて、醤油色のスープの中に、千切りのにんじんと大根と、春菊や白菜などの葉野菜が入っている。その色とりどりの野菜の千切りは、まるで鳥の巣のように、真ん中にあるハンバーグを温めて

        • 授乳の予感

           突然だけど、乳首の先から体液が出るっておかしいと思いません?  いや、出産したもんだから母乳が出るのは当たり前なんですけど、フツーに冷静に考えてみたらおかしいでしょう。異常事態ですよ、これは。  そう。だってこれは血液だもん。完母の人なんかは1回に100ccとか出せちゃうらしいで。そんなんフツーに死ぬやろ。 ……ってついつい喋れたこともない大阪弁になってしまうそんな真夜中がポイズン。  わたしはひとり息子に拒否られているほうの乳房を絞って搾乳を行っています。  倫

        【育児備忘録】夜中の授乳には猫が必要だった

          かつら界の大御所:山田さん

           テレビ番組や映画のエンドロールを見ていると、かならず目に止まる人物がいる。  それはカメラマン、照明、スタイリストの次あたりに流れる「かつら」担当の山田かつらさんである。  小学生の頃から今に至るまでのわたし個人的な統計では、山田さんのかつら担当率はめちゃくちゃ高い。有名どころの作品ではほぼかつらは山田さんが担当している。山田さんはかつら界の大御所どころか、テレビ・映画業界のかつら需要をほぼ独占しているのである。  他の方がかつらを担当したというスタッフロールを私は見

          かつら界の大御所:山田さん

          こたつにもストーブにも湯たんぽでさえも再現できない、生き物と生き物が紡ぎだす幸福の発熱

           あともう少しのところで手が届かない。  夢とか野望とか地位とか、そういうものの話ではなく。今、まさにこの部屋にある電気のスイッチに手が届かない。  この状況に陥るたび、なぜいつまでもわたしは蛍光灯に付属でついてきたリモコンの設定を怠ってしまうのだろうと悔やむ。五月の正午を過ぎたばかりの窓の外は明るくて、レースのカーテン越しに青空が広がっている。  ついさっきまで台所で洗い物をしていたので、数カ所水がはねた跡があるエプロンもつけたままだ。導かれるように、いつものように、

          こたつにもストーブにも湯たんぽでさえも再現できない、生き物と生き物が紡ぎだす幸福の発熱

          大人は知っている

           私だっていい大人だ。どんなときにお酒が美味しいかよくわかっている。    休日の朝、起きたら気分も爽快で天気も快晴。こんなときは掃除に限る。できればそんなに暑くない季節で最初は少し肌寒いけれど、室内をぐるぐる歩き回りながら掃除機をかけて、階段を水拭きしているうちにじっとりと心地よい汗をかいている。  部屋がきれいになって気持ちがよいし、掃除が終わり昼間からお風呂に入って汗を流すのも最高だ。  風呂上がりはビールを飲む。  特別なちょっとお高めなやつでなくていい。いつ

          大人は知っている

          子育てを行う自分の手についての考察

           子どもが生まれたら、やっぱり生活は一変した。  それはまるで大きな竜巻が家の中に入り込んで一瞬にして部屋をぐちゃぐちゃにして、それから自分たちの持ち分の時間をも奪っていく、そのような感覚だった。  片付けたはずの部屋はあっという間に散らかっていく。朝がきた次の瞬間は夕方だ。季節が自分史上最速で目まぐるしい。庭に植えてある梅の、満開の様子を楽しめなかったなと思っていたら、気づけばひぐらしが鳴いている。桃色に染まる夕焼けに秋の片鱗を感じる。  息子の登場によって、二本の手

          子育てを行う自分の手についての考察