日本のレベルが落ちている原因

 前々回『レベル6社会』、
 前回『国のレベルと「レベルを上げる条件」』の話の続きです。

 前回、「日本のレベルは6あたり」と書きました。
 私は、日本は昔よりレベルが落ちていると見ています。今回はその理由を書きます。

 日本のレベルが落ちた原因は、タイプ6の日本人にとってのストレスにさらされているからです。

 先ず、タイプ6の簡単な説明から始めます。
 タイプ6は、集団主義的で、安心と安全を求め、恐がりで、ルール・秩序・一律のあるもの を求めます。
 そしてタイプ6は、集団維持のためのコミュニケーション能力に長け、周りに安心と安全を提供し、恐いものを取り除き、ルールを守り、秩序ある世界を構築します。

 これから、レベルが落ちた原因をあげていきます。

 1つ目は、所属集団の危機です。タイプ6は個人で行動するよりも何らかの集団に属して、安心・安全・安定を得ることを望みます。そしてタイプ6は安心・安全・安定を提供してくれる集団のために忠誠を誓います。この集団は、安心・安全・安定を提供してくれるのであれば、企業集団でも宗教集団でも政治集団でも反社会的集団でもかまいません。
 ところが安心・安全・安定を提供できる集団は減ってきています。職場での正規と非正規の分断。正規の中での分断(どう採用されたかで違いが出る)。リストラの危機。これらはタイプ6にとってストレスになります。
 また、所属集団に忠誠を誓うタイプ6は、逆に言えば、所属する価値の無い集団には忠誠を誓いません。ですから非正規やアルバイトに倫理感を求めるのは無理が出てきます。同様に企業から解雇されれば、忠誠心も無くなるので、日本から技術流出が起きたのもうなずけるものがあります。

 2つ目は、安心・安全・安定の危機です。年金問題。原発事故。領土問題。トランプ氏はアメリカ軍を日本から引き上げる可能性をほのめかしているので、国防問題。タイプ6は、これらのストレスから逃げるために、これを無視しようとします。タイプ6はストレスの原因に正面から対処することができません。これは他の性格タイプから見ると「恐がり」と映ります。「穴に首を突っ込んだダチョウ」の状態に見えるということです。人によっては「見ザル聞かザル言わザル」と表現するかも知れません。
(話は少しそれるのですが)ですから、日本のレベルを下げることは、今の世の中において他国は簡単に行えます。日本の領土に攻め入れば良いだけです。日本は恐がりなので、対処が遅れます。そこでさらに揺さぶりをかけます。国交断絶、現地人の拘束などなど。常に安心・安全・安定を脅かす態度を取っていけば、日本はどんどんストレスに陥りレベルを下げて行くことでしょう。
 ちなみに同盟国の大統領になる予定のトランプ氏が安心・安全・安定を脅かす態度を日本に取っているのは皮肉な話です。タイプ6日本がアメリカに求めているものは安心・安全・安定なのに・・・。
 危険やリスクを「恐がって」、出遅れる姿は、『「アフリカ開発」の転換点、我々に何ができるか (2ページ目)・(2016/11/30 國井 修 日経ビジネスオンライン)』という話の中でも描かれています。

(前略)2000年以降に私がアフリカで出会ったアジア人はほとんどが中国人。それも、内戦後のシエラレオネ、エボラ熱が流行するガボンなど、政情、治安、住環境が劣悪な場所でもその存在は大きく驚かされた。さらに、韓国人、インド人にもアフリカの様々な国で会うようになった。彼らの中には「アフリカは今バブルだ。危険は伴うが、濡れ手に粟のように金が舞い込む」と興奮しながら話す者もいた。 一方、日本の商社の駐在員などと話をすると「リスクが多いので、アフリカでの事業は安全な場所で慎重にやってます」との答えが返ってくることが多かった。 この違いが母国の経済成長の勢いの違いにもつながっているのだろうか、と正直感じることも多かった。

この文章を読むと、タイプ6日本人が、安心・安全・安定の中でしか活動できないことがよく分かります。そしてこの話は、この後の「無秩序」や「決断」「挑戦(チャレンジ)」につながる話でもあります。

 3つ目は、無秩序です。タイプ6は秩序立ったものが好きです。無秩序や混沌はストレスで、対応ができません。ルールができるまで動けません。これはタイプ6の欠点です。
 日本の新聞を読んでいると「ルール作りを!」そればっかりです。今の世界では、ルールが無い状態で動くことが重要です。ですが、これはタイプ6にはできません。
 ですから、日本のレベルを下げることは、今の世の中において他国は簡単に行えます。ルール無き無秩序な状態に持って行き・・・(以下、略します)。

 4つ目は、決断を求められる状況です。タイプ6は自分一人での判断や決断にストレスを感じます。判断するときは、ルールを元にしますし、周りに相談もします。もしくは自分を導いてくれる指導者を求めます。タイプ6は集団気質であってリーダー気質では無いので、先頭に立って決断して行くことにストレスを感じます。
 ですが、今の混沌とした世の中では、常に決断が求められます。不確実なものへ挑戦(チャレンジ)することが求められます。じつは政治の世界での、国と国との交渉は、程度の差はあれ昔から混沌への挑戦と決断が必要でした。タイプ6的な性格は、これが苦手です。高度成長期の日本で「政治三流」と言われていたのはそうした理由からです。同時にそのころの日本で「経済一流」と言っていられたのは、経済成長は、右肩上がりでやることが分かっていて、秩序が(ある程度は)あったからです。今は、混沌の度合いがさらに増しました。日本の企業は、同じことの繰り返しでは食べていけなくなり、企業にも、混沌への挑戦と決断が求められるようになりました。それが原因で、今の日本企業は、「経済一流」から脱落することになりました。それに加え、気が付けば日本は少子高齢社会の先頭を走ることになってしまいました。タイプ6は先頭は苦手です。真似する相手、手本となる相手はいません。自分で不確実なものへ挑戦し判断しなくてはなりません。原発事故も同様です。自分で判断しなくてはなりません。そこにストレスを感じ、たぶん今でも廃炉処理から逃げたいと思っているはずです。


つまり、
日本のレベルを落としているストレスの原因は、前回書いた「レベルを上げる条件」とは逆のものです。

これが今の日本のレベルを、レベル6あたりまで落としています。

参考
【エニアグラム用語】レベルとは?

エニアグラムで日本を説明したそのほかの文章

・『通常のタイプ6(これで近頃の日本を説明する』リソ&ハドソンのレベルを解説した文章を引用して今の日本の状態を説明しています。

・『タイプ6は心配事・不安に どう反応しているか、 精神レベルにより どう変化していくか』精神レベルによるタイプ6の違いを私なりに かみ砕いて説明しています。『通常のタイプ6』が分かり難い場合は、こちらも読んでみてください。

・『農耕民族なタイプ6の性格が日本の高度成長期を支えました(そして、今は・・・)』タイプ6ということの、昔と今の違いを書いています。

タイプ6日本人論書いてます



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