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「知っている言葉を問い直す」ーempublicメールマガジン「根津の街から」(2020年10月16日発行)

時代の流れと共に、言葉の意味が少しずつ変わっていくこともあります。
例えば、「持続可能性(サステナビリティ)」
この言葉が広がったのは、1992年の「国連環境開発会議(地球サミット)」がきっかけと言われています。
90年代、持続可能性は「地球環境の危機を考え、環境負荷を抑え、地球に優しくしよう」という意味が中心でした。

近年の「持続可能性(サステナビリティ)」は、そこから概念が広がったものになっています。
一つは地球環境の危機が将来のことではなく、差し迫った危機となったことで、持続可能性は「変化」の意味が大きくなりました。
気候変動を抑えるには「排出量を抑える」のではなく、石油などに頼らない「脱炭素」へと舵を切ることが求められています。

さらに、環境問題と貧困、病気、難民などの関係が大きく浮かび上がってきました。
気候変動が大規模な干ばつを起こすことで、農業を痛め、貧困の拡大や飢餓を生じさせ、大規模な難民を生み出している。
ジャングルを守る活動をしても、途上国がグローバル経済に巻き込まれ、大規模農業のために森が焼かれてしまう。。
森が破壊され、動物と人間の距離が変わってきたことで、SARS、COVID-19など新しいコロナウィルスの大規模感染が広がりやすくなる。

このような状況の中で、「持続可能性」は、環境問題に加え、様々な人権や社会課題、経済のあり方そのものを問う言葉となっています。
そして、「地球に優しくする」から「地域や企業が持続できるように経済社会システムを作り直す」ことを目指す概念となりました。

ただ、どうしても言葉が概念的になりがちで、言葉の意味をどう分かち合うといいか、日々、試行錯誤しています。
そんな中、今度、ゼミ「サステナブルまちづくり概論」でご一緒する東京大学の横張真先生が、このようにおっしゃっていました。
「これまでの建物や商品は、” 完成した時が一番いい状況で後は劣化していく”と考えられがちだった。
 そこから、”時間が経つ中で意味深くなっていく、もっと多くの関りが生まれる”と意味を見つけなおすのがサステナビリティだ」

価値、良いもの、時間、都市・・・など日常で何気なく使っている言葉の意味を問い直すことが、持続可能な世界をつくるカギだと改めて考えたのです。                  (エンパブリック代表 広石)

*オンライン・ゼミ「サステナブルまちづくり概論」の詳細はこちら
      https://sustainablecity.peatix.com/


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