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心理学紹介-1

このnoteを書いたのは西田さん

人間の「心」を研究している分野

人間の「心」を研究している分野といえば、どんなものがあるでしょうか?

多くの人がまず思いつくのは、「心理学」ではないでしょうか。心理学を大学で学んだことがない人でも、心理という言葉は聞いたことがあるし、心理学が人の心を研究している分野だということはなんとなく知っていると思います。私たちが「心理」という言葉にけっこう馴染みがあるのは、「心理テスト」で運勢を占ったり気分を当てたりするゲームを、大人も子どもも日常的に遊びでやっていることが理由かもしれません。

例として、下の「心理テスト」をやってみてください。


心理テストをやってみよう

(anan Beauty+ 「何に見える…? 今のあなたの“気持ちの不安定度”がわかる心理テスト」​​https://plus.ananweb.jp/fortune/psychology-test/13628/ 2022年2月21日閲覧)

この「心理テスト」では、黒いシルエットが何に見えるかを選ぶことで、気持ちの「不安定度」がわかるそうです。あなたは何を選びますか? 私はA: がま口財布を選びました。金具の部分が長すぎて開けにくそうですが。では、結果を見てみましょう。

私はそんなに不安定な状態ではないという結果になりました。しかし私はこの結果にほぼ反対です。たしかに真面目そうに見えてくだらないことを考えていることもありますが、楽観主義でオンオフの切り替えが上手なら、もう少し楽な人生を歩んでいると思います。

他の結果を見ると、Bは70%、Cは95%、Dは30%の「不安定度」になっています。結果からこの「心理テスト」の仕組みを半ば無理やりにでも説明してみるなら、どうやらこの図からカタツムリという得体の知れないヌメヌメしたものや異星人という未知の恐ろしいものを想像してしまうということが、心に負荷がかかっている状態の指標となっているようです。みなさんはどうでしたか? 結果に納得しましたか? それとも、「こんなの当たってない!」「こんなのインチキだ!」と思いましたか?


心理テストと心理学

以上のような「心理テスト」は、実は心理学に似たような研究があります。というよりも、この「心理テスト」はそれを参考にして一般向けに娯楽として作られたもののように思えます。それは、ロールシャッハ・テスト Rorschach Testというものです。


ロールシャッハ・テスト

ロールシャッハ・テストでは、被験者に線対称のインクの染みを見せて何を想像するかを語ってもらい、その表現を分析することによって被験者の思考や気分やパーソナリティを分析する心理学の方法です。(1)

(1) このテストはスイスの精神科医であるHerman Rorschachによって1921年に発表されました。発表後数十年間、心理測定法としての信頼性や妥当性に対する批判と、批判に対する応答を繰り返してきました。

(これは実際にロールシャッハ・テストで使用されるカードで、著作権が失効しているためWikipediaにアップロードされている)

私も大学生のときに一度、このテストの被験者になったことがあります。上の画像以外にもいくつかのインクの染みを見せられて、何に見えるかをその都度答えていきました。何かの動植物やモノに見える、何かをしている人に見える、などと答えやすいときもありましたが、ちょっと頑張ってひねり出さないと答えられないときもありました。

今でも憶えているのは、下のカラフルなカードに対して「う〜ん、あえて言うならMRIで撮った腰の断面図に見えます……」と答えたことです。なぜそのような具体的で変な答えになったのたかというと、このテストを受ける数日前に腰痛で病院に行きMRIの検査を受けていたからです(もちろん、実際に数日前MRI画像を見ていたことも実験者に伝えました)。このカードを「腰のMRI画像だ」と言ったのは世界でも自分だけなんじゃないかなという思い出とともに、実験者が私の予想外の答えにちょっと困っていたのも憶えています。

話を戻すと、最初の「心理テスト」とこのロールシャッハ・テストには、ある共通点があるといえるのではないでしょうか。それは、絵やインクの染みという視覚情報を人がどのように受け取るかということからその人の「心」を解釈しようとしている、というやり方です。たしかに一方は、心理学という確立された学問分野で用いられていて、これまで多くの批判を受けて改善されながらも生き残ってきた手法です。そして他方はただのゲームに過ぎません。しかし両者とも、根本的にやろうとしていることは同じなのです。そういう意味で、あの「心理テスト」は最もライトな心理学であるといえそうです(ここでいう「ライト」とは、ライトノベルの「ライト」と同じような意味です)。

学問らしさとは

でも、大学で心理学を専攻した方などは特に、いやいややっぱりロールシャッハ・テストは「学問」、もっといえば「科学」であって、「心理テスト」は遊びだよ、ぜんぜん違うよと言いたくなりますよね。では、「心」を扱う学問としての心理学とライトな心理学は、何が違うのでしょうか。心理学の「学問らしさ」とは、どこにあるのでしょうか。

次回からは、心理学が「心」をどのような手法で研究しているのかを概観し、その手法の正しさを評価する基準について紹介することで、この問いに答えていきたいと思います。

次回▶
心理学は「心」を扱う学問である

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