見出し画像

VUCA時代に理想的なエンパワーメントされた組織の創り方②「オーナーシップを高める情報共有」

前の記事に引き続き、「社員の力で最高のチームをつくる: 1分間エンパワーメント」を読みながら、ブツブツ独り言を書いて行こうと思います。

『エンパワーメントを高めるぞ!』と言っても戸惑うだけ

「エンパワーメントを高めるぞ!」とマネジャーが伝えても、メンバーから見れば、「何か面倒臭そう…」「忙しいのに…」と多くのメンバーが前向きにはならないです。これは、「WIIFM=What,s In It For Me(自分にとって何の意味がるのか)」が分かっていない状態だと、本書では語られています。

取り組みの意図や狙いを伝えることは、他の取り組みと同じく大切です。もちろん、伝えるだけでやる気になるわけはないですが、在中国日系企業では「伝えたつもり」が非常に多いです。時間をかけて取り組む施策なので、ここはしつこい位、伝えることをお勧めします。

象徴的な取り組み「情報開示」

実は、この本を読んで、最も考えさせられたのは、エンパワーメントを高める最初の施策である「情報開示」についてです。

本書では、メンバーにオーナーシップを要求するなら、自分自身でモノゴトを考えられるだけの情報を提供すべきだと語れています。メンバーが仕事を進めるために必要な最低限の情報だけでなく、自分で状況を把握・分析し、今何をすべきか考えるために必要な情報を指しています。

例えば
・コストはどの程度?利益はどれだけ出ているの?
・計画に対して、現在の進捗状況は?
・自社のマーケットシェアは?
・不具合によるクレームなど、顧客の声は?

つまり、経営・マネジャー層が、日々正しい意思決定をタイムリーに行うために、必要としている情報の全てを、メンバーにシェアすることが必要だということです。自社と自社を取り巻く環境について情報を共有することは、メンバーをエンパワーメントして、オーナーシップを持たせるためには必要不可欠と語られています。

情報開示が出来ない理由

私の経営している会社でも、本書の指摘を受けて、よくよく振り返ると、隠しているわけではないですが、伝えていない情報が多々ありました。クライアント企業に当てはめてみると、意図的に情報開示範囲を決めている企業が大多数です。特に日系メーカーなどは開発情報などは、駐在員のみがアクセス権限を有している企業が多いです。

『下のメンバーに、そんなことを教えたら危ないですよ』
実際に、情報開示を行おうとすると、こんな声が必ず聞こえてきますよね

階層における上位者と下位者のあいだに線を引くような認識は、ビジネス世界ではもはや何の役にも立たない、時代錯誤の序列意識です。

社員の力で最高のチームをつくる: 1分間エンパワーメント

本書では、「時代錯誤の序列意識」と一刀両断し、習慣や伝統を壊していくことが上位者の役割であると指摘しています。マネジャーにとって多くの情報を共有することは恐怖が伴います。しかし、その恐怖とはメンバーをコントロール出来なくなる恐怖だとされています。

情報を伝えない行為は、メンバーから見れば「要するに信用されてない」と、受け止めてしまいますよね。会社から信用されていないと感じているメンバーに「オーナーシップを高めよう」と期待するのは、確かに無理があります。「どうせ信用されていないし、言われたことだけやっておこう」と考える方が自然ですよね。

正確な情報を持っていなければ、責任ある仕事をすることができない。
正確な情報をもっていれば、責任ある仕事をせずにいられなくなる。

社員の力で最高のチームをつくる: 1分間エンパワーメント

マネジャーであれば誰でも「責任感があって信頼できる部下」が欲しい、考えるべきは「責任感があり、信頼できる部下をどう育てるか?」ということ。本書では、その方法として唯一無二な方法こそ情報開示だと語られています。

仕事に関する情報を提供し、その情報を利用して自由に仕事をさせる、たったこれだけのことで驚くような成果が生まれる

社員の力で最高のチームをつくる: 1分間エンパワーメント

前提となるのは「失敗を許す、組織風土」

本書では、「情報開示から素晴らしい成果が生まれる」ことを、具体的な事例を交え、繰り返し強調しています。しかし、実現するには2つの組織風土が前提となります。
・失敗が許される安全性
・新しいことを試す自由
この2つの前提条件を揃えた上で、情報開示を行えばメンバーの中に経営層と同じようにオーナーシップが芽生えると語られています。

失敗せず波風を立てなければ出世する組織の価値観の中では、人が誰でも持っている「優秀で在りたい」という欲求は表面化されないということです。
「失敗=学ぶチャンス」を組織の共通認識に定着させるには、日々の業務活動で、マネジャーが手本となる行動・発言を繰り返し続けるのみです。

本書では具体的な事例として、エンパワーメントされたレストランを紹介しています。レストランに関わる利益率やバランスシートを情報開示したところ、メンバー自身が利益拡大に向けて、様々な取り組みを試行錯誤し、最終的には売上・利益拡大を実現したというお話しです。実際には、細かく紹介されているので本書を読まれることをお勧めします。

「情報共有」だけではオーナーシップは高まらない

私の経営する会社でも「情報共有」を早速実践してみました。経営数字など隠していたわけではなく、あえて積極的に伝えていなかっただけなので、経営情報の全てを開示しました。
※開示する際に、給与情報詳細だけは出さないようにと財務から懇願されたので、それだけは現在も非公開にしています。

結果は、数字を見ても自分で現状を分析するようなことはなく、エンパワーメントに大きな変化はありませんでした。本書では3つのエンパワーメント施策を併行して実践しなければ効果はないと語られています。まずは施策を1つだけ実行しても効果は低いことだけは実証できました…
では、次回以降の記事で残り2つの施策を読み進めて行きたいと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?