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「伊勢物語絵巻」巻第二を見ながら伊勢物語のお話をする

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「伊勢物語絵巻」巻第二(一部)
絵:住吉如慶
文:愛宕道富ほか
江戸時代(東京国立博物館所蔵)

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1.『伊勢物語』は〇〇〇〇の恋愛短編小説集

『伊勢物語』一応、学校で習っているはずです。学校で学ぶのはなんでしょう。。。

「昔男ありけり」で始まる日本最古の歌物語。

といったところでしょうか。
なんか、つまんなそうですね!

まず、「昔男」のモデルは在原業平と言われています。
それは教科書に載ってたかも。

本文には全く書いてないけど、みんな在原業平(別名:在五中将)と思ってる、という共通認識があったことは確かです。(しかし、「昔男」と書いてあっても全然別人の時もあるんですが、楽しむのに細かいことはあんまり気にしないでいいと思います。いちおう、在原業平じゃない「昔男」もいるんんだなーと片隅に置いておいてくださいね!)

というのも、『伊勢物語』が最初に文献として登場したのは、『源氏物語』の中でした。

今に例えると、超人気ドラマの中で隠喩的に小道具に使われた少し前の大人気恋愛少女マンガのようなもの。と思えばだいたいオッケーです。

在原業平という人は、天皇家の血筋を持つ高貴な生まれですが、政変で臣下に下り、大して出世もせずにただの風流人として過ごしました。(モテモテでお付き合いした女性は3000人いたとかいないとか)

人々は「昔男」の話を読みながら、モテモテで歌が上手く、(っていうか、そもそもほとんど業平の歌使ってるし)チャラい男の話しに、ヒトが生きる意味や、はかなさ、人生の悲劇を見ていたのです。

だからこそ、こんなに受け入れられたのですね。

そんな、モテモテチャラ男の恋愛短編小説集である『伊勢物語』をしばらくご紹介していきます!

2,『伊勢物語』と香りの親和性

『伊勢物語』に出てくる場面、和歌はさまざまな形で他の文化に取り入れられました。
漆器や絵画、果ては文学…
その中にはもちろん香道もあります。

「組香」という「見立て」を使った香道のスタイルがあります。「組香」と呼ばれまています。

組香は文学や歴史、文化などを香りを使うことで追体験することができる、すぐれたスタイルの一つ。
この「見立て」と『伊勢物語』は非常に相性が良いのです。

なにしろ、話の内容は「昔男」と女性がああだこうだ、だから物語の構成が適度に単純。良し悪しじゃないですよ!
(複雑怪奇お仕事小説と恋愛少女小説の違いだと思ってください。)
そしてなんといっても和歌が良い(ドラマで主題歌とか挿入歌がイイと一緒)

ですから、『伊勢物語』のエピソードを使った香組はたくさんあるのですが、今日はひとつだけご紹介します。学校で習った方も多いでしょう。「東下り」です。
ではざっくり解説スタート!

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男は京にいられないので東国に旅に出ました。
なんで京にいられないかは諸説ありますが、高貴な女性(具体的には天皇の妻のひとり)と恋に落ちちゃって、まあいづらいよね!説もあれば、出世もままならず、自分探しの旅に出た!説もあります。
当時、東国に旅に出るといえば、もう大変。かなり未開の地に行く!!っていう感じですよ…。
そんなこんなで三河まで来たら、川がたくさん枝分かれしている所に出ました。枝分かれしているそれぞれに、八本の橋がかかっていました。水辺にはかきつばたが群生していました。
かなりの景勝地です。

そこで同行していた友人が言いました。
「この「かきつばた」をつかって和歌作ってよ」

これがその即興和歌。

「からころも
着つつ慣れにし
つましあれば
はるばるきぬる
旅をしぞ思ふ」

なーんと、575777の頭を「かきつばた」にして、京に残した愛する妻をしみじみ思ってわびしさを伝える和歌を作ったのでした。

みんな号泣して乾飯がふやけちゃったぞ!

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このお話から、即興和歌を作った、という点に注目して練られた香組が「当座香」です。

「かきつばた」にあわせて5種類の香木用意しておいて混ぜませして焚きます。
すると、「かきつばた」は「たつかきば」とか「きばつかた」とかでランダムな順番で焚かれるはずです。

そして連中(参加してるお客さんのこと)は自分がこれだと思った順番で自作の和歌を読んで答えるのです。

スッゴい難しいけど、やってみると結構イイ歌出来たりします。
ぜひ和歌だけでもトライしてみてくださいね!



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