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Criminology(犯罪学)って何を勉強するの?

こんにちは!Emmaです。
私は現在トロント大学で、犯罪学とジェンダー学を学んでいます。
どちらも日本ではあまり聞き慣れない専攻だと思います。
今回の記事では、犯罪学専攻がどんなものなのか、書いていけたらいいなと思います。最後まで読んでくださるとうれしいです。


1.そもそも犯罪学って何?

犯罪学を専攻している、と言うとよく聞かれるのが犯罪心理を勉強しているのか、ということです。私が勉強しているのは犯罪学であり、犯罪心理学ではありません。犯罪心理学は、心理学の延長線上に位置する学問だと思いますが、犯罪学は犯罪学で単体の学問です。
トロント大学では正式なプログラム名が Criminology and Sociolegal Studies と言って、犯罪学と法社会学、つまり法と犯罪の関係性だけでなく、もっと全般的な法と社会の関係性を、犯罪もフォーカスに入れて勉強する学問です。このことから分かるように、犯罪学は社会学とのつながりもとても強い学問です。
ここまで読んでもよくわからないかもしれません(笑)。具体的に私が今学期に受けた授業の話をしながら説明していきたいと思います。

2.犯罪学の授業について

トロント大学が2年生から専攻が始まるという仕組みで、犯罪学の授業はその専攻に入らないと取れないため、私は今学期が犯罪学の授業を取るのが初めてでした。

今学期私が取った授業は
Introduction to Criminology (犯罪学入門)
Introduction to Sociolegal Studies (法社会学)
Criminal Law (刑法)
の3つです。

まず犯罪学入門の授業では、犯罪学という学問の概要、成り立ちについて歴史をさかのぼりながら勉強しました。基本的にはなんで人は犯罪者になるのか?という疑問を解決するために作られた様々なtheoryについて学ぶという授業で、犯罪学の基礎を理解するためのものでした。多くのtheoryが存在する中、結局なんで犯罪者になるのか、という質問に対しての答えは1つではなく、その人自身の性格や特徴に限らず育った環境や経済的位置、法の仕組みなど多くの社会的要因に影響されるということがこの授業のキーテーマだったと思います。

法社会学は、がっつり犯罪のことを勉強するのではなくどちらかというと社会学寄りの授業です。私たちは普段法律をそこまで意識して生活していませんが、いかに法律が私たちの生活に影響を与えているか、移民&難民問題、人種、先住民問題、ジェンダー、などとトピックを通して、学びました。

一番面白かった授業は、刑法の授業です。まず、インストラクターが現役の弁護士さんということで、実際に働いてきた経験ももとに話してくれるので、トピック自体は明るいものではないですが、生徒が一番生き生きしていた授業だったと思います。(トロント大学はこういった、様々なバックグランドを持つインストラクターや教授が多いことも魅力です!)。

この授業ではカナダの刑法の成り立ちから学び、そして犯罪はActus reus (犯罪行為)と Mens rea (犯罪意思)で構成されているということをキーテーマとして授業が進んでいきました。カナダではfirst-degree murder, second degree murder, manslaughterという3つの段階の殺人罪があり、それぞれの違いは、mens rea (犯罪意思)の違いによって左右されます。例えば、意図的に人を殺したときと、事故で人を死なせてしまった場合、後者のほうが罪が軽くなるのは、この意思の違いにあります。他には、正当防衛、精神疾患で無罪になる場合についても学びました。基本的には過去に実際にあったケースを通して、いかに法律が変わってきたか、また変わらずに残ってきたか、について理解を深めました。

この授業のディスカッションや課題でメインでやってきたのはfact patternといって、ケースシナリオが与えられて、そのシナリオの登場人物が罪を犯したか、もし犯したなら何の罪で有罪なのか、その理由と証拠は何なのか、正当防衛や精神疾患を理由に無罪になるなら、どうやって証明できるのか、などを説明するものです。12月の期末試験では3時間の試験があり(3つの授業とも3時間の試験でした、、(笑))、ショートアンサー何問か以外にこのfact patternがありました。シナリオだけで6ページぐらいあり、登場人物も5人ぐらいいたので、3時間でも足りないぐらいの試験内容でした。

3.結局犯罪学とは何なのか

ここまで読んでくださった方でも、まだ犯罪学が何するのかはっきりしないかもしれません。私も今学期から専攻が始まったのもあり、これから新しいこともたくさん学ぶと思うので、学年が上がるにつれて自分も犯罪学という学問への理解が深まると思います。

現時点で思うのは、犯罪学は法律(刑法に限らず)がどのように発展してきたか、どのように使われているかを教えてくれる学問で、法律は歴史がはっきりと反映されているものなので、その国の歴史を教えてくれるものでもあるということを学べる学問でもあります。法律だけでなく、policing (警察関係)やそのシステムについても学べるので、criminal justice system (刑事司法制度)を広く批判的にみる学問になっていると思います。

また刑法の授業の説明からもわかると思いますが、論理的に考える力がものすごく求められる学問だと思います。これまでにない頭の使い方をしている感覚が自分でもあって、難しいと思う瞬間も多くありますが、同時に論理的思考力がすごく鍛えられていると思います。

要約すると、犯罪学は犯罪のことや犯罪者の心理を理解するものではなく、もちろんそれらも一部に含まれますが、もっと全般的な法の成り立ちやその使われ方を学べる学問だと思います。法律は中立性があってこそ法律というイメージが強いですが、法律を作ってきたのも変えていくのも人間で、中立性とはまだまだほど遠いなと思わされることも多い学問ではあります。特にカナダで勉強しているからこそ、ジェンダーや人種の問題に触れながら学ぶことで、法律とその適用のされ方は問題点が多いことも多く学びます。だからこそ学びがいがあって面白い学問だと私は感じています!

犯罪学を学んだあとどうするのか、と聞かれることも多くあります。多くの学生はロースクールへの進学に興味を持っていて、弁護士などの道を目指す人が多いようですが、論理的思考力が鍛えられたり、法への理解が深まったと、司法関係の仕事だけではなく、考え方の面で将来に物凄く生きる学問でもあると思います。

まとめ

今回も長くなりましたが、犯罪学について知ってもらいたく、自分の知識の範囲内で説明してみました。日本の、特に大学レベルではほとんど開講されていない授業だと思います。この記事をきっかけに興味を持ってもらえると嬉しいです!


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