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サステナビリティの実験地ーコペンハーゲンで働く環境にやさしい建築家に学ぶ

私が去年初めて訪れたデンマークにて、日本でも有名な建築家BIGが設計した廃棄物発電所(Amager Bakke)から見える景観が大好きでした。丘の上からスキーができたり、海に浮かぶ洋上風力発電の景色は次世代感があり、サステナビリティ(持続可能性)の考え方が進んでいるなあと感じました。

サステナビリティは、深刻な気候変動から脱炭素を志向するグローバルな動きで、日本でも2050年のカーボンニュートラルに向けた様々な取り組みが始まっています。また、「社会によい」というミッションもありながら、近年では「お金が流れる」という意味で、投資家や起業家の動きも活発です。

この30年で日本経済の国際的なプレゼンスが低下していることが指摘されていますが、「製造業」から「IT」への大きなシフトのなかでスタートアップ創出などの観点から日本は出遅れたことが原因とも言われています。

次の30年で、日本はどう国際的な経済力を取り戻していくのか?という観点から、サステナビリティや気候変動テックと言われる分野がまさに注目されています。特に、伝統的に素材などの技術分野や製造分野に強みを持つ日本が力を発揮できる領域とも考えられています(参考:なぜ今Climate Techなのか?産業構造の激変とスタートアップ)。

今回は、そんなサステナビリティの考え方やスタートアップの先進地である北欧デンマークの首都コペンハーゲンで、建築・環境設備エンジニアとして活躍されている蒔田さんにお話を聞かせてもらいました。

蒔田さんは、環境エンジニアとしてのお仕事の話や、幸せな働き方についてなど、様々なメディアから紹介されています▽

今回は蒔田さんのご専門であるサステナブルビジネスの領域(Henrik Innovationというグリーンビジネスコンサルティングの会社で働かれています)について、デンマーク発の事例やご自身の取り組みについてお話を伺いましたのでシェアします。

蒔田さんが環境・サステナブルに興味を持った理由

蒔田さんが学生時代、日本ではまだ「リノベーション」という言葉が一般的ではありませんでしたが、もともと古い建物が好きだったため、イギリスの街並みを見て、ここで建築や環境について学びたいと思ったそうです。イギリスで修士課程を取得して、その後、2011年の東日本大震災をきっかけに、技術者としてエネルギーに興味を持ち、オーストラリアのオペラハウスなどの空調を手掛けた会社で半年ほど働き、紹介されて今のHenrik Innovationで働くことになったそうです。

デンマーク発のサステナブル最先端事例

1つ目は「ひとの睡眠や気持ちをよくするスマートな照明」のスタートアップを紹介してもらいました。建築設備(照明)x ウェルビーイング x ITを組み合わせた面白いサービスを展開しています。

「光」は精神衛生、エネルギーレベル、睡眠に影響を与える主要な要因の1つであることが科学的研究から分かってきており、このプロダクトは、個人の年齢、性別、健康状態に基づいて、光の強さや色温度を24時間周期で自動的に調整することができるようです。

2つ目は「Rebuild Ukraine」というウクライナの戦争で壊された街や建物を早急に復旧したり、再生する手法についてのカンファレンスで紹介されたものです。

このカンファレンスの中で、経済的に優れ、プレハブのように早く、多くの家を供給でき、さらに、自然エネルギーなどを活用できる持続可能性も備えた家を提案されたようです▽

戦争が起点となってイノベーションが創出されるケースはこれまでも多くあったと思いますが、経済性・時間性・持続可能性・実現可能性といった複数のポイントを同時に兼ね備えた新しいイノベーションが生まれてくる可能性を感じました。

蒔田さんご自身の取り組み

1つは、全世界の建築業界でCO2を大量に発生させてしまっている鉄やコンクリートといった素材で技術革新を起こせないか、取り組んでる事例です。

自然からとれる素材(例えば、海藻など)を用いてレンガを作ろうという取り組みがあるそうです。詳しくは言えないとのことでしたが、大抵の建物はコンクリート(私はコンクリート研究室出身ですが)でできており、多くのCO2を排出するため、自然由来にアップデートしていきたいという思いがあるそうです。

2つめは、アイスランドでの循環型別荘の取り組みを教えてもらいました。

非常に厳しい自然環境のアイスランドにて、雨をうまく濾過したり、温めてばい菌を殺したり、シャワーを使った際には余熱を利用しコンパストトイレを温めたり、そして最後に残った純粋な水を地域に返す。水、熱、風などの自然エネルギーを最大限に循環する別荘の構想だそうです。

サステナブルの観点だけでなく、とてもシンプルでありながら高級感のあるデザインで、フィンランドで森の家に住んでた私は自分で欲しいなと思いながら聞いていました。

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非常に厳しく長い冬の北欧では、サステナブルという言葉が自分毎化されている人が多く、日々の生活行動から企業の取り組み、起業するテーマまで、サステナブルというテーマは欠かせないものになっているようです。

日本でもこの分野は、ITの次に来る大きなマーケットの波として、また日本の持つ強みである素材などの要素技術が活用できる機会として、非常に注目されています。

北海道ほどの小さな北欧の国々では、今日紹介したように先進的で実験的な取り組みが進んでいるようです。一方で、小さな取り組みで終わらせないために、欧州全域や米国など様々な企業や投資家などと共創していくモデルがあると言われ、そこに日本が入ってくると面白いのではないかと感じます。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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