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世界のウェルビーイングサービス最前線

オーストラリアに駐在中、週休1日、残業120時間、上司は元軍人のオーストラリア人という環境で働いた経験から、「真の豊かさとは?」というテーマを考えるようになり、幸福度ランキング世界トップの北欧フィンランドに留学することを決めました。

ここ数年、ウェルビーングに関する新規事業に携わっておりましたが、研究フェーズに入り直し、事業開発としては一旦ストップしていることもあり、この機会に落ち着いて、世界のウェルビーイングサービスのトレンドであったり、事例について調べたりしています。

日本でウェルビーイングと聞くと、どこか眉唾物といいますか、人それぞれの幸せのあり方や感じ方がありますし、介入してはいけない禁止領域みたいなイメージがあるのではないかと思っています。

確かに、失恋中で悩んでるとか、子育てと仕事で忙し過ぎるとか、家が買えないとか、会社が嫌いすぎるとか、、、もう本当に色んなバリエーションのウェルビーイング (ざっくりと幸せ)の要素があるのだと思います。

幸せは究極の人それぞれ、という前提に立ちながらも、身体の健康や、経済的な余裕、人間関係の良さとか、色んな側面から、ウェルビーイングを支援していく、そんなサービスが増えています。

瞑想分野初のユニコーン(時価総額10億ドル以上)Calm

スタートアップだけではなく、AppleやNikeなどの海外大手企業も今後10年の成長産業として、ウェルビーイング分野を位置付けていると言われます。

"Just Do It"から"Just Feel It"へ

AppleもApple Watchを起点として、様々なヘルスケアに関するサービスを、開発しています。

例えば、服薬管理アプリ(薬の飲み忘れを防ぐ)、睡眠管理アプリ、さらには、健康保険を提供するなど、ヘルスケアデータを入口に様々な事業展開・計画しており、次の10年でアップルはヘルスケア企業になるだろうという見立てまであります。

日本でも2022年にメンタルヘルス テクノロジーズがメンタル分野初の上場をするなど、単なる絵空事ではなく、ウェルビーイングがかつてないほどに、個人、組織、事業の面からも注目を集めています。

今日はウェルビーイングに関する動向として、海外の先端的なサービスであったり、そのトレンドについて調べたことをご紹介したいと思います。

基本的なソースは以下のレポートを参照しています▽
50社以上のサービスを分析してあり、非常に読み応えがあります。

①多面的なウェルビーイング

初めにウェルビーイングは多様だというお話を書いたように、身体の健康、仲間との繋がり、家族へのケア、マインドフルネス 、働きがいなど、統合的にウェルビーイングを向上するサービスが1つのプラットフォームにて提供するサービスが増えています。

いくつか面白いと思ったスタートアップの事例をご紹介します。

Limeade

2006年に設立され、企業向けに従業員体験を向上するソフトウェアを提供しており、フィジカル、感情、お金、職場の繋がりなどをサポートします。

特徴的なのは、テレワークが定着する企業が増えるなかで、従業員の声をよく聞いて、ひとりひとりのニーズに応じたサービスを提案することです。

・子育てをしながら働く人向けの小さなオンライン集会を開催できたり
・毎週水曜日の朝にウェルビーイング会話といって、共通の趣味などを持つ人たちのネットワークでお互いをサポートする仕組みを提供
・ここから出てきた従業員のニーズに応じたサポートプログラムを提供

LifeDojo

行動変容を促す理論を活用して、従業員や大学生が自分の理想とする習慣を身に着けることを支援するソフトウェアです。

例えば、健康的な食生活、運動をする習慣、ストレスをコントロールする考え方、禁煙、睡眠の質、お金の管理などに関して、好ましくない習慣を持つ人がその習慣を断ち、新しい習慣を身につけるための支援をしてくれます。

オンライン上で使用するサービスですが、24時間、行動科学についての資格を保有しているコーチとコミュニケーションをすることができます。基本的なステップとしては、自分の理想と現在地を知ること、モチベーションを高めること、よくしたい習慣を選ぶこと、継続的にその習慣を訓練するという4つのステップを、コーチと一緒に実践していくプログラムです。

sonicboom

2007年に設立され、企業が提供するウェルネスプログラムに従業員があまりにも参加しないことにイライラしたことから、創業したと言われています。

その課題意識の通り、人と繋がりながら楽しくウェルネスプログラムを実践できることを特徴としています。例えば、栄養、お金の管理、ストレスマネジメント、睡眠、精神的幸福など、様々なテーマの中から自分の好きなものを選び、同じ選択をした仲間たちと、協力しながら、時には競いながら、そのテーマに関する良い習慣を身につけていきます。

②従業員体験こそが競争力の源泉

ウェルビーイング に関するサービスを導入する企業にとって、1番の目的は企業の生産性が上がったり、採用競争力が高まったりと、企業価値を向上させることです。

特に、アメリカなどの転職が当たり前の国では、従業員がその会社に愛着を持ってくれたり、長く続けたいと思う心地よく、働きがいのある職場環境を提供することが、重要な課題となっています。

さらに、従業員が心地よく体験をしているからこそ、お客様に対しても良い体験を提供することができるといったEmployee Experience(従業員体験)を重視する考え方が高まってきています。

実際のスタートアップ事例をいくつかご紹介します。

Imperative

全ての人が仕事と生活において充実するようエンパワーするというミッションを掲げて、2019年に設立されてました。

ピア・コーチング(相互にコーチングを提供する)プラットフォームにより従業員同士でのより有意義な会話をファシリテーションするサービスを提供しています。

例えば、お互いのモチベーションであったり、成長を促すような問いかけであったり、気づき、助言をお互いに与えやすいようガイドが提供されます。また、上司と部下の1:1のような利害関係がある人ではなく、よりフラットに意見し合えるペアを設定して、コーチングを促すことで、マネージャーやHRなどの負担を減らすことにもつながっています(現在25社程度の導入実績があります)。

BetterUp

BetterUpは、組織変革を促すため、行動科学を用いて従業員の生産性やレジリエンス(精神的回復力)、エンゲージメントなどを高めるサービスを提供しています。

「特定する」、「維持する」、「エンゲージする」の3つのプロセスがありBetterUpに所属するコーチたちは、組織に大きな影響をもたらす人を特定して、その人たちに対してコーチングを提供することにより、組織レベルへの変革を促します。

コーチングの流れとしては、自己アセスメントにより、自己理解を促して、その上で、自分に合うコーチを紹介して、そのコーチとのセッションを定期的に実施していく基本的な形をとっています。

③リーダーシップ・HRの不可欠な能力

2020年以降、コロナにおけるマネジメントやコミュニケーションのあり方は大きな問題として取り上げられています。組織に属しながらも孤独を感じる従業員であったり、対面での会話が減り、社会的な幸福感を感じにくいことであったり。

こうした「関係性」に着目したウェルビーイング サービスを提供する企業をご紹介します。

Cultivate

Cultivateは2017年に創業され、特にテキスト(メールやチャット、ワード等)によるコミュニケーションを活用して、関係性について分析をするサービスを提供しています。

特に、マネージャーに対して、同僚や部下とのテキストベースでのコミュニケーションを分析して、関係性についての分析結果や提案を表示することによって、より職場での関係性を良好にするヒントを提供します。

このように、テキストという実際の「行動」をベースにして、分析をして、必要であれば、コーチングやそのほかのツールを提供するため、事実ベースで施策を打てるという点で、秀でていると言われています。

④従業員の資産形成もサポート

次に、従業員のお金にまつわる幸福をサポートする領域です。

日本でも資産形成について、DC(企業型確定拠出年金)などが多くの企業で採用されたり、NISAの活用の普及等、会社員の資産形成が一般的になりつつあります。

さらに、年金制度への不安から資産形成に関する課題は広がっていると思います。こうしたFinancial Well-Being(経済的幸福)と言われる領域で、企業向けにサービスを提供しているスタートアップをご紹介します。

BrightPlan

2016年に設立され、創業者がパートナーの病気と自身の1年間の看護休暇を経験して、経済的なウェルネスをサポートすることを目的としています。

教育、ロードマップ、貯蓄、資産管理という4つの柱に基づいて、サービスが設計されています。定期的に開催される金融リテラシー教育であったり、オンライン上または対面で受けられる資産形成アドバイザリーにより、自身の試算計画を立てるなど、実践的な内容になっています。

また、若手、結婚後、子供を持ってから、引退前など、それぞれのライフステージに応じて、資産形成のプランニングをカスタマイズするなど、より個人に寄り添う形でのサービスとなっています。

BlueBoard

最後にご紹介するのは、GALLUP社(ストレングス・ファインダーなどを提供するアメリカの調査会社)からウェルビーイング を非常に効率よく高めるサービスとして評価されているBlueBoardです。

BlueBoardは、経済的なウェルビーイング領域から少し趣が異なりますが、従業員向けの福利厚生として、あなただけの体験を提供するサービスです。Experiential Reward(体験型福利厚生)というジャンルを形成しています。

例えば、DIYで家庭の庭をきれいにしたり、サーフィングを習得したり、サメと一緒に泳いだり、世界に1つしかないその従業員のためだけの体験を提供しています。

ある会社では、この福利厚生により体験した従業員が、その思い出の写真をシェアすることで社内の話のネタが膨らんだり、会社に対して愛着を抱いたり、あるいは、情熱を取り戻したり、コンフォートゾーンから抜ける練習になったり、といったポジティブな意見がある様です。

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今日は4つのジャンルについて、最先端のウェルビーイングサービスを提供するスタートアップをご紹介しました。

あえて、フィットネスなどの身体的な健康、マインドフルネスなどの精神的な健康の領域は入れませんでした。その理由は、どうやら、アメリカを中心とするウェルビーイング スタートアップの先進地では、これらの「健康」という領域が当たり前のベースとしてありながら、今日ご紹介したような付加価値となるウェルビーイング サービスを提供しているためです。

仕事の中からより大きな目的感を発見する、仲間たちとのより良い関係性を構築する、従業員の家族をケアする、ライフステージに応じた資産形成のサポートをする、こうしたより多様化するウェルビーイングを支えるサービスが発展してきています。

日本にも徐々に単なる健康から、経営の武器としてのウェルビーイングの波がきているのかもしれません。

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