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ドキンちゃんに学ぶ

先日、娘がドキンちゃんの小さなピンバッジをくれた。
可愛くて毎日セーターの襟につけている。
数年前に日本で買ってしまいこんであったものを
思い出して引っ張り出したのだと。
「オンマがドキンちゃんの歌をよく歌ってるから」と。


主人公アンパンマンに対する悪役がバイキンマン。ドキンちゃんはバイキンマンと同じ星からきた女の子。彼女に関しては「私はドキンちゃん」の歌詞が分かりやすいので一部紹介。

私はドキンちゃん
なるべく楽しく暮らしたい
お金はたくさんあるのがいい
おいしいものも食べたいし
遊んで毎日暮らしたい
そんな私よ ドキンドキンわがままなのよ
(歌詞1番の一部)



ドキンちゃんはバイキンマンの城に居候してるが
のっけから態度大きく図々しく押し掛けて「お世話になってます感」ゼロ。
アンパンマンの仲間しょくぱんまんに恋している事も隠さない。バイキンマンへの罪悪感はゼロ。善悪を超えて「私は〇〇したい!」に忠実で自由奔放。時々バイキンマンに気まぐれでスイーツ作ってあげる位の事はする。どこまでも自分のご機嫌次第だけど。


二番の歌詞も三番の歌詞もなかなかで。
〇みじめな暮らしは大嫌い
〇朝から晩までお洒落して世界の誰より美しいと言われたい
〇生まれつき美人だし頭の回転早いし、世界の終わりにも私だけは生き残る

すごくない?




作者のやなせたかしさんは1997年の御著書「アンパンマン伝説」の中で

ドキンちゃんは何故か僕の母親の面影があり、性格は妻に似ている。
と書いてらっしゃる。

最初はばいきんまんの助太刀をさせるつもりだったが、書いているうちに、作者の手を離れドキンちゃんはどんどん強くなり ばいきんまんはあごで使われる」ようになってしまった。 (WIKIより)


なるほど女性の強さや頼もしさや動じなさが表現されてるらしい。「とてもかなわない」という声が聞こえてきそう。

かつドキンちゃんのモデルは「風と共に去りぬ」のスカーレットオハラだそう。

ドキンちゃんは欲しいものをはっきりと口にするものの、手に入れられなくて結構悔しがる、というのもスカーレットオハラとの共通点だ。


だけどドキンちゃんの行動の発端は、いつも胸のときめき。
恋する乙女なのだ。
名前は心臓の鼓動の擬態音「ドキドキ」に由来する。
ドキンちゃんはルパンにおける峰不二子かな。
敵?味方?でも魅力的で目が離せない。




で、なんで「私はドキンちゃん」を毎日歌ってるかと言うと
自分は韓国人に比べて実に「お願い下手」だと思うからだ。
今からでももっと上手になりたい。




正直に「●●が欲しい」と願いを放つドキンちゃんでさえ100%はゲットできないのだから、欲しいものが自分でも分からないと、もっと手に入らなくても仕方ないと思える。
とっさに「何が欲しい?」と聞かれたらすぐ「〇〇が!」と言える自分でいたい。流れ星を前にゆっくりお願い考えてたら「あれ?星どこ行った?」笑



私は自分の夫が「おねだりの先生」「お願いの師匠」に見える。
彼は今まで色んなお願いを叶えてきた。夫のお願い伝説が書けるわ。


例えば、私は元々ソウルのど真ん中に住んでいた。
実に住みやすく友達も作りやすく日本語の本がある本屋あり、仕事も探しやすく最高の都会だった。しかし夫が「ソウル嫌い~ここに住んでたら自分が死んじゃう~!田舎で住みたい~」と、なんとソウルに住み始めてすぐ言った。「三年仕事したら田舎に引っ越す!」と夫は宣言し三年後それを実行した。



私はソウルを離れたくなかったし、田舎移住には私の実家の家族も韓国の親戚も反対だった。「1人で田舎に住んで」「あなたが先に行って田舎で基盤をつくったら家族を呼びよせるとか?」色々言ったが
「離れて暮らすなんて絶対に嫌!妻子供と毎日一緒に居たい!家族だもん!」という夫の意思が固かった。それに比べて私の方は「ソウルを離れたら死ぬ」とまでは思えず「ま、自分はどこだって生きていけるしな」と引きずられて田舎移住して15年近く経った。




今では田舎の良さも味わっており、田舎でも都会でも生きていける事は分かっているが、結局自分に分かったのは、固く「〇〇したい!」という意思のある人間の前には「どっちでもいい」程度の人間の気持ちはあっさり流されてしまうという事だ。


新しい事を学び挑戦することは面白いので、この韓国の15年の田舎生活は大変ながらも楽しくやりがいがあった。後悔もない。田舎で子供を教育したゆえに良かった事もあった。仕事でも田舎ならではの良い事がいくつもあった。最近ではソウルに行きたいと思ったらさっと遊びに行っている。



しかし今からも「なんでもいい」「どこでもいい」と言えるかと言うと
なんでもいいわけない!どこでもいいわけがない!「どこだって生きていける」から「どこに住んでもいい」というわけではない!これが骨身に沁みて分かった。骨身がまだ削られてないのが幸いだ。今まで頑張ったから、これからは自分の気持ちや希望をもっと前面に出していきたいなと思う。



「私の願いばっかり後回しにされる!」とか言っても、「言ってなかったじゃないか」「聞こえなかったよ」とか言われそう。声のデカい主張の強い人達の中で自分の願いを叶えていくにはこっちも絶えず自主練だ!ということで、ドキンちゃんの歌を頭の中で掛けっぱなしにしている。
ちなみに元々韓国人は主張が強いが、現代の若い韓国人は核家族で育ってるせいかそうでもない。うちの家族はかなり「昔型」だと思う。



私の願いも満たし夫や子供たちを犠牲にしない。
ちゃんと折り合いのつく形で、皆満足できるような
そんな到達点を願っている。結局みんな幸せなのがいい。誰かに我慢させたりせずに。あちらを立てればこちらは立たずという考えもあるけれど、あまりせせこましく考えず自由に憧れを放って、かつ動いていければ良いと思う。私の頭では考えつかない方法がきっとあるはずだから。



2024年のNHk朝ドラの主人公はアンパンマン作者のやなせたかしさんだから、作品にもまた注目が集まる事だろう。アンパンマンが生まれた1980年代と今では「ドキンちゃん」に対する評価がかなり違うはずだ。昔は「ドキンちゃんが理想」と言える人は少数派だったろう。スカーレットも然り。ちなみに絵本に初出した元来のドキンちゃんは、アニメで見る3頭身ではなかった。高身長でお姉さんなドキンちゃんで、印象がかなり違う。あの美ボディでこの性格だったらただの悪役だったのかな。




ドキンちゃんは「わがまま娘」というより「赤ちゃん」みたいだなと思う。バイキンマンの城に押し掛けたドキンちゃんは、バイキンマンに「面倒を見なさい!」「おなかが空いた!」と最初から命令口調。
同郷というだけで住まわせたりご飯をあげる義理は別にないはずなのだけど
終始「私に良くするのが当然!」を崩さないドキンちゃんに巻き込まれていく。あれこれ頭で練ってない素直な願いにバイキンマンはしょうがないと叶えてあげるため動くことが多い。ドキンちゃんは「あれやって~これやって~」と男性に行動する機会を与え続けるアゲまんキャラとも言える。




赤ちゃんてこんな感じだろうな~と思える。罪悪感もなく、恩返しをとか思わない。この軽い感じを思い出したい。
自分が赤ちゃんだった頃は自分もきっとそうだった。
素直に愛を受けてただ笑ってた。そんな時期があったはず。



赤ちゃんてそんなに善良な存在ではない。
赤ちゃんが寝ないとママは寝不足になるし、
ママの食事はいつも後回しだし、赤ちゃんて結構ひどい。
だけど人は「赤ちゃんだからね~」で怒りもしない。赤ちゃんの願いは常に優先される。赤ちゃんて結構凶悪な存在だと思うのだけど笑



そういえば!うちの夫「俺可愛いだろう?」と私によく聞く。
「可愛くないわ~!!!こんなおっさんのどこが!図々しい~」
「そんなわけはない、絶対可愛いはずだ。自分は小さい時から可愛い可愛いと近所のアジュンマ達の間でも評判で、色白で、皆が抱かせてくれと」
「全部嘘や!!真に受けんな記憶を捏造すんな!」
夫、ドキンちゃんみたい~!!凶悪笑
という事はドキンちゃんの一番身近なお手本は夫か~!
嫌だけどきっとそう!
たしかに夫は可愛く見える時がある。そんなはずないのに!
「自分は可愛い」を自分で決めてるからだろうな。



しかしお宅の夫婦なんか似てるわよね、、とあちこちで言われ複雑な思いだ。夫は「お前はしぶといし、声も大きくてしつこいし~」だって。夫婦揃ってドキンちゃん的要素があるのかもしれない。

今日も歌おう、私はドキンちゃん~!
ありがとうございました。


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