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愛しのヴィンセント・ファン・ゴッホ殿

グーテンターク、こんにちは。

今日はちょっと毛色の違うお話です。

突然ですが、私は美術史講師という一面も持っています。
これについては話せば長いのですが、基本的にふと頭に降りてくる突拍子もない「面白そうだからこれやってみたい」をかなりの高確率で遂行する、という習性からそうなったものの一つです。

4年ほど前に、フランクフルト駐在員さんの奥様であるお友達に
「フランクフルトってけっこう良い企画展が来るんだけど、美術館に絵を見に行っても、いまいちどこをどう見たら良いのか解らないのよね。解説もドイツ語と英語しかないし。恵美子ちゃん、専門でしょう?良かったら解説してくれないかな。人集めて、みんなに少しずつお金出してもらえるようにするからさ。」
と持ちかけて頂いたのが始まりでした。

確かに美術は専門だし、ドイツの美大で美術史は一通りやりました。
しかし自分の声や話し方がコンプレックスでもあったので、はじめは躊躇し考える事に。
それでも思い切ってやってみたら、これが意外に超楽しかったのです。気がつけば喋りすぎて時間あっという間、という感じでした。

漫画やアニメ大好きな上、キャラクターデザイナーとしてのイラストの仕事をしているので、芸術の巨匠や作家達の人生や作品をもとにキャラクター分析し、面白おかしく紹介していく、という切り口でやっています。
昨年秋から、オンラインでの西洋美術史ダイジェスト講座も行なっています。今年も企画中ですので、ご興味のある方はぜひ!

さて、2019年秋から約5ヶ月間、地元フランクフルトで画家フィンセント・ファン・ゴッホの企画展がありました。
それに伴い、2020年1月と2月に日本語による美術史講座、画家ファン・ゴッホの勉強会を開催しました。
https://www.staedelmuseum.de/en/vangogh

ファン・ゴッホは私がもっとも好きな画家の一人で、息子にも同じ名前をつけたくらいなので、そりゃあもう只ならぬ気合いが入りました。
受講者の皆さんが彼の作品群の理解を深められるよう、彼の生涯と画業、作品群と、当時のヨーロッパおよびオランダの文化的背景などについて解説。
手前味噌になりますが「面白い上にわかりやすい」「絵の見方がだいぶ変わり、奥深いものになりました」と非常にご好評いただき、ご希望により2回の再開講をするほどでした。
めっちゃ感謝💖!私もとても楽しかったですー!!

私がファン・ゴッホの絵画で大好きなところは、パリ時代後半以降のキラキラとした鮮やかな色彩、彫刻作品とも言えるような美しく立体的な絵肌(マチエール)とツヤ、そして何といっても画面全体からヒシヒシと伝わってくる、彼の「最高の絵画作品を作る」という意志や情念のような熱いエネルギーです。  
そこには「自分の人生の中の、何ものに代えてでもそれを成し遂げてみせる!」という彼の覚悟が感じられます。

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それこそが、100年以上の時を超えた今なお、ファン・ゴッホ作品が人々を魅了してやまない所以だと考えています。
今回のフランクフルト・シュテーデル美術館においての展示も、会期の最終週末には美術館の裏手にまで長蛇の列ができるほどでした。

私も会期中、何度も足を運びました。一回着物を着て行った時もあります。
ファン・ゴッホの『La Mousme』を意識したコーデで、冬だったので足元はブーツ。
世界共通で美術館は中年以上の来館者が多いのですが、この日はたくさんのおばさま方に声をかけて頂いたり、に褒めて頂けて嬉しかったです❣️
未だ見ぬ極東の島国日本に、自分の理想郷を見出そうとしたファン・ゴッホ。
あなたの思いは、多くの日本人にこうしてきちんと届いていますよ、という思いで彼の自画像を見つめていました。

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複雑な家庭環境と時代に育ち、人間的にはかなり問題のある人ではありましたが😅、困難に遭いつつも自分の中の可能性を信じて諦めずチャレンジし続けた、という精神は本当に凄まじいものがあります。
その作品に込められたエネルギーは、印刷物や電子画面ではやはりどうしても伝わりきりませんので、どうかぜひ実物を見て頂きたいなあと思います。

ファン・ゴッホの絵画には、「自分を生きる覚悟」が込められている。

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