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【創作小説】愛するほどに美しく

「お〜りゃ〜!おめー!覚悟しろー!」
「なんだー!?女のくせに〜!なまいきだ〜!!」
いつもの如く、教室中に罵声がとぶ。
いつもの様に、「彼」と「彼女」だ。クラスの皆は呆れ顔。

私たち、H学園高等科は、幼稚園部から大学までの一貫校だが、そんなに偏差値は高くない。
行き着く大学は中堅校だが、とにかくミッション校で、「ずっと一緒」に育つので、「皆、仲良く、風紀も良いだろう」と、高学歴や受験に疲弊して過ごしたお父さんお母さんも、そこに子供を入れたがる。近所でも、風紀が良いので評判の学園だ。

そのH学園高等科2年B組の名物。「彼」=光琉(ひかる)と、「彼女」=まりあ。いつも、クラスの中で喧嘩ばかりしてる。

一足早く、大人びたクラスメイトは(あいつら何時まで子供なんだ)と、呆れ顔。学年もクラス5つで、幼稚園の頃からあまり変わらないので、殆ど小さい頃から知ったメンバーだ。

「私」、河口莉子は、高校から受験してこの学園へ来た。クラスもずっと高等科は1年からこのクラスで、この喧騒をずっと見てる。「みな仲良く」してほしい私は、はらはら。

光琉と、まりあは、幼稚園部からずっと同じクラスだという。昔なにかあったのか?

「ねぇ、光琉くん、まりあちゃん、何でそんなにいつも喧嘩ばかりしてるの?いつもじゃん?」
私は、教室で小競り合いをしている光琉とまりあに思い切って聞いた。
「え?俺たち仲良いよ?」
(へ?)
「愛し合ってるもん」と、まりあも。
(は?)
光琉とまりあは、口々に声を合わせていった。なんでも、2人は、幼稚園部のころから付き合っていて、
「これは、夫婦喧嘩のようなもの」
なのだという。
こんなのもアリか?
私は、目が点になった。
あまりに長い付き合いで、「今から夫婦喧嘩をしているようなもん」だという。
クラス中の公認 "夫婦" (まだ、結婚してないけど)。
私も、思わず呆れたが。こんな二人もいいもんだな、と思い、
咄嗟のひとこと。


「……結婚式には是非呼んでね」。



トップ画像は、メイプル楓さんの
  「みんなのフォトギャラリー」より、
   いつもありがとうございます❤️

©2023.5.26.山田えみこ



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