映画『レジェンド アンド バタフライ』を観てきたよ
今月の始め、映画『レジェンド アンド バタフライ』を観た。
『レジェンド アンド バタフライ』と言えば、昨年の11月、岐阜市で開催された「ぎふ信長まつり」が記憶に新しい。
3年ぶりの開催となるこのまつりに、信長に扮したキムタクが急遽参加することとなり、岐阜県民は大いに盛り上がった。まつり当日には、全国から多くの人々が岐阜へ見物に訪れ、大フィーバーとなった。
あの熱狂から3ヶ月。
「さて、どんな映画なんだろう?」
観た人の話を聞くと「面白かったよ」「キムタクもだけど綾瀬はるかがすごくカッコよかった」という声が多い。
興味がそそられた私と夫は、2月のある日、お隣・富山県へと出かけた。
飛騨の山々を越えて、富山県に入る。
今、飛騨には映画館がないため、映画を観たい時は、こうして遠くまで車を飛ばさなくてはいけない。
下道を走って約1時間。富山平野に辿り着いた。
ここから、いつもなら映画館がある郊外の大型ショッピングセンターへ行くのだけど、今回は、富山市の中心部&繁華街にある映画館へ向かった。
市街地に入ると、コインパーキングに車を停めて、映画館まで少し歩いた。
今にも雨がこぼれそうなお天気。
念のために…と、夫が傘を持ってきてくれた。
お目当ての映画館は、アーケード商店街の一角にあった。
初めて訪れたこの場所は、こじんまりした小さな映画館だった。自販機でチケットを購入してから、待ち時間を利用して飲み物とポテトを買い込む。
少し待っていたら開場時間になり、私たちはシアター内に入った。
開演前に場内をぐるりと見回す。時代劇ということもあり、客層はご年配の方が多かった。
以下、ネタバレ注意
物語は、信長と濃姫の婚礼の儀から始まる。
信長の生涯を見てみると、彼が斎藤道三の娘・濃姫(帰蝶)と結婚したのは、数えで16歳くらいの頃である。
少年時代の信長を演じるキムタクが、「こういう感じの10代マイルドヤンキーいるよね〜」と思わせるほどの超自然体で、これを御年50歳のキムタクが違和感なく演じていることにビックリ。その凄さにまずは圧倒された。
そして、これに対抗する濃姫は、当時数えで15歳。信長より一つ年下である。
この綾瀬はるか演じる濃姫も、なかなかすごい御仁であった。
婚礼で信長と面した濃姫は、少女らしい素朴な雰囲気を醸し出しつつ、一方で、「蝮の道三」の娘らしい豪傑さを秘めている。美濃国を背負って嫁いできたという覚悟を持ち、武術に秀でていて気も強い。
ヤンチャで空っぽの信長を、自らの腕力と知力で屈服させて、圧倒的な強さを見せつけるのである。そんな誇り高い少女を、30代後半の綾瀬はるかがナチュラルに美しく演じているのである。私はここでも度肝を抜かれた。
そんな衝撃的な出会いから始まる夫婦の物語は、信長の成長物語であり、また、濃姫の愛の物語でもあった。
父の死後、家督を継いだとはいえ、信長はまだまだ精神的に幼く、未熟さを残していた。しかし、濃姫から影響を受け、また様々な経験を得て、強くたくましく成長していく。ふとした折に、濃姫から「海を渡って異国に行ってみたい」という夢を聞かされ、更には、父斎藤道三と抱いた「天下統一」の願望を聞き、妻の思いを自分自身の夢へと重ねていくのである。
映画には、合戦シーンが出てこないが、血なまぐさいシーンや手に汗握る闘いシーンが所々で登場する。
特に、濃姫の殺陣シーンは必見。弓矢や刀を巧みに扱い、馬に乗って疾走する綾瀬はるかのカッコよさに惚れ惚れする。
普通の女性では、信長の正妻の座は務まらなかったであろう…と思うほど、強くて個性的で魅力にあふれている濃姫。キムタク信長も、独特のカリスマ性を放っていて、どんどん凄みが増していくのだけど、そんな信長に引けを取らないほど、濃姫も潔くて強い。そして美しい。
互いに「尾張」と「美濃」で小競り合いを仕掛け、いつもすれ違ってばかりの二人の関係も、天下統一の夢に向かって二人で突き進んでいくに従い、その形を変えていく。
大うつけ時代に信長の下で一緒にヤンチャしていた家臣たちは、皆、織田勢の重鎮となり、信長を支え、その力は全国規模へと強大に広がっていくのである。
しかし、富と権力を手に入れれば入れるほど、大切なものが指の隙間からサラサラと零れ落ちていく。
強くたくましい男へと成長していく信長。濃姫と心を通わせるようになったが、ある時期から、信長から純真さや無邪気さが消えて、残忍な男の顔へと変貌していく。
やがて信長は自らを「第六天の魔王」を呼び、天下統一のために容赦なく人を殺める人間になっていった。かつての夢を叶えるために、自分に歯向かうものは全て殺すという修羅の道を突き進んでいた。
家臣も恐れを抱くほど殺戮に手を染めていく信長。そんな信長に心を痛め、もう共に生きていけないと覚悟を決めた濃姫は、信長に離縁を申し立てて、岐阜城を出ていくのだった。
その後から信長が亡くなるまでの顛末は、今まで散々ドラマ化され、映画にも描かれてるので、皆がよく知っているストーリーだけど、この映画では、歴史も人物像も今までとは違う描かれ方がされていて、とても新鮮だった。
あと、各シーンに出てくる建物や室内は、全国の国宝&国重文に指定されている神社仏閣や城だそうで、歴史的建造物ファンにはたまらないシーンが多い。
私がこの映画で心に残った場所は、京の都の街中のシーン。都の民たちがたくさん往来する賑やかな町のシーンだけど、沿道の紅葉が美しい石段の場面が、なんと!京都の神護寺で撮影されたものだと、映画を観た後で知り「おおー!」と思わず声が出た。
以前、参拝してその清廉さに心打たれた神護寺のあの長い石段を、京の都のあのシーンで使ったのか!…と、その斬新なアイディアに驚かされた。
こんな感動が味わえるのも、この映画の魅力だと思う。
岐阜城のセットも、岐阜歴史博物館で復元されたVRの信長公居館を見たことがある人なら、「えっ!あれを本当に作ったの!すごいー!」と驚くような出来栄えで、本当に感動ものだ。
脇を固める役者陣も良かった。福富平太郎貞家役の伊藤英明と、各務野役の中谷美紀。この二人の演技が、またすごくいい。濃姫の侍従として美濃国から付き添ってきたこの二人が、主の濃姫を御側付きで最後まで守り抜こうとする姿とその健気さ・実直さに心打たれた。
人間らしく描かれた信長と濃姫。
この二人の物語は、信長が、もう一つの夫婦の人生を夢で思い浮かべるシーンで幕を閉じる。
人生五十年…。
最後を「敦盛」の舞で〆るのではなく、違う形で一生を締めくくった信長。
新しい信長と濃姫、夫婦のかたちを描いた、心に残る映画だった。
映画を観た後、外をブラブラ歩いた。
ごはんを食べるには中途半端な時間だったので、おやつを食べることに…。
目についたこのお店に立ち寄ってみよう。
満席だったので、外で待つこと数十分。
ようやく順番が来て呼ばれたので、中に入る。
最後の回想シーンは、賛否両論いろいろあるみたいだけど、どうなんだろうね。
同じ戦国物でも、以前観た『関ケ原』よりは、うんといいよ。
夫婦の物語として観ると、なかなか奥深いものがあったね。
キムタクがカッコいいのは勿論だけど、綾瀬はるかのカッコよさにビックリした。
…なんてことを夫と語り合った。
この映画を観た直後は、確かにあの最後の回想シーンについて「あちゃー」と思ったけど、今こうして時間が経ってから振り返ると、あのシーンは不思議と深く印象に残っている。それも好印象で…。
夫婦の物語として紐解けば、あれは必要なシーンだったのだよ、きっと。
さて、どんな結末だったかは、是非、劇場で観てほしい。
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