大宮エリー
夢は楽しい夢であったからよかったんだけど、夢とは裏腹に、昨日の現実、仕事関係で、嫌味だなって思うことを言われてね、そのときは耐えたんだけど、人もいたし。大人気ないこと言うな、傷つくなと思ったけれど、言わなかった。わかって言ってるのかわからないで言っているのか。きっと強いひとならば、ばーん、と「それ、失礼じゃないですか?」って言えるんだろうけれど、私はあんまり言えないタイプ。あと、言わない。わざと言ってるのだろうから、それに対して言ってもね、、、。なんかその土俵におりたくない。
過去に『Oggi(小学館)』にて連載されていたものです。 実は、私、「スナックエリー」というお店のママを1年半ぐらいやっている。ほぼ毎週水曜日の夜22時から1時間だけ。お客さんと盛り上がると、2時間も3時間もオープンしていたりする。場所はどこかというと、WEBの中のお店なのだ。ユーストリームで生放送している配信番組のことで、30分に1回、全国のお客さんと乾杯することだけがルール。ただ酔っ払っていく様を見せるゆるい番組で、実際に有名人ゲストが飲みに来たりする。そんな「スナッ
過去に『Oggi(小学館)』にて連載されていたものです。 私はとあるホテルに向かっていた。色々トラブル続きで疲れきった私を、友人が心配して連れて行ってくれたのだ。 きらびやかなスパリゾートホテルに着くと、見たこともないセレブな時間が流れていた。世界に展開する、超一流ホテル。優雅で美しいその雰囲気に、はぁと思わず感嘆のため息をもらした。広々としたロビー。天井まで1枚ばりのガラスの向こうに木々が揺れている。ラウンジには暖炉。その周りで皆がのんびりとそれぞれの時を過ごしていた
虹いろのくじらが いっぴき 泳いでいた 肌が透きとおって 太陽で きらりきらりと 虹いろだ みんな虹いろのくじらめがけて 泳いでいく さわりたい! 待てぇ! つかまえてやる! ところがくじらに近づくと みんな虹いろになってしまい しあわせな気持ちになってしまい にこにこ海に浮かんだ すっかり くじらの存在も 忘れちゃって ぷかぷか ああなんだかしあわせだな ぷかぷか なんだったっけ ぷかぷか 満足してしまって 笑いがこみ上げる おや 見回せば みんな 虹いろだなぁ わははは
僕は恋人にフラれたばかりだった 失意のどん底 フラれた理由は 「あなたには色がない」 つまり自分がないということだった そのとき目の前 上空に 竜があらわれた 相当参っているのかもしれない 竜は黙って手を下ろして僕をつかんだ そのとき竜は色の集合体に変化した 「ワシの中のどれかの色になれ」 つかまれたまま僕は吐きそうになった 僕には色がないんだから 「無理だよ」 そう言うと 竜は吠えて 僕を放り投げた あ、落ちる! でも目を開けると僕は空に浮いていて 竜の色の中にいた まわり
過去に『Oggi(小学館)』にて連載されていたものです。 社会で女性が働いてくってこういうことなのかな、って思ったのは、Fさんを見たときだった。 FさんはラジオCMのディレクターで、有名コピーライター。原稿も書く。テレビCMや、駅に貼ってあるポスター広告と違って、まさに15秒分の言葉で勝負するので、コピーライターとしての腕前が試される。そして彼女はフリーで活動していて、一人で個人事務所も経営していたから、何でも自分でこなすスーパーウーマンだった。 私が彼女に出会ったの
なにが正しくて なにがまちがっているのか わからなくてぐるぐる なにがほんとうの気持ちで なにがうそなのか 自分がどこにいて なにがしたいのかも わからない ぐるぐる 見失って ぐるぐる そのときピンクの山肌を見た あれは わきあがる闘志だ とんがっている つっぱっている ぶれやしない あの山のようになりたい 依然として ぐるぐるしたまま わたしはなんとか両足をふんばって 思った わたしの思考はぐるぐるして 所在不明だけれど わたしは いま ここにいる ぐるぐるしたまま ここ
水辺にいます こころにさざなみがたつと この水辺に来ます 波のない 鏡のようにおだやかな水辺に立ち こころの雑音を浸して 沈ませていく びーびーぎゃーぎゃーいっていた雑音が静まり うまくいかない! と かんしゃくをおこしていた 小鬼が ぽろっとあたしから飛びでて 湖の底の まあるい石を取りに もぐっていった さよなら あたしは足をひたして 冷たい感触のなか 小魚が 指先の感覚をつつく くすぐったいな さよなら ハープの音 どこからか そうよ 水辺とハープはなかよしだったね 遠
過去に『Oggi(小学館)』にて連載されていたものです。 最近、舞台女優のお仕事をした。女優なんて恐れ多くて口にもしたくないけれど、でもそういうことになっちゃった。酔っていたときに誘われたせいもあったけれど、一度、出演者側も経験しておけば役者さんの気持ちも分かって、もっといい脚本が書けたり、演出ができたりするよ、という殺し文句で、まんまと術中にはまってしまった。だけれど、学生時代も演劇部だったわけでもないまったくの素人の私が、35歳にしてはじめて舞台に立つというのはとて
冬の木にふれてごらん、すごいよ ぱちぱちしてる どくどくしてる 春へ向かうエネルギーがそこに しまってある その奥に、夏へ向かうエネルギーも、あるよ その奥の奥に、秋へ向かうエネルギーも、あるよ でも冬の木は、しゃべらない じっとだまって、曇り空を見ている 寒そうに なすすべもなく 立っている でもぼくは知っている このあとのめくるめく変化を 春になり 枝がはえ めぶき 夏になり 葉が おいしげり 秋になり その葉を色づかせる そしてまた、このいま目の前のあなたになる 孤独
過去に『Oggi(小学館)』にて連載されていたものです。 遠い親戚に厳格な税理士先生がいる。つい最近から見てもらうことになった。実はずっと前に、そんな話もでていたが、その頃、すごく余裕がなかったのと、今にも増してお金のことが苦手で嫌いだったので見てもらうのを敬遠していた。 でも、私ももう35歳、お金のこと、税のこと、きちんと分からないと!社会のことから、経済から逃げないぞ!ということで税理士先生のもとを訪ねた。 「やっとその気になりましたか。きっとできますからね。丁寧に
山はしゃべっている まあるい山はとくにしゃべっている それにとなりの山も加わって うしろの山も加わって 井戸端かいぎ 井戸端かいぎは 井戸のまわりだから 山端かいぎ 山のまわりで山がしゃべる 「むかし むかし あるところに」 知ってる話をわあわあしゃべる 「あるところに おじいさんとおばあさんがおった」 昔の話を忘れないように山々はしゃべる 今日という日の山端かいぎを終えると 山と山は 遠くの空におじぎをする すると夕日が沈むことになり からすがかあと鳴いて 山と山のあいだに
過去に『Oggi(小学館)』にて連載されていたものです。 ある日、夕方に雑誌の取材をうけるのをうっかり忘れていた。いや、覚えていたんだけど、その雑誌がオシャレ雑誌で、しかも私の撮影がある、ってことの自覚が足りなかった。 「やばい。この髪型ではまずいでしょ」 私の髪の毛は、ぼさぼさで、そして奥の方に毛玉ができていた。 ま、外からは見えないんだけどね。 そんなわけで、事務所に戻り今度は住所をいれ、パソコンで美容院検索をしてみた。 「この名前、なんか見たことあるなぁ」
たまに ごくたまに きみだったらどうするのかな と考えます お元気ですか たまに ごくたまに きみだったらなんて言うかな と考えます どうやって笑わせてくれるのかな どんな奇想天外なことを 言いだすのかな どんな悲しい顔をして どんなひどいことを言って どんなやさしいことばを かけてくれるでしょう はたまたどんな歌を歌いだすでしょうか どこへドライブに行くでしょうか もう わからない わからないくらい わたしたちのあいだに じかんが通り過ぎました では どうぞお元気で わたし
過去に『Oggi(小学館)』にて連載されていたものです。 Kさんとはメールのやりとりから始まった。Kさんは、とある大会社の社長秘書なのである。 【社長のTが『下記メンバーで一度、打合せを兼ねて、京都でお食事などどうですか?』ともうしております。『新幹線でお弁当を食べながら、遠足みたいにわいわい話しながら移動し、京都でミーティングしたい』と張り切っております。ご都合お聞かせいただけると幸いです。念のため御同席いただく方々の…】 そのあとにどういう会社のどういう方が行かれる
宇宙を落ちてゆくゆめを見た たしかにわたしは手をつないで あのひとと落ちてきた まっくらな宇宙空間を 星がちいさく瞬くなか わたしとあなたは モモンガみたいに 両手両足をひろげて 手と手をとりあって どんどん どんどん 落ちていく 眼下には 地球という おおきな惑星が見えた もう時間はない でもスローモーションのように 星がちいさく瞬くのを 「きれい」 「きれいだね」 わたしたちはロマンチックに見つめあう ぎゅっと手をにぎりあって 宇宙を落ちていく 「ねぇ、わたしたち、地球に