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幸せになることに「なってしまいました」は、ないよ。

社会人になって初めての同期は、誰にとっても、大きな存在だと思う。

それが、どんなに短い期間であっても。

たった、1人であっても。

そのあと、ほとんど会うことがなくとも。。。


貴方が今、貴方である故に、少なからず影響を与えているのではないでしょうか。

『同期』じゃなくても、『上司』であったり、『後輩』であったりするかもしれないけど、社会で駆け出しの未熟な自分がいたあの頃、時には、怒られ、喧嘩し、嫌い、疎ましく思い、悔しく思い、見返すことを誓った。。。ネガティブな感情も一部あったからこそ、上辺では仲良くしつつ、その後の動向について気になるものなのではないでしょうか。


私は、ナースとして初めて社会人になった時に3人の同期がいた。


当時、看護師寮が3年で退去を迫られていたことから、ほとんどの先輩が3年経験した後に辞めていった。病院がようやく教育コストに見合わないロスをしていると気づき、私たちが3年目になるころにようやく入寮期間が延長されたが、私たち4人は既に3年目を終える頃に辞めることを心に決めていた。


理由は、みんなバラバラであった。


1人は、結婚を視野に付き合っている彼がいて、外来に移っていった(正確に言うと彼女は辞めずに唯一残った)、1人は第二新卒の枠を利用して、新聞記者として地元に帰った(度々、朝日新聞の「声」の欄に投書を送っていおり、時たま採用されていた彼女は、医療、文化関係の記事を書きたいと言っていた)、私ともう一人は、最後まで、次の就職先を決めずに辞めた。


私も彼女も疲弊しきっていて、先のことまで考えられなかった。

正直、看護師の免許を持っているなら、何とかなると思ってもいた。


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数か月後、彼女は、「ワーホリに行こうと思う」と、連絡があった。

3年しか経験のない看護師の行ける先は大まかに決まっている。①別の病院で働く、②訪問看護師、クリニック、デイケアなど結婚後の生活を見越して、日勤メインの仕事に就く、③JICA,、ワーホリ、ピースポートなどで、海外に出る。


私も当時、こっそり、海外のエージェントと契約交渉をしており、それがまとまりかけていたこともあり、お互いの進路の決定と、未来をお祝いした。


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幸せを祈念しあった割に、2年後、私は吉報を伝えられなかった。海外で、予期せず、病気が見つかり、志半ばに帰国し、しばらくたった時、彼女は、そんな私のプチ不幸を吹っ飛ばせるニュースを持って帰ってきた。

「実はね、向こうにいる間に素敵な人に巡り合って、結婚を考えているんだ。」

ワーホリ先で、結婚!?

私じゃなくても怪しいと思うだろう。

でも、彼女の眼差し真剣だった。

疑いしかない私は、根掘り葉掘り、聞いたが、特別、年が離れている訳でも、年収が高いわけでもなく(少なくともトロフィワイフ狙いではない)、たまたまワーホリ先の「ワーキング」先のカフェで知り合った、常連だという。

病気を抱えて人生を見失いかけている私と違って、キラキラ✨とした未来を語る彼女がまぶしく、羨ましく、でも、既に「同期」でなくなった、彼女の幸せなニュースは心から祝福した。


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再び彼女と会ったのはそれから2年半後だった。

ワーホリビザが切れ、帰国した後も、遠距離恋愛を続け、正式に婚姻手続きをしに、彼がご両親への挨拶を、しに来たのだという。

仕事の都合上、彼は1週間程度の滞在で、会うことはできなかったが、最後の日本生活を楽しんでいた彼女と、ちょうど大学院の修了を控え、ようやく明るい未来を語れるようになった私は、桜が満開の上野公園で、「同期」として初めて出会った私たちの事を面白おかしく語り合った。

彼女はこれまで見た彼女の中で一番幸せそうだった。

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翌日、突然彼女から電話がかかってきた。

いやいや昨日会ったばっかりだし、何だったらその前は2年前だし、、、そんなに私が恋しいかい?と、思いながら、電話に出た。


「どうしよう、私、未亡人になっちゃった」


・・・。


え?

仕事の関係で、一足先に帰国していたご主人が、仕事中に事故に巻き込まれて、亡くなってしまった。と、空港のロビーから、孤独と不安と焦燥感と空虚感に襲われた彼女は、嗚咽と過呼吸に見舞われながらも絞り出すように、ぽつぽつと説明してくれた。


かける言葉が見つからないと、後にも先にもこの時ほど感じたことはない。

前日まで、あんなに満ち足りた、今まで見た一番の素敵な表情を浮かべて幸せを語っていた彼女が、電話の向こうで、一人、見えない自己と戦っている。直前まで、がんを患い、死ぬことばかり考えていた私は、直感的に、どうにか、彼女に死なないでほしいと、思った。必死に彼女から送られるネガティブな言葉をポジティブな側面に置き換え、しばらくLINEを送り続けた。(自分のことだと自暴自棄になるのに、他人のことになると必死になれるのは、私に残された才能らしい)

それも、長くは続けられず、連絡は途絶えてしまった。


時間が経てば経つほど、「どうしてる?」と送りにくくなってしまった。


そのうち、彼女は、Facebookも退会し、LINEの連絡先からもいなくなってしまった。


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時はすぎ、時たま、どこかで、彼女はどうしているだろうか?

と、思うことはあっても、私も自分の生活に必死になり、どう連絡を取っていいかわからないまま、5年が経った。


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Skypeからチャージが切れると通知が来て、久しぶりにログインし、連絡先を見直した。海外在留中によく活用していた、Skypeだが、正直もうほとんど使用していない。

コンタクトリストも、連絡を取らなくなってしまった人だらけであった。一人ずつ、思い出とともに埋葬していった。

そんな折、彼女の連絡先を見つけた。

あ、Skypeで連絡とっていたんだっけ?

お互い海外にいる時期が重なっており、当時Facebookが流行する前で、Skypeの方がむしろメジャーで、Skypeを通じて近況を報告しあっていたことを思い出した。

そういえば、海外で突然宣告された病気の事を、最初に伝えたのも彼女だった。

現地(途上国)の医療機関が信頼できず、職場に医療従事者が自分だけな中で、信頼できる助言が欲しくて、彼女を頼っていたことを思い出しながら、決して届かないであろうメッセージを送った。

いつか、彼女が見てくれたら。。。もしくは、見ないことがあったとしても私の思いだけでも、伝わってほしい。

「元気にしてる?その後、ずっと、心配しているよ」

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驚くことに、数秒で返事が来た。

「元気だよ。実は私も時々どうしているかな?と気になっていた。」

と。

男女だったら、どんなに幸せな相思相愛の感動シーンだろう?

でも、前述のとおり、事情が事情なだけに、

お互い、遠慮気味に近況を聞く。

彼女の質問に応じて、近況を報告する私に反して、彼女はなかなか自分の近況を話そうとしない。

そんなものなのかもしれない。

無理に聞いてはいけない。

連絡が取れることが分かったのだから、

言いたいことがあるときは、きっと、伝えてくれるはず。


そう、思って、話題がひと段落したときに「またね。」と送った。


「実は、あの後、うっかり妊娠しちゃってね。今は子育てしてる(笑)」


と、子供の写真と共に返事が来た。

3歳くらいの黄金色に輝く髪の毛と、彼女特有の目元を引き継いでいる、可愛らしいベビーを抱く彼女の表情は、すっぴんだけど、ちょっと、ふっくらしていて、無表情なのに、幸せがあふれていた。

「ずっと、どうしているかと気になっていたんだけど、自分の状況伝えるのが怖くて連絡取れなかったんだ」

と。


ねぇ、

確かに私は、できた同期ではなかったし、何だったら、私たち同期全体の評価を下げるような失敗をたくさん犯してたくさん迷惑をかけたし、当時は心を開ける友達ですらなかったのかもしれない。

でもね、20数年間日本で育って、資格まで取って、あの辛い新人時代を過ごしたのに、そのキャリアを置いて、海外に行きたいと一大決心をして、それを実現したあなたの行動力と決意は人一倍尊敬していたし、

その先で、運命の相手を見つけて、幸せいっぱいの未来を語ってくれた貴女のことは心の底から、美しいと、思っていたんだよ。そんな未来がまさかその翌日に、紛争地帯でもないのに、粉塵の如く消えてしまうとは思いもしなかったし、下手したら、貴女自身も、もうこの世の中に存在しないのではないかと心配しながら、過ごしていた、そんな貴女が・・・

そんなあなたが子供を産んで、幸せになっていること、

誰も責めないよ。

むしろ、心の底から、嬉しいよ。

幸せになっていいんだよ。

怖いって、なによ。私、そんなにやな奴だった?

自分が幸せなことに、申し訳ないなんて思わないで報告しないでよ。

とことん、幸せを満喫していてほしいよ。

幸せを誇ってほしい。


次は幸せ自慢、聞けるの楽しみにしているからね。


生きていてくれて、ありがとう。


次は、あなたの幸せに、乾杯しよう!

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