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【長編】善き羊飼いの教会

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【完結】長編小説。— DIVE episode B 01 ― 樫緒科学捜査研究所を訪れた鈴鹿の依頼を受け、所員の柊シュリとスルガは、連絡が取れなくなっている筒鳥大の学生三人の行方…
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2021年7月の記事一覧

善き羊飼いの教会 #3-7 水曜日

〈北杏仁総合病院〉      * * * 「甥の聴取を任せてしまって、すまなかったな」 …

善き羊飼いの教会 #3-8 水曜日

〈柊シュリ〉      * 「訪ねるのが遅すぎたな。こんなに暗かったらなにも見えやしねえ…

善き羊飼いの教会 #3-9 水曜日

〈筒鳥署〉      * * *  不規則に点滅する街頭に照らされた駐車場を駆け、筒鳥署…

善き羊飼いの教会 #3-10 水曜日

〈柊シュリ〉      * 「ただいま……」と、囁くようにいって、後手に扉を閉める。  …

善き羊飼いの教会 #4-1 木曜日

〈樫緒科学捜査研究所〉      * * *  ロックを解除し、研究所の扉を開けたスルガ…

善き羊飼いの教会 #4-2 木曜日

〈柊シュリ〉      *  知らぬ間に目覚ましをとめてしまったらしく、慌ててベッドから…

善き羊飼いの教会 #4-3 木曜日

〈佐棟町・国道沿い〉      * * *  日が陰り、風が強くなってきた佐棟町の国道わきに車をとめたスルガは、近くに停車している緊急車両へ近づき、車内を覗きこんだ。運転席には刑事課の椎葉巡査部長が乗っていた。椎葉は目礼して歯を見せ、生い茂る木に挟まれた私道を指差した。どうも、と声にはださず唇のみを動かして右手をあげ、スルガは文倉家の廃屋へと繋がる私道を歩きはじめる。十メートルほど進んだところで、かさついた声に呼びとめられた。振り返って声の主を確認したスルガは、笑みをこぼ

善き羊飼いの教会 #4-4 木曜日

〈柊シュリ〉      *  黄山さんは昨日のうちに瀬戸内海に浮かぶ島で起こった怪事件の…

善き羊飼いの教会 #4-5 木曜日

〈治水ダム〉      * * *  ミラーや道路標識が伸びた枝葉で隠れてしまっている山…

善き羊飼いの教会 #4-6 木曜日

〈柊シュリ〉      *  訊きたいことがたくさんあって、ありすぎて、なにから尋ねよう…

善き羊飼いの教会 #5-1 金曜日

〈楠〉      * * *  タクシーを降りて、舗装されていない私道を進みはじめると、…

善き羊飼いの教会 #5-2 金曜日

〈柊シュリ〉      *  自宅リビングのレコーダーにアカリのDVDをセットする。壁掛…

善き羊飼いの教会 #5-3 金曜日

〈樫緒科学捜査研究所〉      * * *  ロックを解除したつもりが、逆に施錠されて…

善き羊飼いの教会 #5-4 金曜日

〈柊シュリ〉      *  ごねたわけではないのだけれど、母が買ってきたチーズケーキはわたしの前に置かれている。並んで座るアカリがもうひとつのケーキにフォークをさしながら母と交わす会話に耳を傾けつつ、湯気のあがるマグカップを口へ近づけた。アカリちゃん、アカリちゃん、と母はいつものようにアカリの名前を連呼しているが、忙しなく手を動かして夕食の準備を進め、美味しい音とにおいでソファに腰掛けるわたしたち姉妹を刺激し続けている。 「食べ終わったらテーブルの上のもの、片づけてね」