僕がブラジルの音楽の中でもアフロブラジレイロの音楽へ関心を強く持ったきっかけは、2016年にロウレンソ・ヘベッチスという作曲家でギタリストが発表したアルバム『O Corpo de Dentro』だった。
ギタリストとしてはカート・ローゼンウィンケル以降の現代ジャズのスタイルもあれば、アイザイア・シャーキー的なネオソウルのギターも聴こえていた。つまり、2010年代におけるギタリストの必修科目と言えるスタイルを兼ね備えていると感じられた。また作曲の面ではギター・カルテットを核にした大きめのコンボ編成で興味深いアンサンブルを作り出していた。オーセンティックなジャズ・アンサンブルというよりはサド・ジョーンズやボブ・ブルックマイヤー以降の、つまりマリア・シュナイダーを好む耳にも面白く聴けるサウンドだと思った。
ただ、その二つは現代ジャズ的な文脈に過ぎない。もうひとつのアフロブラジレイロ由来の音楽性が最も重要な要素だった。リオやサンパウロのボサノヴァでもサンバでもなく、ブラジル北東部に根付いているアフロブラジレイロのリズムを取り入れたサウンドは、ブラジル音楽を普通に聴いていてもなかなか出会えないものだった。
その後、ロウレンソ・ヘベッチスはシェニア・フランサのデビュー作『Xenia』(2017)をプロデュースし、そこでもネオソウルやジャズの要素に、アフロブラジレイロの音楽を融合させ、斬新すぎるサウンドを提示していた。
僕はロウレンソ・ヘベッチスやシェニア・フランサの音楽を聴いてから、そのルーツでもあるカエターノ・ヴェローソやカルリーニョス・ブラウン、レチエレス・レイチ、さらに遡ってモアシール・サントスまで、アフロブラジレイロの音楽へ関心を深めていった。おそらく日本でここ数年の間にアフロブラジレイロの音楽への関心を深めた人の中には、僕と同じようにロウレンソとシェニアがきっかけだった人も少なくないだろう。
アマーロ・フレイタスへの取材をきっかけにアフロブラジレイロの音楽へのリサーチを続ける中で、ロウレンソ・ヘベッチスには話を聞いておくべきだろうと思い、インタビューを行った。レチエレス・レイチから直接アフロブラジレイロの音楽を解釈する方法を学んだロウレンソの話には、レチエレスの音楽を深く理解するための貴重な話が詰まっている。
取材・執筆:柳樂光隆 | 編集:江利川侑介 | 通訳・編集:島田愛加
◉アフロブラジレイロの音楽との出会い
――カンドンブレに由来するアフロブラジレイロの音楽に関心を持ったきっかけを教えてください。
◉レチエレス・レイチの音楽について
――レチエレス・レイチとの出会いに関してはどうですか?
――レチエレス・レイチの音楽のどんなところに惹かれたのでしょうか?
――レチエレス・レイチのアンサンブルにおけるハーモニー面はどうですか?
――例えばビッグバンドやラージアンサンブルでも管楽器がセクションごとに固まって動くのではなく、それぞれが異なる役割をもって動くような曲の書き方がありますね。マリア・シュナイダーやサド・ジョーンズがそうだと思います。レチエレスはそういった作曲家とはまた別の手法なのでしょうか?彼と同じような作曲法をする音楽家を知っていますか?
◉ロウレンソ・ヘベッチスの音楽とアフロブラジレイロの要素
――作曲家としてのあなたがフン、ピ、レの3つのパーカッションや、それらを使ったリズムにどんな可能性を感じていたのか聞かせてください。
――あなたのアルバム『O Corpo de Dentro』ではレチエレスのフンピレズに比べると管楽器もパーカッションも人数が少ない編成です。管楽器に関してはジャズのビッグバンドよりも少ないです。この編成にどんな意図があったのか聞かせてください。
◉ロウレンソ・ヘベッチスの影響源
――『O Corpo de Dentro』のアフロブラジレイロの音楽とコンテンポラリーなジャズ、ネオソウル、ヒップホップのコンビネーションは独創的なものです。こういったハイブリッドなサウンドのインスピレーションになった作品やアーティストはいますか?
――今おいくつですか?
――その世代でバークリー音楽院に留学されていたのなら、ロバート・グラスパーやクリスチャン・スコットなども好きでしたか?
――今も名前が出ましたが、ラージアンサンブルとパーカッションの組み合わせと言えば、カエターノ・ヴェローソの『Livro』は重要な作品です。ここではカルリーニョス・ブラウンやジャキス・モレレンバウムらも素晴らしい仕事をしています。このアルバムの素晴らしさについて聞かせてもらえますか?
◉シェニア・フランサ『Xenia』のこと
ーー次はシェニア・フランサの1作目『Xenia』について、です。ピポ・ペゴラーロと共にプロデューサー、コンポーザー、アレンジャーとして、どんなことをやったのでしょうか?
――アフロブラジレイロ由来のパーカッションやリズムも入っていますが、エレクトロニックなサウンドもかなり含まれています。どのようにこんなサウンドを生み出したのか聞かせてください。
――集まり始めた頃、参考になる曲を互いに聴かせ合ったのことですが、例えばどんなアルバムを聴いていたのですか?
◉シェニア・フランサ『Em Nome da Estrela』のこと
――2作目の『Em Nome da Estrela』(2022)についても、ピポ・ペゴラーロと共にプロデューサー、コンポーザー、アレンジャーとして、どんなことを行ったのか聞かせてください。
――2枚目のアルバム制作の際にインスピレーションになったものはありますか?
――プロダクション、ミックスにおいてはどんなことをやったのでしょうか?
――今後の活動について教えてもらえますか?