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Film Review:映画『グリーンブック』はドン・シャーリーのピアノと劇中の音楽がすごいこと(ネタバレあり)

以下のリンクにあるotocotoへの連載で映画『グリーンブック』について書いた。ただ、オープンなメディアなのでネタバレを注意して書いている。ここではその音楽部分をもっと深く考察するために、がっつりネタバレありで書いてみたい。

ジャズ・ピアニストのクリス・バワーズが手掛けた『グリーンブック』の音楽部分がとても優れていたという話は上の記事にも書いたが、ここでは実際に映画を観た人向けにもう少し書いてみたい。

黒人ピアニストのドン"ドクター"シャーリーと、シャーリーの運転手兼ボディガードのイタリア系アメリカ人のトニー・ヴァレロンガが1962年にアメリカ最南部を回る実話のコンサートツアーをベースに作られた物語だけあって、その時代の音楽がきちんと使われていて、とにかく音楽がしっかりしていたのが素晴らしかった。

劇中では設定どおりの1961~1962年あたりのヒット曲が流れていて、しかも、アレサ・フランクリン「Won't Be Long」やブルー・ジェイズ「Lovers Island」、ティーミー・ショウ「A Letter From My Baby」、ブラックウェルズ「You Took Advantage Of Me」、アル・ケイシー・コンボ「Cookin'」など、選曲も絶妙で気が利いていた。ソウルからリズム&ブルースの、ロックンロール、ドゥーワップなど、ブラックミュージックとは言っても、様々なジャンルから選んでいるのもセンスが良い。これはサントラで聴けるのでぜひ聴いてみてほしい。

そして、それらの音楽がこの映画にとっても重要な役割を果たしている。

クラシックが好きなドンは同時代のブラックミュージックのヒット曲も人気アーティストのことも知らない。一方で、ナイトクラブのコパカバーナで用心棒をしていたり、酒場で飲んだりしているようなトニーはその辺りは普通に知っている。

移動中の車の中ではトニーがラジオをかけるとアレサ・フランクリンやリトル・リチャードが流れるが、ドンはそれらの曲を知らないし、好きではないといった態度をとる。それに対してトニーは「黒人なのに知らないのかよ」的な反応をする。それが二人がだんだん打ち解けてくるにつれて、ドンはラジオから流れてくるブラックミュージックのこともだんだん気に入ってきて、自然に二人の移動のBGMになっていく。ブラックミュージックとの距離は2人の仲を示すメタファーのひとつだ。

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