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薦められて本を読む/2022年のBook of the year~Shoko篇~

 「趣味は何ですか?」と聞かれると、「読書と映画鑑賞」と答えるけれど、そう言えるほど本を読んでいなかった。でも昨年は、本好きの友人たちから薦めてもらった本を読み、読書量が増え、手に取る本の幅も広がった。

好きな作家ばかり読んでいた

 「本を読む=小説を読む」ことだった私は、数年前まで小説以外の本を読むことはほとんどなかった。好きな作家の本だけを追いかけていて、本棚に並ぶのは、吉本ばなな、辻仁成、村上春樹、以上。そこから、友人に教えてもらった川上弘美さん、話題になっていた小川洋子さんなど、少しずつ他の作家の本も増えていった。

 転職し、コピーの勉強を始めるようになってから、コピー関係の本やビジネス書なども加わり、雑多な本棚になっていった。そうなると今度は小説から遠ざかり、読むのは村上春樹さんの新作くらい、という時期が続いた。

選んでもらった本を読む

 昨年は初めて、「人に本を選んでもらう」という体験をした。オンラインで参加した企画の講座で出会った仲間2人が始めたユニット「図書係 山と川」。私の話をじっくり聞いた上で、時間をかけて1冊を選んでくれた。

 届いたのは、ドイツに住み、日本語とドイツ語で創作する多和田葉子さんの『言葉と歩く日記』。お手紙と共に、お手製のブックカバーやひとことスリップ、貸出カードなども添えられていて、ワクワクしながら眺めた。

 この本を手にしたのは、2022年の1月。思えばここから、私の読書の幅が少しずつ広がっていった。この本のことをnoteに書いたら、SNSでつながっている友人が多和田さんの作品が好きだとコメントをくれた。そこでお薦めを尋ねると、『変身のためのオピウム』という小説を教えてくれた。ギリシア神話に出てくる女性たちの名を持つ登場人物たちが登場する連作集。ギリシア神話が好きだった私にとって興味深い本だった。

 夏には東京で宿泊した「BOOK HOTEL 神保町」でも選書を体験。事前アンケートに答えると、今まで知らなかった作家の本を選んでもらった。ブックペアリングという中身の見えない本を選ぶサービスも利用した。袋の中から出てきたのは、いつか読もうと思っていた林真理子さんの『白蓮れんれん』だった。

教えてもらった本も読む

 「図書係 山と川」のKさん・Fさんと出会った講座には本好きの人が多く、本の情報を教えてもらう機会が増えた。
 Kさん、Fさんから聞いたのが『やがて忘れる過程の途中(アイオワ日記)』(滝口悠生)。作家の滝口さんがアメリカのアイオワ大学で、「インターナショナル・ライティング・プログラム」という滞在プログラムに参加した時のことを綴った日記形式の本だ。

 思えば日記作品を読むことなど、あまりなかった。その後、このnoteを一緒に書いているNorikoおすすめの山本文緒さんの日記本も読んだから、多和田葉子さんの『言葉と歩く日記』に始まり、日記づいていた年だった。

 同じ講座で出会ったmakiさんが教えてくれた『本日は、お日柄もよく』(原田マハ)、『正欲』(朝井リョウ)も読んだ。他にも講座仲間から薦めてもらい、読んだことのなかった作家の本に触れた。教えてもらわなければ、手に取ることがなかったと思う。

 Kさんが最初に薦めてくれたのは、柴崎友香さんの『きょうのできごと』だった。語り手が次々に変わっていく小説で、こんな書き方もあるんだと思った。この本は、偶然にも他の講座仲間Nさんからも教えてもらったものだった。
 Kさんは、お気に入りの『本が語ること、語らせること』(青木海青子)も送ってくれた。奈良県東吉野村で「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」を開く青木さんご夫妻が、身近な方のお悩みに本で答えた記録とエッセイから成る。自分と似たようなお悩みもあり、私も本をすすめてもらったような気持ちで読んだ。

 もう一つ、今までにない本との出会いがあった。昨年、受講したオンラインのコピー講座で、多様な文体の例として、川上未映子さんの『わたくし率、イン歯ー、または世界』について聞いた。私が触れたことのない文体と内容で、頭がぐらぐらするような感覚を覚える。今まで読んだことのない作家の本も意識して読んでみようと思うようになった。

そういえば書評が好きだった

 雑誌の書籍紹介コーナーや、毎週日曜日に掲載される新聞の書評ページを読むのが好きだ。中高生の頃、気になるものがあるとノートにメモしていた。そのノートを開いてみると、ほとんど読まずに終わっているので愕然とするが、最近教えてもらった本や思い出深い本の名もあった。

 書評の無料閲覧サイト「ALL REVIEWS (オール・レビューズ)」というものを知った。新聞でよく目にしていた書評家の一人、フランス文学者・鹿島茂さんが立ち上げたものだ。かつて読んだことのある書評家の方たちの名前も並ぶ。noteで紹介記事を見かけたのだが、東京・神保町には「PASSAGE by ALL REVIEWS」という共同書店もあるという。こちらもいつか行ってみたい。

友人の好きな本を読む

 このnoteを一緒に作っているNorikoとは、学生時代からの長い友人だ。村上春樹さんの紀行文『遠い太鼓』を教えてもらい、そこから村上作品を読むようになった。吉本ばななさんの大ファンだという彼女の影響で、しばらく読んでいなかったばななさんの本も再び手に取るようになった。『人生の旅をゆく』シリーズはとても良かった。

 昨年、Norikoが作家・山本文緒さんの作品について紹介する記事を書いたことがきっかけで、山本さんの本を読むようになった。ずいぶん昔に『プラナリア』を読んで以来。エッセイから入り、短編集を読み、長編にも手を出している。やるせないような結末になる話もあるのだけれど、不思議と嫌な読後感にはならない。いきいきとしてユーモアあふれるエッセイを読み、山本さんのあたたかい人柄なのだろうか、と思う。

 最近は電子書籍を活用しているのだが、2023年、最初に紙で買った本は、山本文緒さんのもの。Norikoお薦めの『自転しながら公転する』の文庫本を手に入れた。一緒に『残されたつぶやき』も購入。2021年に亡くなった山本さんが残した言葉。大事に読み進めたいと思う。

 薦められた本を読むことで、自分では出会えない作品に出会い、そこからまた、新たな本との出会いが生まれていった。

2022年のBook of the year

 年が変わってしまったが、Norikoに倣って私も2022年の「Book of the year」を選んでみようと思う。絞るのが難しくて悩んだが、2022年に読んだ本の中から、再読本も含めて選んだ。

日記・エッセイ
言葉と歩く日記』(多和田葉子)
再婚生活 私のうつ闘病日記』(山本文緒)

小説
蛍・納屋を焼く・その他の短編』(村上春樹)
キッチン』(吉本ばなな)

 日記・エッセイは、選んでもらった本、教えてもらった本から。小説は自分で買った本で、結果として昔から好きだった作家の作品に。読んだつもりで読んでいなかった村上春樹さんの初期短編集と、中学生の頃に読んで以来、久しぶりに再読した吉本ばななさんのデビュー作。中でも村上さんの『めくらやなぎと眠る女』、吉本さんの『ムーンライト・シャドウ』が心に残った。

 今年も読んで読んで、そして、書いていきたい。

(Text & Photo:Shoko) ©︎elia

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▼「図書係 山と川」さんに選書してもらった時のこと

▼makiさんの2022年の本10選

▼Norikoの記事

▼『言葉と歩く日記』について触れた記事

▼『蛍・納屋を焼く・その他の短編』『キッチン』について触れた記事

▼私たちの本にまつわる記事をまとめたマガジン



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