flog.(ふゆ)

大海を見に行きたいし、空の青さも極めたくて、石の壁をじっと見ている一匹の蛙。

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大海を見に行きたいし、空の青さも極めたくて、石の壁をじっと見ている一匹の蛙。

最近の記事

つつじの庭

10月の末、祖母が亡くなった。 珍しく、というか残業のし過ぎで月残業時間が44.5時間になっていたために、追い出されるようにして早く退勤した金曜の夜、電車の中で母からのLINEを開いた。 『急ですが、先程、ばあちゃんが息を引き取りました』 頭が真っ白になるって、こういうことだと思った。 私から見て母の母にあたる祖母は、叔父(母の弟)と二人で他県に暮らしていた。コロナ禍になった2020年からの3年の間、高齢であることを考えて家に籠ったり、自身もコロナ禍に罹って入院してい

    • 4月から8月の短歌

      サボっていました。 白い肩紐弧を描き翼ひろげるような歌声 心から救いたい人に伸ばす手を引っ込めることも一つの祈り 暑いねと話しかければ風が吹く 日傘のひとを失ったのだ 扇風機 もこもこカーデ 温暖化が叫ばれている私のオフィス 俯いた君に差し伸べる手がなくて 視界に映るように散る花 笑われぬように必死に歩いてる 生ってこんなに臆病だっけ 開花とか梅雨入りみたく教えてよ 片思いでも倦怠期でも おもしろい会話の中身は覚えてない おもしろかったことだけ分かる セキレ

      • 3月の短歌

        4月ももう終わりですが、3月の短歌まとめました。先月もそんなことを書いていました。4月の短歌はいつまとめるのでしょう。 生も死も知らないままでいたいほど貴方のことを恨んでいます ノイキャンはオフにして聞く雨の日のプレイリストと雨粒の音 友人のままのうれしさ、恋人になれないさみしさ、君は知らない ファインダー越しの世界は万華鏡 君の水晶体は宝石 花びらをプリズムにして春爛漫 口に含めば溶けそうな彩

        • 2月の短歌

          3月も終わろうとしていることに驚きですが、2月に詠んだ短歌まとめました。 五味混ぜてコーヒーゼリーと流し込む三千円のパフェは人生 寝食で性欲が置換できるなら果てなく傍に居てあげたのに ありがとうもさようならも言わないで 傷つけ合ってそれでお終い レンズ2枚重ねて真冬の星を見る 人の心より遠いもの無し 年賀状くらいが丁度良いみたいケンカしないし元気そうだし この街の全てをBGMにして今夜私が撮る傑作 来世はより眩しくありますよう そうして一段ごとに天へと 先生は

          「好きを仕事に生きていくこと」の泥臭い裏側 |『シェフたちのコロナ禍 道なき道をゆく三十四人の記録』読書感想

          突然ですが、好きなことを仕事にするって、どんな感じでしょうか。 自分のやりたいことで生きていけたら、素晴らしいと思う反面、一筋縄ではいかないだろう、困難に直面したらどうしようと、不安を覚える人もいるのではないでしょうか。 まだ何もしていないのに、というのは私のことです。 書店に行けば、いそいそと自己啓発本の棚をのぞき、「頑張らないこと」「自己肯定感を高める」なんて宣伝文句にばかり、つい目が行きがち。 メンタルケアを試してみても、死ぬまでにやりたいことを手帳に100個書き出

          「好きを仕事に生きていくこと」の泥臭い裏側 |『シェフたちのコロナ禍 道なき道をゆく三十四人の記録』読書感想

          いつかこの映画が「古いw」って言われればいいなと思った|映画『そばかす』感想

          やっと行けました、映画『そばかす』。 性欲も恋愛感情も無いことを、誰にも信じてもらえず、生きづらさを抱える主人公、佳純。演じるのは『ドライブ・マイ・カー』で寡黙な運転手役を演じた三浦透子さん。 これが映画の題材になり得るのが令和らしくもあり、わたしたちは次の年号を待たずして、もはや題材になり得ない日常にしなきゃいけないなと思う。 なにも悪いことしていないのに謝らなければいけないことも、恐怖を抱くこともないように。 佳純の人生を切り取って2回目の映画を撮るなら、もっと穏やか

          いつかこの映画が「古いw」って言われればいいなと思った|映画『そばかす』感想

          連絡は楽で 告白は酷

          会いたいって痛い 触れたくて振れる袖 別れるのは彼 嫌いってkiller 妄想は嘘 綱わたりみたいな繋がりと 傷みたいな絆 思い出は捥いで 鼓動はどうして 復縁は食えん 未練は見れん 傷は思わず キスで誤魔化す 愛情は異常 愛憎は位相 連絡は楽で 告白は酷

          連絡は楽で 告白は酷

          1月の短歌

          1月、よく頑張りました。 売れ残りカレンダーだって正月はどこか誇らしげに見えるのに 撮ってあげる、こっち向いてよ、僕の手に収まりやしないひかりの君よ 片頬で人を嗤う シーソーなら落ちていくのは私の価値だ 「死にたい」と「生きていたい」を足して2で割って「好きだ」と言えたら良かった 胸の内に猛獣がいてこのままでいいのかって噛み付いて喚く 波が来て崩れたお城建て直すように会えませんか私たち 男女関係とかどうでもいいから朝まで君と話がしたい

          人の営み結局全て、出逢うことだけが本質だ

          2月から、晴れて正社員として働くことが決まった。 新卒から2年間勤めた接客業から、事務職へ。 去年の年明け頃に一度転職活動をしてみて、とても当時の仕事との両立は出来ないと分かって5月に退職。それからは失業手当の給付を受けたり、アルバイトをしたり。色彩検定の勉強をして合格したり、オンラインスクールに登録してphotoshopをインストールしたり。北海道の先輩に会いに行ったり、好きなイラストレーターの個展を見に名古屋に行ったり。土日にはカレンダー通りの休みの人と、平日には平日が休

          人の営み結局全て、出逢うことだけが本質だ

          2023年にやりたい82のこと

          100個考えたかったけど思いついたら増やしていくとして。 月1系 月1回、人と会う約束をする 月1回、新しい場所に行く 月1回、展示行く 月1回、料理する 月1冊、本を読む 月1本、note投稿する 2か月に1回、旅行する 季節 おみくじを引く 雪を見る スキー行く 冬の海に行く 花畑に行く 紫陽花寺に行く かき氷を食べる 金木犀の香りを嗅ぐ すすき野を歩く 紅葉狩りする クリスマスマーケットに行く 勉強 シーライクス毎月4回受講

          2023年にやりたい82のこと

          眠れぬ夜の絶望と夕刻街を照らす希望100首

          上の方が最新なので降順。 100.好きですも愛していますも届かない天の川の先で待ってて 99.「送ってよ」言えない、一人が好きだしさ  暗くなる前にお暇するね 98.腕時計眺めて一人背を伸ばす  素敵なことが起きる気がして 97.一口のアパタイザーの大皿の  無音のサーブ  筋力の張り 96.月が綺麗ですねが  好き  になるなら、 陽向のようなあたたかさ  君 95.浴槽は布団に似てる潜ったら思考の海に溶けだす身体 94.この手から宇宙へ投げる  必要な人のと

          眠れぬ夜の絶望と夕刻街を照らす希望100首

          ロックなんか聴かない私は少しでも君に近づきたかった

          下書きが出てきた。 去年の夏の終わりに書いたものだ。 "彼"とは遠い関係になってしまった。今年の夏に叶えたかった夢。もう一生叶わない夢。 私と彼との間のことは、まだ思い出したくない。 ただ、1年前、私と、今これを読んでいるあなたと、世の人々で戦っていた世界のこと、終わりのない共存の道を歩みながら確実に前へと変化している今のことは、覚えていたいと思う。 ****************** 夏が始まって、夏が終わった。 今年も。 彼はそう表現した。 『ROCK IN

          ロックなんか聴かない私は少しでも君に近づきたかった

          クリエイターに愛を伝えることの罪

          先日、友人が撮った写真の考察を呟いたところ、本人から反応があったので、調子に乗って自分なりの更なる分析を送った。撮影や写真への理解も経験も乏しい一素人であるにも関わらず。 そのことを、深夜3時に後悔した。 今年の6月に、3人で紫陽花を撮りに行った、その時のアルバムをふと見返していて気付いたこと。三者三様に人物写真の構図に特徴があって面白いこと。その友人の場合は被写体がカメラ側を向いているか、反対側を向いているか(カメラからは被写体の表情が見えない)によって構図が変わる傾向に

          クリエイターに愛を伝えることの罪

          一番正しい祈りの形

          賽銭箱の前で目を閉じて、手を合わせる間、何かを祈るのをやめた。 いつからだろう。 家族行事として毎年訪れる地元の神社は、かなり大きくて、初詣では交通規制が行われるほどだ。 大吉が少ないことで有名だと友達から聞きかじったが、私と姉はこの年に一度のおみくじでよく大吉を引く。 毎年きちんとお参りしているのを見ててくれているんだと喜んだ。 また良い成績が取れると嬉しいです。 家族健康。 合格祈願。 今年は両親が喧嘩しませんように。 誰にも言ってないけれどあの人との仲は進展するでし

          一番正しい祈りの形

          借用書4枚。一つの恋の証だった。

          1月の末。 私が彼氏と別れたことを知った同僚が、酔った口調で言う。 「さて、それじゃふゆさんの失恋話でも聞きますか」 別に、これは私が傷心を慰めて欲しくて呼びかけた飲み会ではない。 新しい年になったらもう思い出すまいと、失恋ソングを聞くのをやめ、写真フォルダを遡るのをやめ、休日は新しい場所に出かけ、夜には友人との予定を詰めた。 その予定の一つがこれであるというのに、何回はぐらかしても、通し勤務明けの酔っぱらいはまあしつこい。 好奇心100%過ぎて失礼だ、せめて慰めるフリ

          借用書4枚。一つの恋の証だった。

          ささいで永遠な、回りくどくて軽薄な。

          「ツーショ撮ろうよ」 この言葉があまり好きではない。 自分の顔が恵まれていると思えなくて、笑うのが下手な私にとって、撮られることは大抵気分の良いものではない。 撮ろう撮ろう、と笑いながら、その実、嫌だなあなんて思っている。 人の顔なんて記録しておいて何になるんだろう、と。 ツーショットなんて、ささいで永遠な独占欲だ。 この空間にいたのは私とあなただという、二人だけ知っていれば良いような、別に世界は二人の邪魔をしないのに、二人分の視界をわざわざ3:4に押し込めて笑う。 仲

          ささいで永遠な、回りくどくて軽薄な。