最近、「大人の学校」という場所が生まれはじめています。その背景には、人生100年時代に入り、大人も学び直して成長し続けていくという流れがあります。
でも「大人の」学校ってなんでしょう?
北欧ではフォルケホイスコーレと呼ばれる成人教育学校があります。そこでは、共同生活をしながら生徒同士の対話を中心に人生を見つめ直すことができます。
今回は、デンマークのフォルケホイスコーレで学び、埼玉県秩父郡小鹿野町で地域おこし協力隊として活躍される宇佐川拓郎さんにお話を聞きました。
2020年より大人の学校を企画し2021年10月から第一期プログラムがスタート。おがの発「大人の学校」はどんな場なのでしょうか?そこには宇佐川さんの原体験からはじまる無垢な想いがありました。
デンマークで知った ユーモアと自分とつながる大切さ
宇佐川さんは当初小学校教員として働いたのですが、画一的な教育への違和感や、ボトムアップが難しい学校組織への違和感があったそうです。そして一念発起してデンマークのフォルケホイスコーレへ留学されました。
フォルケホイスコーレと言えば「対話」を重視する場所。毎週100人の生徒が体育館に集まり、困りごとや騒音、トイレにおけるジェンダー問題まで話し合ったそうです。ボトムアップで話し合い解決する文化を感じる一方で宇佐川さんが注目した点がありました。
私には「フォルケといえば対話」という先入観がありました。しかし、宇佐川さんは対話の場にあるユーモアや、リラックスし自分自身とつながっている感覚を発見し日本に持ち帰ったのです。
「そうだいなー」という小鹿野町の人柄
デンマークに行く前、宇佐川さんは現在の拠点である埼玉県秩父郡小鹿野町と偶然引き合わされました。
フォルケに行く前から帰国後は地方で暮らしたかった宇佐川さん。東京では自分はサービスを受ける側だが地方なら自分たちの手で良くしていける。また、当時は教育の窮屈さを感じていたため、高校魅力化プロジェクトのように学校を出て地域の中で学ぶ形に魅力を感じたそうです。
そして帰国後、小鹿野町に移住しました。
みんなが中心のトルネード。意図も境界も越えて
宇佐川さんの展開するおがの発「大人の学校」では、町の人が先生になって授業を作ります。
月1~2回×3~6か月の継続クラスや、1回ずつの振り返りクラス、「こんなことやってみたい!」という単発クラスまでさまざま。交流しながら絵画を学んだり、小鹿野の地層を知るフィールドワークや、休耕地での生きもの観察、市民農園でこれからの農業を考えたり。小鹿野だからこそ、住人だからこその授業ばかりです。
原体験は小学校の遊びから。大人こそ楽しく
フォルケのきっかけとなった民主主義、自由、みんなで作っていくというボトムアップ。宇佐川さんのお話には一貫した想いを感じます。それはご自身の体験から来たものでした。
しかし小鹿野町ではそれまで慣れ親しんだ子供教育ではなく、大人向けの学校をはじめられました。それはなぜなんでしょうか?
「実はこの学校は、宇佐川さん自身の遊び場を探求する取り組みでもあり『あーそーぼ!』と遊び仲間を探しておられるのでは?」
インタビュアーからの率直な問いかけに宇佐川さんはこう答えてくれました。
最後にご自身の考える「幸せ」についてお聞きしました。
お話をうかがう前は「大人の学校」とは自己成長やスキルを身に着ける場だと思っていました。でも思い返してみれば、学校とは、友達や新しい世界といったワクワクに出会える楽しい場でもありました。
宇佐川さんの作る学校は、子供のように自分の心に素直に、ありのままでいられる場所。それは本当の意味で大人が思い出すべきことなのではないでしょうか。
決められた意図も境界もなく、予想外の変化も楽しみながらみんなで作っていく。そんな遊び場のような「大人の学校」で私も遊び仲間になってみたいと思いました。
Text by ひらふく(おとな教育の実践人事)