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スタッツでサッカー観が変わる③チーム編

チームごとの特徴も数字を見れば明らか

試合を観ている最中に、両チームがどのようなサッカーをしているのかを理解することは意外と難しいものです。ですが、事前にスタッツを読み解けばより試合観戦における理解度も増すことでしょう。

例えばボール支配率やパスの本数を見ればどれだけボールを持つことを好むチームか、またゴール数、シュート本数、ゴールの内訳やシュートを放った位置を見れば得点力やチームの得点のパターンが分かります。

前回までは個人のスタッツについて観てきましたが、今回はチーム全体で収めた成績における項目を紹介します!

これまで同様、WhoScored(https://www.whoscored.com/))に記載されているスタッツ項目となります!

チームのスタッツの項目

各選手のスタッツと共通しており、それが個人からチーム全体に変化しただけの項目がほとんどです。

前回までの記事で既出のものに関しては、こちらでは簡潔な説明に留めますので、詳しく知りたい方は以下の2つの記事をご覧ください!



チームのスタッツ

それではWhoScoredのTeam Statisticsの欄に記載されているものから見ていきましょう!


・Summary

Apps:チームの試合数

Goals:チームのゴール数

Shots pg:1試合あたりのチームのシュート本数

Discipline:チーム全体のイエローカードとレッドカードの枚数

→試合中に警告を受ければ積極的なディフェンスがしにくくなり、また退場すれば数的不利となる。さらに累積警告や退場はサスペンション(次節出場停止)に繋がってしまうため、カードをもらう枚数は極力抑えたい。

Possession%:チームの平均ボール支配率

→チームがどれだけボールを保持しているかが分かる数値。リーグ戦での上位と下位のチームを比較した場合、基本的には上位チームが上回ることが多く、ある程度、支配率はチームの実力に比例すると考えられる。

しかし戦術によってはそれが当てはまらないこともある。例えば2013/14シーズンのラ・リーガでは、優勝したアトレティコ・マドリーはリーグ10位の49.1%、一方12位でシーズンを終えたラージョ・バジェカーノはバルセロナに次ぐリーグ2位の56.8%を記録している。

(勝ち点と支配率の相関関係については今後記事にしていきたいと考えています!)

Pass%:チーム全体のパス成功率

AerialsWon:1試合あたりの空中戦勝利数

Rating:チーム全選手の評価の平均



・Defensive

 Shots pg:1試合あたりの被シュート数

Tackles pg:1試合あたりのタックル数

Interceptions pg:1試合あたりのインターセプト数

Fouls pg:1試合あたりの犯したファール数

Offsides pg:1試合あたりのオフサイドを取った数



・Offensive

Shots pg:1試合あたりの撃ったシュート本数

Shots OT pg:1試合あたりの枠内シュート数

→当然ではあるが、得点を奪うためには枠内にシュートを飛ばす必要があるため、シュート本数における枠内シュート数の割合が高い方が良い。

Dribbles pg:1試合あたりのドリブル突破数

Fouled pg:1試合あたりの被ファール数

状況ごとのスタッツ 

次に、Situational Statisticsの欄に記載されているものを見ていきましょう!

以下のGoal TypesPass Typesにおいては、For(自チームの攻撃における数値)とAgainst(相手の攻撃における数値)を選択できます!


・Goal Types

ここではどのような状況で得点/失点したかを見ることができます!

Open Play:オープンプレー、つまりプレーが続いている状態での得点

Counter Attack:守備側がボールを奪い、相手の陣形が整う前に決めた得点

→オープンプレーとは区別されている。

Set Piece:セットプレーから生まれた得点

Penalty:PKによる得点

Own Goal:オウンゴールによる得点


・Pass Types

ここでは成功したパスの内訳を見ることができます!

Cross pg:1試合あたりのクロス成功数

→クロスとは、ワイドポジションから中央のアタッキングエリアに放り込まれたパスのこと。

Through Ball pg:1試合あたりのスルーパスの成功数

→スルーパスとは、相手チームの選手の間を通して、ゴール方向へと走っている味方に通すパスのこと。

Long Balls pg:1試合あたりのロングパスの成功数

→ロングパスとは、25ヤード(22.86メートル)以上の距離のパスのこと。

Short Passes pg:1試合あたりのショートパスの成功数

→ショートパスとは、25ヤード以下の距離のパスのこと。


・Card Situations

ここではカードが出された理由について見ることができます!

Fouls:プレーの中のファールによるもの

Unprofessional:プロフェッショナルとして相応しくない行為によるもの

→サイトには明確な基準が書かれていないものの、主に審判への抗議かと思われる。

Dive:シミュレーションと判断されたもの

→イングランドではルール改定で厳罰化し、各国でもVAR導入以降はごまかしが利かず、すぐにバレるようになった。

Other:その他

→Unprofessionalとの違いが明確ではないが、遅延行為などかと思われる。

ポジションに関するスタッツ 

最後に、Positional Statisticsの欄に記載されているものを見ていきましょう!

Attack Sides:ピッチを横に3等分(Left Side,Middle of the pitch,Right Side)し、それぞれのレーンから行われる攻撃の割合。

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(引用:https://www.whoscored.com/)

Action Zones:ピッチを縦に3等分(Own Third,Middle Third,Opposition Third)し、各エリアにおけるポゼッションの割合。

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(引用:https://www.whoscored.com/)

Shot Directions:ピッチを横に3等分(Left Side,Middle,Right Side)し、それぞれのレーンからシュートが撃たれた割合。

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(引用:https://www.whoscored.com/)

Shot Zones:ゴールエリア、ペナルティエリア、エリア外のそれぞれの位置で撃たれたシュートの割合。

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(引用:https://www.whoscored.com/)

ユヴェントスとラツィオの比較

以上で紹介したスタッツについて、実例をもとにおさらいしましょう!

今回はセリエAで優勝争いをしている2チームを比較します!

まず現在首位に位置するユヴェントス。昨シーズン5大リーグにおける歴代最長となる8連覇を達成し、その記録をさらに伸ばそうとしています。

そのユーヴェを勝ち点1で追うのがラツィオ(互いに26試合を終えた段階で)。ここまで得点数ではリーグ2位、失点数ではリーグ最少を誇っています。

その両者の戦い方にはどのような違いがあるのでしょうか?


それでは、今回の記事で紹介した順にスタッツを見ていきましょう!

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ゴール数はラツィオが大きく上回っています。ユヴェントスは1試合あたりのシュート本数では上回るものの、ゴール数には繋がっていないことが分かります。

ボール支配率やパスの成功率においてはユヴェントスが勝っています。これは今季より招聘されたサッリ監督の戦術によるものが大きいでしょう。また、空中戦の勝利数においてはほぼ互角です。

また平均レーティングでは、順位で劣るラツィオが上回っていることが印象的でした。

ちなみにラツィオの平均レーティングはリーグ2位、ユヴェントスは3位でした。1位は得点数においてもリーグNo.1を誇るアタランタ(リーグ順位は4位)であり、このサイトでの評価においては、攻撃面での数字が重要視されていると推測できます。


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守備面においては、合計失点数の差は1しかない(ユヴェントス:24、ラツィオ:23)こともあり、スタッツもほぼ互角です。全て僅差ですが、被シュート数の少なさ、オフサイド数はユヴェントスが、タックル・インターセプトの数、ファールの少なさにおいてはラツィオの方が優秀であると言えます。


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シュート数、枠内シュート数、ドリブル突破数、ファール獲得数の全スタッツでユヴェントスが上回っています。枠内シュート数においても優れているにも関わらず、得点数は10も劣っている理由として、決定力がない(シュートパワー、コースの甘さなど)ことや遠距離からのタフショットが多いといった可能性が挙げられます。

この理由については、以降の数字からヒントを得られるかもしれません!


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次にゴール数の内訳です。合計ゴール数はユヴェントス:50、ラツィオ:60です。オープンプレーとPKでのゴールはそれぞれ3つラツィオが上回っていますが、それ以上に大きな差が生じているのは、カウンターからのゴール数です。ラツィオはボール奪取後の速攻で、相手の陣形が整う前に仕留めることに長けていることが分かります。

これはラツィオがシュート数に対し、多くのゴールを奪えている要因の1つと言えます!


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ショートパスの本数・ポゼッション率から、先ほど述べたようにユヴェントスがポゼッション重視の戦術を採用していることの証左となっています。

一方でクロスやスルーパス、ロングパスの本数に関しては互角と言えます。


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カードの枚数は、各項目においてラツィオの方が多いことが分かりますが、特筆すべき点は見つかりません。


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(引用:https://www.whoscored.com/)

上からユヴェントス、ラツィオのポジショナル・スタッツです。

Attack Sidesを見ると、左サイドからの攻撃の多さが目立つラツィオに対し、ユヴェントスは各レーンからバランスよく攻撃をしている印象を受けます。

またAction Zonesについては似通ったデータが出ています。両チームともに半分近くの時間を中盤でプレーしていることが分かりました。


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(引用:https://www.whoscored.com/)

最後になりますが、こちらも上からユヴェントス、ラツィオのシュート位置のスタッツです。

Shot Directionsの各サイドにおける比率は先ほどのAttack Sidesと似通っています。ただ、角度がある位置からの方がシュートを撃ちやすいため、中央レーンでのシュートの割合が多くなっていると思われます。

またShot Zonesでは両チームの違いが表れています。ラツィオよりもユヴェントスの方がペナルティエリア外からのシュートが多くなっていることが分かります。

この事実も、ユヴェントスがシュート本数の多さの割にゴールが決まっていない一因なのではないでしょうか。

おわり

最後までご覧いただきまして、ありがとうございました!

今回はかなり多くの観点からチームの特徴について考えていきましたが、これと合わせて各選手の個人スタッツを見ていくことでより深い考察ができるでしょう!

初のシリーズ記事となりましたが、いかがでしたでしょうか?

今後はスタッツを通してのチームや選手の紹介、他には各国におけるサッカー文化や各クラブの歴史について見ていこうと考えています!また、より基本的なスタッツの見方、アドバンスドスタッツ についても機会があれば紹介していきたいです。

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