栗瑛太

書いている事は全て嘘です。

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最近の記事

俺ミーム

 最近流行りの猫ミームに便乗して、"俺ミーム"という動画を作ろうと思った。youtubeにアップしてバズらせて、最終的にその収益で食っていきたいと思った。  思い立ってからは早かった。メシを食う俺、車を運転する俺、はしゃぐ俺、変なダンスを踊る俺、頭を抱えて苦悩する俺、凄い勢いでしゃべる俺、はぁ?と言う俺、説教をする俺、申し訳なさそうにする俺、etc…。動画素材には事欠かなかった。それらを組み合わせて一本の作品にしていく。  試行錯誤の果て、満足するものができた。動画のタイ

    • ホワイトルーム

      目が覚めると、見覚えのない部屋にいた。 そこは真っ白な床や壁で囲まれた12畳ほどの無機質な部屋で、自分が寝ていたシングルサイズのベッド以外に、物はなにもない。 不思議な事に窓や扉すらもなく、完全な密室のようだ。 「一体なんでこんな所に……」 思わず独り言を呟いた。 混乱した頭で状況を整理する。 えーっと。自分の名前は上原慎也。28歳。 仕事は……広告代理店の営業職。 家の住所は東京都北区豊島X丁目X-X メゾン・グランデ 302。 うん。パーソナルな情報はちゃんと思い出せ

      • 私はロボットではありません

        某国民的アニメのアイツに似ているねと、この世に生を受けてから言われ続けてきた。 いやいや、あちら側が先にデザインされただけであって、俺がアイツ・・・あー、もう言っちゃうか。・・・ド◯えもんに寄せている訳では決してない。 親の遺伝でたまたま顔の造形が近しくなってしまっただけで、こっちサイドからしたら良い迷惑だ。 親の顔?そんなの俺だって見てみたいよ。 両親は物心ついた時には居なかった。 育ての親は母方の祖母で、なんでも、親父とお袋は俺をばあちゃんに預けたまま、どこかへ消えて

        • ラブハンサム

          「ふむ・・・。可憐なレディに手をあげるとは、感心しないな」 「あ、あなたは!」 「ラブハンサム様!!!」 私、半澤三郎はアマチュア魔法少女界隈で、魔法少女達のヒーロー『怪盗ラブハンサム』として活動している。 あまりこの界隈には明るくないという人もいると思うので、アマチュア魔法少女界隈について簡単に説明させてほしい。 アマチュア魔法少女界隈とは、演者が怪人側と魔法少女側の勢力に分かれ、各々アドリブで演技をするという・・・要するに、ごっこ遊びの大人版を楽しむ界隈だ。(幼

          古時計

          定年を迎えてから、家でぼんやりと過ごすことが多くなった。 あれ程飲み屋で愚痴っていた仕事も、いざ「はい、これで終わり」と勝手に区切りを付けられると寂しいのは不思議なものだ。 退屈な平日の午後。 何気なくTVのワイドショーを眺めていると、大御所俳優の訃報を知らせるニュースが流れていた。 たしか、私と同年代ではなかったか。 気分の良いニュースではないため、チャンネルを変えようと机の上のリモコンに手を伸ばした瞬間、妻の声が聞こえてきた。 「──もう!一日中ゴロゴロしてばっかり

          俳句バー

          ブルーな気分の時は、いつもこの俳句バー「梅一輪」に足を運ぶ。 梅一輪は巣鴨のとげぬき地蔵近くの路地裏にひっそりと佇む、隠れ家のようなバーだ。 店のドアを開く。「おや、いらっしゃい」とダンディなマスターが快く迎えてくれる。 僕は軽く会釈をしてカウンターに座り、「いつもの」とオーダーをする。 「また女の子に振られたのかい?」 「ははっ・・・。マスターは何でもお見通しなんだから」 僕はこの店の雰囲気と、こんな若造でも友人のように他愛のない会話をしてくれるマスターの人柄の良さ

          俳句バー

          脱サラ奮闘記

          脱サラしてタピオカ屋を始めてから3ヶ月が経った。 「都会の喧騒から離れて田舎で暮らしたい」という思いから、開業場所にA県のS村という、人口が50人にも満たないような小さな村を選んだ事が失敗だった。 住人の大半が70代以上、最年少で60代という、タピオカ屋を利用する層からは大きくかけ離れた年齢層だった。 田舎の生活×タピオカ屋はとんでもなく相性が悪かったのだ。 そもそもタピオカには何にも思い入れがない。巷で流行っているから商材として選んだだけだ。 「インパクトが大事な

          脱サラ奮闘記