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第32回 言い訳と自己主張

著者 徳田孝一郎
イラストレーター 大橋啓子

【前書き】

 今回、投稿するエッセイは2014年6月19日に水戸市の「文化問屋みかど商会」のファクシミリ配信誌に掲載されたものです。時節にそぐわない内容はご容赦ください。COVID-19が収束して、来年2022のWorld Cup をNative English Speakerたちと一緒に愉しめるようになることを祈っています(著者)。

【本文】

 開幕から1週間たって、グループリーグの初戦がすべて終わりましたが、みなさんワールドカップを観ておられますか? さすがワールドカップ、国の誇りがかかっているだけに一流選手たちが全力でプレーする姿は見ていて面白いですねぇ。そこに戦術や作戦変更といった『知力』を振り絞った闘いもあって、見ていて二重に面白い。毎日本当にサッカー三昧です。
 え、『知力』? サッカーに知力が必要なの? と思われるかもしれませんが、サッカーはチェスに例えられるほど、戦術が面白いゲームなんです。

 今回のワールドカップではないんですが、以前イングランドのプレミアリーグの試合を見ていた時、すごいなぁと思ったことがあります。
 試合は、トットナムというチームとマンチェスター・ユナイテッド(以下ユナイテッド)。
 ユナイテッドは言わずと知れた強豪で、トットナムはそれよりもちょっと下のチームです。当然、試合はユナイテッド優勢に進む。しかも、ちゃんと作戦が立てられていて、ユナイテッドは守備力の低いトットナムの左サイドを執拗に攻撃して1点先行。そのあとも左サイドからいいパスが供給されて、何度も惜しいシュートがゴールに飛ぶ。
 あちゃぁ、今日のトットナムは何点、獲られるんだろう?
 と他人事ながら心配になる試合です。
 早く左サイドの選手を交代させないと、と思ってみていたのですが、
 トットナムの監督は違う手を打ってきた。
 攻撃的な選手を入れたんです。攻撃されているので、そこに守備力の高い選手を入れるというのがセオリーなのに、攻撃的な選手を入れるんです。
 なんじゃそりゃ!
 と思ったんですが、これが絶大な効果で、パタッとユナイテッドが攻められなくなってしまう。なんで? と思って観ていると攻撃的な選手が入ったおかげで、マンUの選手がその守備に回らなければならなくなって攻撃できなくなっている。
 なるほど、そう来るのかぁ。と感心した試合でした。
 こういう『知力』も見えてくるので、サッカーの試合は実は「日本人・日本語」と「外国人・外国語」の違いが見えてくることもあって、さらに面白く観ています。私にとってはネタを拾うことにもなりますしね。サッカーを観るのも仕事です(本当か? 編集部談)

 これはドイツのワールドカップの時の話なんですが、イタリア代表がレッドカードをもらって選手が一人少なくなったことがあります。残り40分以上一人少ない状況で闘うのは厳しいなぁと思って観ていたんですが、面白いことに選手たちは誰一人としてベンチを見ない。
 さっと集まって、自分たちでどうするかを決めてフォーメーションを変えてしまいました。
 ちょっと唖然。
 なにも監督が信頼できないってわけじゃないんですよ。イタリアの監督は名将の誉れ高いマルチェロ・リッピでしたし。
 ああ、これが非常時の強さだなぁ。
 と私は感心しきりでした。

 これを観て思い出したのは、Native English Speakerの非常時の対応です。
 私が前の会社に転職したばかりの時ですが、こんなことがありました。

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