子宮頸がんワクチン　イギリスでは

子宮頸がんという病気を耳にしたことはありますか？

性的接触によって子宮頸部に感染する癌です。
このウイルス感染の癌はワクチン接種で防げます。

イギリスでは12～13歳で1回目の予防接種、そしてしばらく後で追加接種を受けます。初めての性的接触の前にワクチンを接種することが効果的な
ため、この年齢なのだと思います。また副作用は特に問題視されておらず、学校での集団接種が基本となっています。

イギリスに住んでいたある日、娘が学校から手紙を持って帰ってきました。

「Consent Form 何の同意書だろう？」と調べたところ、

子宮頸がんCervical Cancerは性交渉によって
ヒトパピローマウイルスHuman papillomavirus (HPV)
というウイルスから感染する

とわかりました。

「そんな！ウイルス感染の癌だなんて！」と驚き、Consent Form 同意書と添付の小冊子の説明書きに目通しながら娘に聞くと「注射嫌いだけど、皆
受けるって言ってたし、私も受けるよ」とのことでした。

小冊子には、病気の概要から始まり、症状、原因、体のどの部分から感染するか、何をしたら感染するかなど具体的な説明もあり、12～13歳の子供に読ませるには少々早い気もしました。

以下、イギリス政府が学校から保護者向けに出すConsent Formのひな型を
参考のために引用して載せます。（gov.ukから）

Human papillomavirus (HPV) vaccination consent form
The HPV vaccine, that protects against cervical cancer, is being offered to your daughter or son at school. The leaflet that accompanies this form tells you and your child about the HPV vaccine.　To get the best protection, it is important that they receive both of the 2 injections. Please discuss this with your child, then complete this form and return it to the school before the vaccination is due to be given.

注釈：　vaccination 予防接種　vaccineワクチン　injection注射

このレター↑に書かれているように、娘が接種を受けた当時は女子だけでしたが、昨年から男子も同様に受けることに決まったそうです。

さて、予防接種当日、学校の廊下では娘のクラスの女子が列に並んで注射を待っていました。皆、例の同意書を手にぺちゃくちゃおしゃべりしながら
立っていたところ、ドクターがやって来て部屋の中で予防接種が始まりましたた。廊下からは部屋の中は見えません。

接種が終わった女子が次々と部屋から出て来たのを見て、娘は非常に驚いたそうです。「泣いてる子がこんなにいる！」何が起こったのかと、泣いている友人の肩を抱きながら聞いてみると、なんと「注射が痛かったから」とのこと。

12～13歳と言えば中学1年生。こんなにたくさん注射で泣く子がいるとは！なんと女子の半分以上が泣いていたことを娘から聞いた私も驚きました。
娘によると、注射はごくふつうの痛みだったそうです。
イギリス人は痛みに弱いのでしょうか。

そして、もっと驚いたことには、「注射が痛いから追加接種は受けない」と
数か月後の追加接種を受けなかった女子が2人いたそうです。

「なるほど、イギリスはほとんど無痛分娩だという理由はこういうことか」と妙に納得する話でした。

イギリスの新聞The Guardianザ・ガーディアンの記事（2020.1.22)によると、
このワクチン予防接種の展開により、イングランドではこのHPVウイルス
感染がほぼ消滅したと報道されています。予防接種率はだいたい84％と高い数字で学校での集団接種の効果が出て来たようです。

一方、日本では深刻な副作用のケースがあったため、子宮頸がんワクチンの接種は積極的に推奨されないという報道をいくつか目にしました。

日本産婦人科学会のHPには子宮頸がんに罹患する人は毎年約1万人、命を
落とす人が毎年約2800人と書かれています。

がんプラスのサイト（cancer.qlife.jp)では日本での予防接種率がたったの１％ということです。

予防接種しておけば防げる病気なので、何ともこの数字は残念に感じます。
ただ、重い副作用が出た人たちがいることも見過ごせない事実です。

イギリスのオックスフォード大学主催のVaccine Knowledge Projectの調査報告によると（vk.org.ox.ac.uk)、2009年~2018年の間、1千万人以上の若い女性に予防接種を行ったところ、発熱、接種部分のかゆみ、吐き気、頭痛など予防接種後によくある副作用は10人に1人、稀な副作用として蕁麻疹が1000人に1人、非常に稀な副作用で1万人に1人が呼吸困難に陥る可能性があると報告されています。

私は専門家ではないので強く発言できる立場ではありませんが、私自身、娘の接種時にConsent Form同意書と一緒にもらった冊子をくまなく読み、同意書にサインしました。それと学校での集団接種という形でしたので、ある種の安心感があったのだと思います。

みなさまはどのようにお考えですか？

日本とイギリスが使用するワクチンは違うのかもしれませんし、イギリスで自分の娘に副作用が出なかった（学校の女子も皆大丈夫だった）からと
言って、無責任におすすめできるものではないので、複雑な気持ちです。

今日も読んで下さり、ありがとうございました。

トモキリ