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イギリス生活 小学校で人種差別にあって親子で泣いた話


少し前に起きたBlack Lives Matterを見て,多くの人たちの心が痛くなったと思います。黒人の人たちの苦悩は私なんかには語れませんが、自分たちもイギリスで人種差別にあったことを思い出して苦しくなりました。

今思い出してもあの時の辛さがよみがえって悲しい気持ちになりますが、書いておきたい気持ちのほうが勝っているので書きます。よろしければ最後までお付き合いください。

わが家は子供が4歳と6歳の時、夫の転勤でイギリスの地方都市に引っ越しました。日系企業が当時いくつも進出して、日本人駐在員とその家族はかなりいました。地方都市なので日本人学校は無く、日本人の子供達はイギリス人と同じ現地校に通っていました。

うちの子供達も一クラス25人ぐらい規模の小さい学校に通っていました。

ある夕方、イヤー5(9歳)の息子が意気消沈している様子に気が付き、どうしたのか尋ねましたが「なんでもない」との返事でした。なんでもないわけないと、思いつつもその時はそれ以上聞きませんでした。

それでもずっと気になっていた私は夕食後にもう一度聞いてみたところ、息子は顔をゆがめて「僕だけパーティに呼ばれなかった」と席を立って、自分の部屋に行ってしまいました。誰かのパーティーに息子だけ招待されなかったことを知って、私も大きなショックを受けました。誰のパーティーなのか、とか他にも状況を聞きたかったものの、息子のショックを考えると何も聞けず、私は椅子に座ったままでいました。

わが家の子供達が通っている小学校では、小さい学年のころから誕生会はクラス全員招待する、という暗黙の習慣があります。誕生パーティーは、例えば、ボウリング、遊園地、乗馬、トランポリン、水泳など、親が全ておぜん立てをして催します。招待状も親が作って皆に配ります。パーティーは祖父母や親せきの人たちも参加する大掛かりな催しものになり、子供達みんなのお楽しみでもあります。息子はいつもみんなの誕生会に招待されていましたし、我が家も、いつもクラス全員招待していました。

それなのに、「なぜうちの子だけ招かれないの?」私は何と言って息子を慰めたらいいのかわかりませんでした。夫は出張中。どうしたらいいのか、涙だけが出てきました。

その時、仲良くしているママ友アンジェラから電話がかかってきました。「うちのマイケルがルーシーの誕生パーティーに呼ばれなかったって泣いてる」とのこと。マイケルの話によると呼ばれなかったのは、マイケルとうちの息子、そして、アニックの3人だそうです。


「わかりやすい」とすぐさま私は思いました。

日本人の息子、インド人のアニック、イギリス人だけど赤毛のマイケル。


アンジェラも同じように考えていたらしく、「これは差別よ」と涙声。

とにかく、明日放課後会いましょうと約束して電話を切りました。

息子は泣き疲れたのか、既に眠っていました。息子の寝顔を見ながら、私がしっかりしていなければと自分に言い聞かせていました。

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翌日、学校の帰りに、アンジェラ親子と一緒にうちの2人の子供を連れて、遊び場のついているファストフード店に行きました。アンジェラは「アニックのお母さんにも声をかけたけど、お店が始まる時間だから来れないと言ってたわ」と言いました。アニックの家はインドレストランを経営しています。アニックのお母さんは「どうせうちはインド人だから外されたんでしょ」と冷静な声でアンジェラに話したそうです。

今回招待されなかった3人を除けば、皆、白人イギリス人ばかり。

アンジェラは「こういうことがいつか起こるんじゃないかと思ってた」と言い、赤毛の人はいつも差別されているという話をしました。私からすると、同じ白人イギリス人なのにね、と思いますが、そういえば、昔、【赤毛のアン】という話があったことを思い出していました。


アンジェラも赤毛で、遠くで見ても近くで見ても美人です。その上、彼女は外科のお医者さんで、ご主人は何をしているのか聞きませんが、とてもお金持ちだということは、大きな家や庭を見ればわかります。「こんなに恵まれているように見える人も悩むんだなあ」と近くに停めたアンジェラのスポーツカーを見ながら、へんてこな考えが一瞬浮かびましたが、子を思う母親の気持ちは世界共通です。

アンジェラは、「私ね、マイケルが生まれる時、神様どうか生まれてくる子は赤毛ではありませんように、って祈りながら出産したの」「だから生まれてきたマイケルの髪が赤毛だったから悲しく、責任を感じたというか、重苦しい思いだった」と話してくれました。「いつかこの子は差別されて悲しむんだろうと思ったの。」

私は気のきいた返事もできずに、差別ってこんな身近なものなんだと実感していました。

そして、アンジェラから聞いて、さらに驚いたことには、ルーシーは、てっきり名前からしてイギリス人だと思っていたのですが、何と、オリエンタルのとある国出身だったのです。両親ともオリエンタルなら日本人と変わらないではありませんか!

結局、アンジェラと私はパーティー当日、外された3人とうちの下の子を
遊園地に連れて行き一日中遊ばせました。子供達はパーティーのことを少し引きずっていましたが、楽しいデイアウトになりました。アニックのお母さんはお店があって来れず、お礼にカレーをたくさんくれました。「そういう差別なんてしょっちゅうあるから気にしてたら老け込むわよ」と豪快に笑い飛ばしていました。


実は、マイケルは最後の最後までルーシーにパーティーに行きたいと交渉していたらしいのですが、「お母さんが決めたことだから変更できない」と断られたそうです。

息子はしばらくイヤな気持ちを引きずっていましたが、他のイギリス人の友達が気を使ってくれたのかわかりませんが、「そんなに楽しいパーティーじゃなかったよ」とか「退屈だった」などと言ってくれたそうです。


ルーシーや彼女のお母さんが何故3人を外したのか、それを差別だと断定はできませんが、どうしてもあれは差別だったと今も思ってしまいます。


読んでくださり、ありがとうございました。


トモキリ













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