見出し画像

大学生に読んでほしい本を挙げるならば

一年に一回、「先生のイチオシ本」という大学図書館の企画があります。数年前に依頼されて駄文を書いてから、なんとなく毎年寄稿するようになりました。この一年、どんな本を読んできたかという、私自身の読書の振り返りにもなるんですよ。

他の先生方は学術書とか古典を挙げられるのですが、私は「これはホントに面白かった」という小説を毎回挙げています。学生から「あれ、読みました。面白かった!」と声をかけられることも稀にあって、そういうレスポンスがあると「よっしゃ」と思いますね。

で、今回何を挙げるか、めちゃくちゃ悩んでおります。

ここ数か月内に学生と「社会人と学生との違いは何か」という議論を何度かしたのですよ。それがなんとなく気になっていて、次に挙げるのは「仕事」とか「働く」ということを意識できるような本がいいかなあと思ったんですよね。

もちろんそういった「自己啓発本」は山のようにあるのですが、私自身が読みながら「働くってこういうことよね」とか「仕事についてこういう考え方もあるのか」と思わされたのは圧倒的に小説のほうが多い。というわけで、以前に読んで仕事に関して考えさせられた小説を再読しました。その名も「君たちに明日はない」。

タイトルから想像できるように、リストラがテーマ。仕事も始めていない学生にいきなりリストラの話か、と言われそうですが、読んでいるとつくづく、人には向き不向きがあるというか、適材適所というものがあるんだなというのがよくわかります。実は「不向き」なのに本人が気づいていない場合、本人も仕事が楽しくないし、周りもツライ。リストラというとなんとなくダークな、ネガティブな感じもしますけど、その結果「向いている」場所に行くことで、花開くこともあるわけですよね。「置かれた場所で咲きなさい」という言葉も真実ではありますが、「天職」という言葉もある通り、それぞれの人に適したところというのがあるのでしょう。

「会社に入ったら与えられたところで一生懸命頑張る」という受け身の考え方をする学生がほとんどなので、自分の向き・不向きも意識してほしいなと思ったわけです。

とはいえこの本、初版が2005年なんですよね。つまり今から20年近く前。面白さは変わらないのですが、時代の変化のせいで今読むと微妙な「ずれ」が気になります。登場人物の言動で「あー、そこに固執するんだな」とか「そっちを選択しちゃうんだ!?」とか、読みながら読者は共感したり驚いたりするのですけど、登場人物の意識の根底の部分が今の学生にはわからないので、結果的に共感とか驚きが少ないかもしれないなあと不安になりました。

あとは、まあ、お決まりのエロシーンなんかもあるので(笑)、先生が勧めちゃっていいのかな、という迷いも生じております。むむむ…。