「母の味、だいたい伝授」を読んで
阿川佐和子氏のエッセイ集。エッセイの名手として知られるだけあって、どの話にもクスリとし、時にはホロリとし。激情型の御父上の話はこれまでのエッセイにもたびたび登場していたものの、まさか生前最後に発した言葉が「まずい」とは・・・!
小さいころから鍛えられていただけあって、料理レパートリーも豊富で料理スキルもあるのに、いかんせん(売れっ子だけあって)時間がない。そんな中でも食べたいものを食べようと四苦八苦しているのが何とも鬼気迫る。ご結婚されて「同居人」が出来たことで、食事リズムが変わるしいろいろ勝手が狂う・・・と文面ではぼやいているものの行間からはノロケが漂う(笑)。
亡くなったお母様のレパートリーを再現しようとあれこれ画策する場面がいくつか出てくるのですが、笑い話にしているものの、やはり切なさが胸にしみますね。私も母が元気なうちに、いろいろと聞いておかなくては、と思いました。