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新規事業やイノベーションを意図的に起こす。eiiconが灯す日本企業復活の光明

2015年にeiicon事業を起案してから、およそ6年。現在では、登録社数2万社を超えるオープンイノベーションプラットフォーム「AUBA」を中心とした事業を展開し、約50名のメンバーで構成されるeiicon company。市場に対してどのような価値を提供し、他サービスとの差別化ポイントはどこにあるのか。そして、どのような組織を目指していくのか。――eiicon company 代表/founderである中村に話を聞きました。

eiicon company 代表/founder 中村亜由子
2015年「eiicon」事業を起案・推進。現在は全国各地の20,000社を超える様々な法人が登録し、日本最大級の企業検索・マッチングプラットフォームとなった「AUBA」を運営するeiicon company の代表を務める。年間60本以上のイベントにおいて講演・モデレートなども務め、多くのアクセラレータープログラムのメンター・審査員等幅広く活動している。 副業マッチングサービス「lotsful」 共同創業者。 著書 「オープンイノベーション成功の法則」(クロスメディア・パブリッシング 2019) 特許庁でのオープンイノベーション促進契約ガイドライン策定委員に3年連続で就任。(2019/9~) 情報経営イノベーション専門職大学 情報経営イノベーション学部 客員教員就任。(2020/4~)

■日本経済や企業の未来のために、オープンイノベーションは必要な手法

――2015年にオープンイノベーションの事業を起案されてからeiicon companyを立ち上げ、実に6年以上の月日が経ちました。中村さんは、この期間の日本の経済状況や国内のイノベーションを取り巻く市場環境について、どのように見られているのでしょうか?まず、その点についてお聞かせください。

日本は残念ながら、イノベーション後進国となっています。2019年のOECDデータに基づく日本の労働生産性は、加盟37カ国中21位と低い状態です。世界の時価総額ランキングでも、日本企業のトップはトヨタさんで49位。日本企業は総じて苦戦を強いられています。さらに、日本人の平均収入も1990年代から変わっていないという驚くべきデータもあります。

コロナ禍以前に多くの外国人観光客が日本にやってきていたのは、物価が安いからというのは大きな理由でした。その昔、日本人が物価の安い東南アジアに遊びに行っていた現象が、私たちの国でも起こり始めているのです。

国際競争の中で停滞している日本ではありますが、生活インフラが十分に整っていたりと危機感を抱きにくい状況にあると言えるでしょう。日本企業が生き残っていくためにも、新規事業に取り組むべきではありますが、難易度は決して低くはありません。イノベーション後進国を脱却し、新規事業やイノベーションを実現させるために、オープンイノベーションという手法がこれからも注目されていくと思います。

――日本企業が新規事業やイノベーションに挑戦する際に、オープンイノベーションがカギになると。

そうですね。スタートアップはもちろんのこと、コンサル企業や監査法人もオープンイノベーション支援に乗り出しています。また、企業のイノベーション創出のための予算も増えており、様々な企業からオープンイノベーションが注目を集めるようになりました、しかし、そうした状況は至極当然な時代の流れにも関わらず、企業内の価値観の変容が追い付いていない、外部へ依頼する感覚がアップデートできていないように感じています。
新規事業領域、イノベーション創出部門の方には、「新規事業やイノベーションと真正面から向き合う」時期が来ていることを時代の潮流から捉えてほしいと思っていますし、
「新規事業やイノベーションは、意図的に起こすことができる」という部分は、もっと伝えていきたいと考えています。
私たちeiiconでは、オープンイノベーションという手法を用いることによって、新規事業やイノベーションを意図的に起こすことができる仕組みを可視化し、その知見やノウハウを企業に提供していくことを目指しています。

今までは、「新規事業やイノベーションは属人化されたもの」という、思い込みがありました。そういった考えを覆し、サービスを提供していきたいと思います。

――「イノベーションや新規事業は属人化されたもの」という先入観や思い込みがあると思いますが、それをeiiconが払拭していくというわけですね。

分からないことがあると、考えるのをやめてしまうヒトや企業が多いと今までお会いしてきた企業さんとのコミュニケーションから感じています。これまでの日本の教育、そしてビジネスに至るまで、すべて「答えがある世界」で、そうした環境下で評価されてきた人の弱い部分というのでしょうか。
インフラも整った安心できる環境の中で、頑張れば正解にたどり着ける世界観・価値観で生きてきた。
その結果、自分が分かる範囲では頑張ることができる一方、目指すべきゴールやアウトプットの方法が分からなくなると、途端に力を発揮できなくなってしまうビジネスパーソンが多いと思います。つまり、イノベーションは、従来型の学習をしたからといって起こせるものではないのです。

カーボンニュートラルを例に挙げると、CO2削減に向けて逆算で考えた時に、自社のリソースで実現が難しいのであれば、他社のリソースを積極的に使うべきなのです。イノベーションを起こすためには、ビジネスという「実戦」が必要です。自社だけではどうにもならないのであれば、オープンイノベーションという合理的な方法で課題を解決し、事業を形にするという選択肢もあるのです。

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■オープンイノベーションの仕組みを“可視化”する

――eiiconでは、今まで多くの企業のオープンイノベーション支援を手がけてきました。その中で変化を遂げた印象的な企業はありますか?

大手インフラ企業のオープンイノベーション支援を行った時のことなのですが、担当者が外注に任せることに慣れきった方でした。「予算を渡すから、あとはお任せします」といったスタンスだったのです。

しかし、eiiconでは自分ごと化を重要視しています。答えがないものだからこそ、企業の担当者も含めて全員が考えて自分ごと化する。そうした姿勢を担当者の方に理解してもらってからは、取り組み方がどんどん変わっていきました。共創パートナーも自ら探して、自走できるまでになったのです。支援を始めておよそ1年半で大企業担当者のスタンスや仕事の進め方を変革できたのは、私たちにとっても大きな収穫になりました。

――今お話しいただいたような事例もあり、大企業からスタートアップまで多くのビジネスパーソンが注目するプラットフォームへと、eiiconは進化していると思います。一方で、eiiconと同じようにオープンイノベーション支援事業を手がける企業もありますが、「競合他社の差別化」についてはどのように考えていますか?

競合他社では、支援業務が属人的になっていることが珍しくありません。支援が属人化してしまうとそれは時代には逆行する部分もある。人が必要になり、有識者が必要になり、人件費が高い市場でもあるので金銭的な負荷も大きくなる場合も多く、アナログの支援には継続や拡張・持続が難しいケースも出てくるでしょう。
eiiconはプラットフォームに注力をしながら、どんな企業でもオープンイノベーションを実現できるように取り組んでいます。さらに適正な価格で進められるように、知見やノウハウもブラックボックス化しないようにしています。

イノベーションとは物事が動いている状態で、物事を前に進めるには当事者が動かないといけません。それは、学習だけでカバーできず、アクションを起こすことが必要です。その動きを仕組みとして可視化し、ノウハウを共有していく。それらを積み上げることで、オープンイノベーションはイノベーションを起こす有効な手法となるのです。

――eiiconではなぜオープンイノベーションの仕組みを可視化しようとしているのでしょうか。

私たちの出自であるパーソルキャリアが、中途採用領域をメインとした人材サービス事業を手がけているという部分が大きく関わっています。終身雇用が当たり前の頃には、中途採用が浸透していませんでした。「本当に中途採用でいい人がくるの?」という時代があったんですね。

それが今では、中途採用は当たり前になり、各求人の詳細情報は転職サイトなどの様々なプラットフォームで可視化されています。オープンイノベーションも中途採用と同じように当たり前なものにしていくためにも、仕組みを可視化することは重要だと考えています。

■6つのコアバリューを定め、強い組織へ

――イノベーションを起こすためには、仕組み作りも重要だということですね。

イノベーションという卵が孵化するまでは、仕組みと体制で守りながら温めなければなりません。そうした仕組み・体制を構築さえすれば、卵が孵化する=イノベーションが起こるという状態を作り上げることが可能です。

このような方法論を実践していくことで、時価総額世界トップクラスの企業は作れないかもしれませんが、売上高100億円程度のビジネスは生み出せると信じています。0→1から生まれたスタートアップにおいて、3億円、5億円規模の上場は珍しくありません。しかし、大企業におけるイノベーションが「一桁億円規模でいいのか?」という疑問があります。大企業でも数十億円規模の新規事業が難しいのであれば、社外のリソースを活用するオープンイノベーションによって、今までの殻を破っていくべきなのです。

――そういった世界観を浸透させていくためには、新しい文化を作り出すことも大切ですね。eiiconでは「価値ある出会いが未来を創る」というビジョンを掲げていて、オープンイノベーションを浸透させる文化づくりも重要なミッションだと思います。現状の手応えはいかがですか?

2018年にはeiiconはすでに1億円程度の売り上げがありましたが、オープンイノベーションの仕組みの可視化には着手できていない状態でした。当時のeiiconは、売り上げを作ることに多くのリソースを割いていて余裕がなく、今私が倒れたら全部ダメになるという、属人化的な組織から脱却できていなかったのです。

それが今では、私が少しの間休んだとしても、一定期間は持ちこたえる素地ができてきました。とは言いつつも、オープンイノベーションをさらに加速させていくような、新しい文化までは作れていませんので、まだまだ道半ばですね。

オープンイノベーションをより浸透させていくためには、AUBAの月間ログイン1万社は必要だと考えています。現在は登録数2万社で、月間ログイン社者数は3000社程度。将来的には登録社数を10万社には伸ばしていきたいですね。まだまだ伸びしろがあるマーケットなので、新しいメンバーを増やしながら、組織を強くすれば実現できる数字です。

――それでは最後に、eiiconの組織づくりについて話を聞かせてください。eiiconでは、どのようなカルチャーの組織を構築していきたいとお考えでしょうか?

メンバーがどんどん増えてきましたので、ボードメンバーの思いだけでなく、今頑張っている人たちが大切にしていることを可視化すれば、目指すべきカルチャーに繋がるはすです。そうした考えのもとで、「ジブンゴトマインド」、「成長マインド」、「創造マインド」、「オープンマインド」、「共創マインド」、「パーソナルマインド」という6つのコアバリューを定めました。(以下図参照)

例えば、「オープンマインド」は、人に対して誠実でいることを示しています。私たちの組織に馴染んでいるメンバーは、誠実な人がとても多いんですよね。「パーソナルマインド」に関しては、一人ひとりがエンジンとなり、だれかが着火すればみんなが頑張る組織を目指して定めました。この他にも、企業に寄り添いながらも、一歩先の世界を見せるといった「創造マインド」などもあります。この6つのコアバリューに関しては、作ってみてかなり納得感がありますね。こうして、私たちならではの想いも可視化することで、eiiconらしいカルチャーを作り上げていきたいと考えています。

コアバリュー

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