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留学・心理的サバイバル術(4)英語力以外の問題もこれで解決

この記事は
留学・心理的サバイバル術(1)日本人留学生を取り巻く「神話」
留学・心理的サバイバル術(2)教室で発言できないのは万国共通
留学・心理的サバイバル術(3)英語力の問題はこれで解決
の続きです。

前回の記事では「英語力に対する不安」が原因で教室内で思うように発言できない場合の、超具体的かつ実践的な対処法をご紹介しました。

いよいよ今回は英語力以外の要因についてお話ししましょう。実はこちらのほうがちょっぴり厄介です。

まずは、どんな要因があるのかを確認しましょう。私が以前の記事で挙げたもののうち、今日取り上げるのは次の4つです。

D.「大人数の前で自分の意見を言ったり、先生に質問することなど、日本語でもやったことがほとんどない(⇒教室内コミュニケーションの問題)」

E.「ネイティブ講師が期待している質問や意見がどんなものか、想像ができない(⇒異文化コミュニケーションの問題

F.「帰国子女など、英語が上手なクラスメートの前でみっともないところを見せたくない(⇒教室内レベル格差の問題)」

G.「講師の態度や教室内の雰囲気などが友好的ではないので、挑戦することが怖い(⇒心理的安全性の問題)」

これらの要因に対して自分が該当するかどうか、まずは自己分析しましょう。(該当しない)⇒(少し該当する)⇒(かなり該当する)⇒(100%該当する)の4段階評価です。

上記の4項目の中に、レベル(かなり該当する)と レベル(100%該当する)にあてはまるものがあった方、ここで一緒に解決しますよ!

【D~G の要因=つまり、場に不安を感じる】

分析の結果、英語力そのものよりも、教室という場に対する不安が強いんじゃないかと気付いた皆さん。私もそうでした。初めての環境でどう振舞うべきなのかわからずにとまどい、とまどっているだけなのに「Don't be shy!」とか言われて焦り、焦ると余計に言葉が出てこなくて、舌も縮こまって上手くしゃべれない。

あなたにもそんな覚えがあるのなら、ドン・ウォーリー。明日から使える具体的なサバイバル術をご紹介します:

人前で話すことがそもそも苦手なら

コミュニケーションって、そもそもオーラル(口頭)だけではなく、読み書きという手段もあるんですよね。さらには、イラストだって、歌だって、ダンスだってコミュニケーション。だけど、多くの教室はオーラルコミュニケーションばかりを要求するんですよね。

なので、日本語でも教室内オーラルコミュニケーションが苦手な方は、その旨を講師に伝えたほうがいいでしょう。お勧めは手紙作戦です。

「私は、言葉を即座に出すのが母国語でも苦手なので、教室では急に質問されても発言することは難しいと思います。ただ、できるだけ発言したいとは思っているので、できれば事前に質問事項を1つだけでも教えてください。準備をして答えられるようにしたいと思います」といった内容を、講師にあらかじめ伝えておけば、必要な配慮をしてくれるはずです。配慮してくれないトンデモ講師がいたら、別の講師に相談しましょう。

大勢の、自分よりもできる生徒の前では緊張するなら

教室で威勢よく発言する学生の多くは「できる学生」です。彼らはそれをある程度は自覚していて、結構自信を持っているはずです。彼らと同じような言動を、「そこまで自信のない学生」に強いるのは酷ってもんです。この事実に講師はもっと注目し、配慮すべきだと私は心から思います。自戒の念を込めて。

・・と言っていても始まらないので、どうすればいいか。

お勧めしたいのは「キラーフレーズ」の活用です。次の2文を比べてみてください:

(A) I don't know. 
 わかりません。
(B) It's hard to tell, because it depends on the situation.
 それは難しいですね、状況次第ですから。

言い換えるとどちらも「知らないよ、そんなの」と言ってるんですが、(B)のほうがちょっと深淵な回答に聞こえませんか?

さらに、最後の  situation を person に変えれば「その人次第」、companyなら「会社次第」とアレンジも可能。

このような汎用性のある決まり文句を覚えてしまえば、それを言っている間に考えをまとめることもできますし、まとまらなかったら、決まり文句だけでとりあえず発言を終えることもできます。

ほかにも、時間稼ぎに使える定番表現を書いておきますね:

I've been wondering about that, too.
 私もその件についてはどうなんだろうと思ってたんです。

It seems to me that there are many reasons for that .
 それについてはたくさんの理由があるように思えます。

I haven't given much thought to this before, so I need some time to form my opinion.
 この件についてあまり考えたことがなかったので、自分の意見をまとめるのには少し時間がかかります。

もちろん、これだけを繰り返していると「あ、いつもの定番フレーズじゃん」とバレるので、できる範囲でこの後に自分の言葉を足すといいですよ。しょーもない意見でも、短い意見でもOK。前半がしっかりした英文だと全体的にいい感じに聞こえます。

講師やクラスメートの雰囲気になじめないなら

相性の悪い講師やクラスメートが牛耳っている教室。そんなアウェイな環境では、無理にリスクをとる必要はありません。ここまでに紹介したサバイバル術のうち使えそうなものだけ使って、あとは何を言われても気にせず、観客として情報収集に徹しましょう。黙って話を聞いているだけでも、私たちは多くを学びます。発言しない=学びがない、なんてことはない。発言しなくても頭の中でいろいろ考えていますから。

もしその場所にいるのがガマンできないなら、思い切ってクラスを変えましょう(可能であれば)。私も何度か経験があります。講師の態度が不快だったケース、講師の英語のクセが強くて聞き取りにくかったケース、授業の進め方が私の好みではなかったケースなどで、クラス変更の手続きを取りました。「講師がイヤだから」なんて言わず、スマートに、別の理由を付けてね。大丈夫、あなたが過ごしやすい場は絶対に見つかります!

あなたが発言しないのは、日本人だからではない

このシリーズ記事を最後まで読んでくださったあなたに、改めてお伝えしたいことがあります。

アメリカでこんな研究がありました。女子大学生を2つのグループに分けて数学のテストを受けさせるのですが、片方のグループにだけ、テスト前に「これは、男子のほうが数学が得意な理由を探るためのテストだ」と伝えます。つまり、間接的に「女子は数学が苦手だ」というネガティブなステレオタイプを吹き込むわけです。

すると、そのグループの学生のテストの結果が10%ほど下がってしまったのです。この論文によると、そのような結果になった理由の1つとして考えられるのは、受験中、ステレオタイプのことが気になって、集中力や記憶力が減退したためだというのです。

これは、日本人英語学習者にとっても、非常に興味深い研究結果です。多くの学習者は「日本人は完璧主義で恥を恐れるから(しゃべれるくせに)しゃべらない」「日本人は自分の意見がないから(しゃべれるくせに)しゃべらない」といった、根拠のないネガティブな固定観念に日常的にさらされています。すると、「そんなことはない、私はシャイじゃない。それを証明するためにも、がんばって話さないと!」と気合いを入れすぎたり、「そうか、やっぱり私は日本人だから話せないんだ」と自信をなくしてしまったり。その結果、リラックスしているときよりも言葉が出てこなくなる。私はそんなふうになっているのだと思っています。

「でも実際、スペイン人のほうが、インド人のほうが、マレーシア人のほうが、私より話せるし!」と思う方も多いと思いますが、それは国民性というよりも、過去の学習経験(教室での発言頻度や、英語で話す経験)、母語と英語の類似性(文法や語彙)などによるところが大きいはずです。

私たちは「日本人だから」話せないのではなく、一人一人異なる「話せない理由」があって、結果、話せないだけです。なので、自分に合った解決策を講じれば、ちゃんと克服できるのです。私がそうでしたから。

「Don't be shy.」と繰り返す講師やクラスメートには、クールに、こう言ってやりましょう。

I'm NOT shy. I'm NOT afraid of making mistakes.
I'm just trying to familiarize myself with this new environment.
Don't worry about me.

 私はシャイじゃない。ミスを恐れているのでもない。
 この新しい環境に慣れようとしているだけ。
 私のことは心配しないで。

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