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エロチックな記事は、PVは稼げるが“読者離れ”を加速させるのか? 対処法は“回遊導線の強化” 映画.comニュースPVプレイバック/2021年2月4週

 こんにちは。映画.com編集部の尾崎です。

 毎週火曜日は、編集部員がチャットでニュースPVを振り返っていますが、今週はちょっと趣を変えて僕1人で。

 PVの傾向や推移を分析するなかで、得た気づきなどを交えて振り返っていきます。(ちなみに、今回のトップ記事5本で僕が書いたものはひとつもない。「どのツラ下げて偉そうなこと言ってんだ」と怒らないでほしい)

 なお、この“ニュースPVプレイバック”は、映画.comを含むWEBメディアや映画業界人にだけでなく、業界外の人にも“何らかの役に立つ”ような、そんな記事を目指しています。

 それではいきましょう、映画.com本体のニュース記事における、2月15~21日のニュースPVプレイバックです。

5位:放送映画批評家協会賞映画部門は「Mank マンク」が最多12ノミネート Netflixが作品賞で快挙達成

 平均PVの1.4倍。放送映画批評家協会賞は、ここでの結果が“アカデミー賞の結果”を占うとされる重要な前しょう戦。「どの作品がどれだけの賞を取るのか」は、映画業界人や、賞レースを追いかける映画ファンにとっては非常に重要な情報なので、その意味で価値の高い記事と言える。

 ちなみにNetflixオリジナル作品「Mank マンク」が最多ノミネートとなり、今年はゴールデングローブ賞などでもNetflixの快進撃が際立っている。2~3年前のハリウッドでは「配信系作品に賞は与えない」と徹底的に敵視されていたことを考えると、配信系と既存の映画界、両者の勢いの違いというか、明暗みたいなものがはっきりとわかる。

4位:「きかんしゃトーマス」最新作 日本から来た超特急のケンジの秘密を解明する特別映像公開

 平均の1.7倍。そのビジュアルから、ネットで騒然となった“最速のケンジ”の秘密に迫る映像を紹介した記事だ。こいつがなんなのか、疑問に答えるような内容だったので成果が高かった。記事の本質は読者の疑問・課題の解決である。

 このケンジのビジュアルを前にすると、何らかの説明を加えることは野暮に思える。新幹線の先っぽに顔がぽつんとついてるの、シュールすぎるだろ。「ずるいな(面白すぎて)」という感想が頭に浮かんだ。どうやら、劇中ではトーマスもケンジの存在感にビビるらしい。そんなことあるんだ。

3位:松本潤×香川照之「99.9 刑事専門弁護士」映画化! 新ヒロイン登場を示唆

 平均の2.1倍。映画化決定の第一報、いわゆる“一報出し”の記事は、どの映画でも高い成果を上げる。ほとんどの作品で一報出しがPVのピークとなるため、宣伝サイドはどんなタイミングで、どこまでの情報を明らかにするのかに細心の注意をはらっている。

 今回の「99.9」では、ヒロインの存在を“隠した”。本作はドラマシーズン1&2でヒロインが変わっているので、それをうまく宣伝に利用した形。「誰がヒロインに?」という仕掛けが、読者が記事をクリックする要因として巧みに効果を発揮していた。

 さらに、松本潤にとって「嵐」活動休止後、俳優として初仕事であることや、主演映画としては「ナラタージュ」以来4年ぶりとなるなど、ファンにとって嬉しい事実も多い。情報開示がここまでデザインされていることを考えれば、高い成果は必然だったと言える。

2位:「鬼滅の刃」TVアニメ第2期「遊郭編」21年放送決定 宇髄天元を映した第1弾PV公開

 平均の4.9倍。コロナ禍の日本経済を下支えしていた感すらある「鬼滅の刃」のネタの人気度は、一旦落ち着いたように思っていたが、この結果を見ると“まだまだ強い”らしい。特にTVアニメ2期は長いこと待望されていたし、ファンの飢餓感が蓄積されているのが肌で感じられるくらいだったので、このニュースは多くの人を歓喜させたことだろう。

 書いた記事が誰かに喜ばれる、それって記者冥利に尽きるよね。ただ、一方でSNSでは、舞台となる「遊郭」をめぐって議論が噴出。本放送の際にこの火種がどうなるか、それはそれで注視すべきトピックとなった。

1位:LAポルノ界の女性をリアルに描く新作「Pleasure」をA24が獲得

 平均の約24倍。これは編集部の多くが、掲載した瞬間にトップPVを確信するような破壊的なネタだった。ちなみに各配信先、特にYahoo!ニュースではかなりの数字が出た。ネタを引っ張ってきた編集者に拍手を送りたい。

 ここまでのPVを叩き出した理由はめちゃめちゃシンプル。見出しと画像が、性的欲求を刺激するものだったからだ。しかも直接的にではなく、どちらかというと控えめに。想像を掻き立てるというのはいつだって重要だ。

 一方で、本件は映画としての興味も掻き立てられる。「ミッドサマー」などのスタジオ「A24」が関わるという点も、映画ファンにとってポイントが高い。そしてただのエロティックな映画ではなく、ポルノビジネスで女性たちが経験する差別的な扱いをリアルに描く点は、特筆に値する。

 見出しと画像の“掛け合わせの強さと精度”が、その記事がどこまで遠くまで行けるかの“飛距離”を決める。それはクラブの質とインパクトの強さと精度によってボールの飛距離が決まるゴルフによく似ている。ゴルフをやったことがないので知らんけど。ともあれ、本件はかなり上手く噛み合ったケースだと言える。

 ここからが本題だ。しかしながら、この手のエロチックな記事はPVは稼げるが、読者1人あたりの滞在時間が短い傾向にある。クリックはするものの、見出しと画像をチラ見したあと、記事内容は流し見or一切見ないで離脱していく。心当たりがある読者も多いだろう。

 こうした記事は一般的に、読者の満足度が低くなりがちで、質の高い情報を求める読者が離れていく危険もある、と言われている。効き目は強いが、長くは持続しないエナジードリンクのようなもので、飲み続ければやがて体は蝕まれていく。

 しかし戦略的に“役割”を与えれば、読者離れを抑え、むしろ新規ファン獲得を見込める記事へと様変わりするから面白い。どういうことかというと、多くの読者を呼び込める記事を“入口”にする。次いで、その記事内の回遊導線を強化(魅力的なリンクを適切な位置に張るなど)し、別の記事へと“誘導”するよう設計するのだ。

 誘導先の記事を読んでもらえれば、その読者はリード顧客と呼べるくらいの存在になる。要は、この記事を全体の記事戦略のどこに位置づけ、どんな効果を及ぼすように設計するかが重要、ということだ。

 今回はYahoo!ニュースでのリンク設計(映画.com本体の別記事への適切なリンクを貼った)がうまくいっていた。配信先から本体への流入が非常に多く発生していたので、ゴージャスで魅力的な入口としてしっかり機能していたと言える。

 ……とまあ、この件だけで記事1本書いたくらいのボリュームになったが、これはWEBメディア運営、コンテンツ・マーケティングにおける基本でもある。一方で、編集部が1日あたり数十本の記事を制作するなかで、ひとつひとつのリンク設計や細部をどこまでデザインできるかはまた別問題。細部に神を宿す試みを“当たり前”にできるかどうか、それがまさに永遠のテーマである。


順位まとめ 1~10位

1位:LAポルノ界の女性をリアルに描く新作「Pleasure」をA24が獲得

2位:「鬼滅の刃」TVアニメ第2期「遊郭編」21年放送決定 宇髄天元を映した第1弾PV公開

3位:松本潤×香川照之「99.9 刑事専門弁護士」映画化! 新ヒロイン登場を示唆

4位:「きかんしゃトーマス」最新作 日本から来た超特急のケンジの秘密を解明する特別映像公開

5位:放送映画批評家協会賞映画部門は「Mank マンク」が最多12ノミネート Netflixが作品賞で快挙達成

6位:「キングダム」第3シリーズ、4月4日に第1話から放送再開 激闘とらえた新ビジュアル完成

7位:トム・クルーズ主演「ミッション:インポッシブル」第7&8作の連続撮影を断念

8位:サンドラ・ブロック、伊坂幸太郎原作&ブラッド・ピット主演「マリアビートル」映画化に参加

9位:「ゴブリンスレイヤー」第2期製作決定

10位:BTS×back number! 坂口健太郎「劇場版シグナル」主題歌でコラボレーションが実現


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