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キャリア・チェンジ

23年間、私は看護師として病院、クリニック、訪問看護ステーションで働いた。そのキャリアのほとんどが精神科だった。そして45歳で看護師ではない異業種にキャリアチェンジした。

転職のきっかけはうつになったから。そしてうつになった理由は看護師、管理者として自分が背負える限界を遥かに超えた責任を背負ってしまっていたから。そう振り返っている。休職中、妻に転職を勧められた。妻が私の仕事について意見を言うことはそれまでほとんどなかった。しかし、いつも元気だけが取り柄の私が沈没している姿を見て、とても心配したのだろう。一番近くで支えてくれている人の意見は重要だ。それも踏まえいろいろと考えた結果、期限を決めて転職活動してみることにした。幸いなことに職場に私がいなくても次の世代がみんなで協力して代わりを立派に果たしてくれていた。だから人生の折り返し地点、現職場を含めた今後のキャリアの選択肢を増やすのは悪くない。そう思った。

転職には2つの軸があった。正確に言うと途中から2軸になった。理由は医療系企業のバックオフィスや新規事業プロジェクトなどに応募するとどうしても「訪問看護の新規事業開拓をしてみませんか」とか「訪問看護ステーションのブロックマネージャーどうですか」という流れになる。私の職歴だと、この流れは必然だよな、と途中からそう思った。だから「異業種へのキャリアチェンジ」と「看護師の延長線上のキャリアチェンジ」の2軸で転職活動が展開されていった。

まず医療ベンチャー系企業はwantediyで2社内定をもらった。wantediyはビジネスSNSと呼ばれる求人情報サイトで求職者が課金することにより採用担当者にチャットでダイレクトにアピールができる。私みたいな自分をぐいぐいとアピールしたい求職者にとってはとても相性が良かった。これ考えた人天才だな、と思った。一方で面接に行くと「へ?wantediyで応募してきたの?出してみるもんだね」という反応だった。採用担当側からすると、主体的に転職活動しているアクティブな人材をみつけられるが、一方でミスマッチ(求職者のスキルが採用側の求めるそれと解離している)も多いらしい。

さて、一方の主軸、異業種への転職活動について。まず、ミドルの転職に登録。すると人材紹介会社ワークポートから「うち使って転職しませんか?」スカウトメールが届いた。大崎のオフィスにお伺いして担当の転職コンシェルジュと面談。異業種への転職であればあなたの経歴なら「営業」「マネジメント」を前面に押し出せばいけると思います。コンシェルジュはそう言った。そして履歴書をそのように書き直した。その面談の時にコンシェルジュが見せてくれた数十の求人票の中で最も目を引き面白そうだなと直感した企業で内定をもらった。求人内容は「医療介護施設に外国人介護士をマッチングする人材紹介会社です。上場企業の事業部長の元、現場の仕事とマネジメントを一緒に覚えていくポジションです。」こんな感じだ。医療介護、外国人、上場企業というパワーワードにググっと引き込まれた。今までの経験がめちゃめちゃ生きるし、社会貢献度も高い。おまけに上場企業ならつぶれることもない。その他何十の求人票は頭に入ってこなかった。働いている自分の絵を頭の中で描けたのはこの会社の求人票だけだった。

この3社で内定をもらい、返答期限とついでに当時現職の年収に3社横並びさせてもらい最終選考に入った。残念ながら当時の現職場は妻の希望で最初に落選した。続いてすでに大きくスケールしている大手訪問看護ステーションのブロックマネージャー職が落選した。なんというか、採用担当者の腹の底が最後まで見えなかったというのが正直な感想だった。採用窓口の印象ってとても大事だ。そして2択に絞られた。ギリギリのギリまで悩んだ結果、私は両社を選んだ。理由は、最後までどちらの道も捨てたくなかったからだ。

まず、本業(外国人人材コンサル)のオファー面接で月に2日程度看護師として副業をしたい旨を提案。前例はないが業務の内容が本業のプラスになる内容であれば業務委託契約を結び出向の形をとるとしてくれた。なんという寛容さであろうか。そして一方の医療ベンチャー企業には内定をお断りすると同時に月に2日の訪問看護ステーション事業拡大のコンサルテーションを打診した。この会社の最終面談の時、副社長とは腹を割ってお互いの全てを話した。この人たちと働きたい、と強く思った。そしてありがたいことに先方は快く受け入れてくれて、現在に至っている。そういうわけで、現在私は上場企業の外国人人材紹介事業部で働きながら月に2日、医療ベンチャー企業の訪問看護ステーション部門に出向している。本職では看護師として働いていただけでは絶対に見ることができなかった、壮絶なビジネスの世界と様々な国の求職者の転職コンサルティングを通じて多様性に満ちた新しい価値観と世界がどんどん広がっている。そして副業では訪問看護ステーションのスタートアップから事業拡大までの経験が存分に生きている。管理者だったあのころの自分の隣に、こんな伴走者がいたらきっと鬱にならずにあの会社に残り続けることができただろう・・・というスタンスで管理者に伴走している。

最後に。仕事の責任が重すぎて、でもどうしようもなくて心を病み、過労死、自死に至るケースも決して少なくない。そんな人たちに知ってほしいのは、自分がすべてやらずとも、必ず代わりにそれをやる誰かはそこに現れる。手放すのが難しければ、その場所を離れればよい。あなたのキャリアを必要としている会社は絶対に存在する。だから、なんなら今の仕事はさっさとあきらめ、どうか最後まであきらめずに自分らしく生きるための転職を叶え、天職を全うしてほしい。っつーかそうしようぜ!さあ、考えすぎる前に、動け!!

おしまい


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