第28話 ライセンス契約書をどう書くか ー当事者は何を約束するかー
ライセンス契約の骨組み
前回までに「売買契約書」(第23話~第26話)と「役務提供契約書」(第27話)を取り上げて、当事者の約束の根幹を分析してきました。
「基礎からわかる英文契約書」シリーズの第4話で、英国法上、契約では、当事者が「約束」と「法的価値のあるもの(約因=consideration)」を交換する、ということをいいました。そして第21話で、大抵の契約では当事者のお互いの「約束」は、お互いの「約因」でもあるといいました。簡単に言えば、契約とは「両当事者が価値のある約束をし合う」ことだということです。
売買契約では「商品を渡すこと」と「代金を支払うこと」が、また役務契約では「役務を提供すること」と「役務料を支払うこと」が、それぞれ組になっています。「何か」と「対価(お金)」を交換するということは多くの契約、特に商業的契約にいえることです。(☚これがポイント)
ライセンス契約も同じです。「技術の使用許諾(ライセンス)」と、それに対する「実施料(ロヤルティー)の支払い」が組になっているのです。
実際の契約書ではどうなっているのでしょう
今回はすぐに実例に入りましょう。ライセンスを与える当事者(「許諾者」)を "Licensor"、受ける側(「非許諾者」)を "Licensee"と呼びます。
ライセンスを許諾する
最初に ’Subject to …’ という句が出てきました。契約書によく出てくるのですが、考えてみれば「本契約の条件に従」うのは、当たり前のことですからなくてもかまいません(このことは第25話でお話ししました)。「|茲許≪ここもと」も当然のことです(「国際契約英文法-here, there and everywhere!?」参照)。
‘Technology’ や ’Product’、’Territory’ といった大文字で始まる言葉は、すでに契約書の最初に定義されていて、この契約書の中で一定の意味を与えられた語句です(定義については第13話、第19話、第20話で詳しく説明しました)。
「排他的」というのは、ライセンスがライセンシーだけに与えられるということですから、この取引では重要な要素です。
ライセンスの範囲を「開発」以下で詳しく述べています。どのような目的のためにライセンスするかは取引次第です。ここでは文章の理解のために「販売(sell)」だけを残しておきます。刈り込んでみるとどうなるでしょう。
Licensor grants to Licensee an exclusive license to use the Technology to sell the Products in the Territory.
わかりやすいですね。
ライセンシーは対価(ライセンスの実施料)を支払う
もとの契約書では(a)項についての条件が(b)項に述べられていたり、(ii)以下に追加の定めもあるのですが、それは省略しました。さらにここでは基本だけを残して、無くてもよい部分を削除してみましょう。"as royalties" だけは加筆しました。
Licensee shall pay Licensor …% of the Net Revenue based on sales of the Products as royalties.
基本的な要素がよく見えてきたのではないでしょうか。
契約の根幹は何かを交換するということ
今回までで3種類の契約の型について、基本的な記載事項(取引の目的となるもの)を紹介しました。どれも骨組みは類似していることがお分かりいただけたと思います。他の類型の契約でも同じように考えることが出来ます。(☚これがポイント)
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