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(2)5歳頃からの積読本が「本読む子」への最短ルートでした~10年前に出会ったママさんへ~


 お手紙、つづきです。

「家にある本で、デジタル漬けになる前に『読む』習慣を」

・・・というお話をしています。

  
 今日は、

「本って本当におもしろいもの。自由に手に取れる本棚が目の前にあるだけで、子どもは興味を持つんです」

というお話です。


 
 ――たとえば、
 サッカー大好きな親が子どもにサッカーの魅力を伝える。
 ピアノが得意な親が子どもにピアノを教える。
 
 ――少なくともここには、「いったいどうすれば・・・」という悩みはありませんよね。
 
 でも、本をあまり読まない、読んで「おもしろい!」と夢中になった経験の少ない親が、本を読んでごらん! と子どもに伝える・・・。
 
 これはちょっと難しいのかもしれない・・・と、シオリさんから悩みを聞いた時に、思いました。
 
 そしてその時、じつはシオリさんに言おうかどうか迷って、結局言えなかったことがあるんです。
 
 「違ったらごめんなさい。もしかして、『本を読んだら賢い子になるかもしれない』という期待から『読ませたい』と思うのなら・・・賢くなりそうな本ばかりを子どもに与えて、嫌がられてしまう結果になる可能性もあるので・・・そこは注意が必要かもしれません」
 
 
 ・・・結局言えなかったのは、真意が伝わらず、誤解されて嫌な気持ちにさせてしまうかもしれないと思ったのと、もうひとつは「具体的にこうしたらいいですよ」というアドバイスのようなものが、私の中にまだ浮かんでいなかったから。
 
 でもシオリさん、私はあなたに会えなくなってからずっと、日々の子育てをしながらも、考えていました。
 
   

 ――本って、本当に、おもしろいものなんです!

 
 子ども自身がそのことに気づくことができれば、あとは親のすることって、そんなに多くないんです。
 
 私は、本は人類が生み出した最高の娯楽のひとつだと思っています
 
 おもしろい本を読んでドキドキ、ワクワクしたり、「すごいものを読んだ!」という読み終わった時の充実感や達成感は、ちょっと他に代わるものが見つかりません
 
 家にいる時も、ひとりで没頭できる「おもしろいこと」のなかで、読書はその最高峰――私の中ではエベレストーーに位置するものと思っています。
 
 そしてそれは、個人的な実感としては、小学校低学年でもう十分に得ることができる「おもしろさ」「楽しさ」なんです。
 
 

 読書のおもしろさを知ってしまったら、人生でもう、暇な時間なんてありません。


 ――本当です!


 
 そして嬉しいことに、本をたくさん読めば、確かに「賢くなる」と思います。
 
 ――いえ、テストの点数が上がるという保証はしません・・・残念ながら。
 
 もちろん、結果的にそこへ繋がる可能性もあります。
 国語力のアップは期待できますし、今はあらゆる教科で「読解力」が求められる時代になりましたから、たくさんの本を読むことは勉強面から見ても、メリットしかないと私は思います。
 

 それでも、それでもです。
 
  賢くなるのは結果であって、本を読むいちばんの目的は学校の成績を上げることではないと、私は思います。
 
 本を読むのは、自分の心の使い方を知るためです。

 本を読んでワクワクできる自分に出会うためです。

 自分の頭で考えて、困難を乗り越えて、生きる力を得るためです。
 
 ――幸せを感じる心を育てるために、私は子どもに本を勧めます。
 
 もし、ここに少しでも共感していただけるなら・・・
 この手紙を、もっと読んでいただきたいと思います。
 
 
 ――ありがとうございます。
 
 では、具体的にはどうしたら今の子どもたちは、本が好きになるのでしょうか?
  シオリさんは、どう思いますか?
 
 私、ここ数年で実感していることがあります。
 
 今は、こんなに本が好きな親(私)でも、「本好きな子」を育てるのがなかなか難しい時代だということ。
 
 ――これは仕方のないことなのでしょうか?
 
 いえ、確かにそういう面もあるかもしれないけれど、ゲームやインターネットがない時代だって、読む子は読むし、読まない子は読まない・・・そうでしたよね。
 
 だからどんな時代にも、環境や条件次第で「本が好きな子」は育つし、その土壌や土台を整えてあげることが、やっぱり大切なんだと思うんです。
 
 
 私、あれからずっと考えていました。
 
 たぶんこうしたら、子ども自身が「本っておもしろい!」と実感するだろうなーーという方法を。
 
 そうして、長女が5歳くらいからある方法を試して、今では長女はすっかり本好きになりました。
 ――試行錯誤はありましたけど。
 
 これから少しずつその方法をお話していきたいのですが、その前にひとつお伝えしておきたいことがあります。
 
 じつは、私が長女に対して頑張ってきた「本好きアプローチ」「本好きルート」をほとんど全部すっ飛ばし、「親が何もしなくても本好きになった子ども」がひとりいます。
 
 ――次女です。
 
 次女は気が付けば小学1年生で、「文字メインの児童書」を自分から楽しそうに読むようになっていました。
 
 あれ? と思った時にはちょっと驚きましたが、同じように育てたつもりの長女と次女の決定的な違いは何か・・・と考えてわかったことは、次女は「ものごころついた時から、家にたくさん本があった」のです。
 
 
 ――そんなことで? と思うでしょうか。
 
 そう、確かに「何歳だからこのくらい」とか、「動物が好きそうだから動物の本」・・・というような親のねらいを全部飛び越えたところで、次女は日々、長女がそのへんに「ポイっ」と転がしておいた本(すみません)や、本棚にきちんとしまわずに姉妹の枕元に「すごく適当に積んである本」(すみません)を、自由に手に取っては、「あ~これはおもしろそう」「これなら読めそう」という本を、自分で選んで読んでいたのです。
 
 
 いつの間にか「本読む子」になっていた次女に、私はさりげなく
「あのね、どうして本好きになったの? どういうところがおもしろいと思ったの?」
 と尋ねてみると、次女は、要約すると次のような返答をしました。
 
「・・・わかんない。でもいつもそこにあるし、なんとなく好きに選べるし、ねえね(姉)も読んでるし、これつまんないと思っても違うのをさがせるから」
 
 
 それを聞いた時、私は「ああそうか!」と頭の上に電球のマークが光った気がしました。
 
 子どもは、「おとなが与えた選りすぐりの良書」ではなく、家に積んである本を「適当に手に取り、自分で選んで」、自由に暮らすことで、本好きになるのだと・・・(個人の感想です)。
 
 ものごころついた時から目線の先に本があり、自由に読んでいた子は、本選びに強く、本との距離が近い。
 
 例えて言うなら、自然のなかで育った子と、都会生まれで時々キャンプに行く子・・・くらい違うのかもしれないと思いました。
 
  
 こう言うと長女にとっては不本意かもしれませんが、
私の意図的な行動によって「本好きに誘導された」のが長女なら、
お気に入りのオモチャと同じように「身近な娯楽として本で遊んでいた」のが次女。
 
 ・・積読本、すごいです。積んどいただけなのに・・・。
 
 さらに、じつはたくさんのパパ・ママ達が抱いているとわかった、ある悩みーー

「絵本の読み聞かせのその先は、どうしたら自分で読む子になるの?」

――という疑問や悩み解消のカギも、積読本がにぎっているかもしれないと、私は考えるようになりました。
 
 
 お手紙、つづきます。

 
〈ひらがなの50個だけで本棚の ぜんぶのお話つくっているの?〉


・お手紙(3)はこちらからどうぞ。
(3)5歳頃からの積読本が「本読む子」への最短ルートでした~10年前に出会ったママさんへ~|涼原永美 (note.com)


・お手紙(1)はこちらからどうぞ。
(1)5歳頃からの積読本が「本読む子」への最短ルートでした~10年前に出会ったママさんへ~|涼原永美 (note.com)
 
 
 
 


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