(5)5歳頃からの積読本が「本読む子」への最短ルートでした~10年前に出会ったママさんへ~
お手紙、つづきです。
「家にある本で、デジタル漬けになる前に『読む』習慣を」
・・・というお話をしています。
・お手紙(4)はこちらからどうぞ。
(4)5歳頃からの積読本が「本読む子」への最短ルートでした~10年前に出会ったママさんへ~|涼原永美 (note.com)
今日は
「絵本好きな子に動画を見せたら一気に・・・」
というお話です。
さて、シオリさん。
「積読本と暮らすことが本読む子への最短ルート」というお話をしておきながら、最短ルートを行った次女ではなく、まず長女の話をするのにはワケがあります。
我が家では、結果としては2パターンの「本好き」ルートがありました。
長女は、積読本がなくとも「導き」によって本好きになった(A)タイプ。
次女は、積読本があって「自然に」本好きになった(B)タイプ。
当たり前ですが、とくに第一子を育てる時、既にたくさんの本を家に用意しているパパ・ママはそう多くないと思います。
オムツやミルク、離乳食、その時々のオモチャ、寝かせること、出かけること・・・毎日の生活で手一杯ですよね。わかります。私も、本当にそうでした。
ただ、子どもが5歳くらいになって、絵本が好きで、平仮名を(書けないまでも)なんとなく読めるようになってくる時期って、あると思うんです。
だからその時期に、「こんな本はどうかな・・・?」と、我が家でいう長女、(A)タイプのルートを行くパパ・ママは多いのではないでしょうか。
なので、ひとまずは(A)タイプについてお話したいと思います。
仮に、家にもともとたくさんの本があったとしても、「子どもがどういう道のりで本好きになるのか」を、(我が家の一例ではありますが)お話しておくのがお役に立てるかもしれない・・・と思うからです。
そしてそのうえで、(A)タイプにとっても(B)タイプにとっても、「家に本がたくさんあること」の素晴らしさをお話したい・・・というのが、私が書いているこのお手紙の、大きな目的のひとつだからです。
・・・というわけで、話を戻しますね。
これは、私の大失敗の話です。
あれは、長女が5歳の時でした・・・。
――シオリさん、私はそれまで
「親が本好きで、家に本がたくさんあれば子どもは自然と本好きになるだろう」と思っていたのです。
そして、それまでは家でもパソコンやスマホで動画を見せたことはありませんでしたし、出先でも「ちょっとこれでも見ていて」とスマホを持たせたことはありませんでした。
その時すでに、「子どもがゲームばかり、動画ばかりで困ってしまう・・・」という親の声はメディアでもたくさん見聞きしていましたし、
私はデジタルは避けては通れない道とはいえ、自分の子どもには
「先に本好きになってから、後でゲームや動画・・・」と考えていたので、出先でも仕掛け絵本やシールブックなどで遊ばせていたのです。
それなのにある日、まったく無意識のうちに、私は長女をパソコンデスクに座らせて、「ちょっとこれでおとなしくしていて!」とユーチューブを見せていました。
長女が幼稚園の年長さん。次女が1歳。
思い返せばあの時が、私の子育ての闘い、てんやわんやの第一ピークだったかもしれません。
好みがそれぞれに違う(それぞれに我の強い)姉妹。
チャンネル争いでもめたり、泣いたりすることにウンザリし、次女はテレビで子ども向け番組、長女にはパソコンでアンパンマンやオモチャ紹介の動画を見せようと・・・無意識のうちにひらめいたのでしょう。
――最初はよかったのです。
――おとなしくなりました。
――家事がサクサクできました。ああ、なんてラク。
ところがこれを何日か続けているうちに、長女は、これはテレビ番組や、DVDで観る映画とはまったく違うものだと気づいたようでした。
「ダメ!」「何を観るかはママが選ぶんだよ」「約束でしょ!」と言っているのに、自分でマウスを器用に動かし、「次はこれ! 次はこれ!」とディスプレイの端に表示されている「私があまり見せたくない動画」を、どんどん見ようとします。
5歳は、賢いです。
インターネットのなんたるかを理屈で教えなくても、その世界が無限に広がっていることに5歳の脳は早々に気づき、好奇心を刺激する色とりどりの世界がクリックひとつで目の前に広がることにワクワクしている様子が伝わってきました。
そうなると親が「これはダメ。こっちを見ておいてね」とか、「あと1本で終わりね」と言っても、不満そうな顔をします。
そうして、「もう終わり!」と叱ると、泣いたり、ごねたりするように・・・。
――我に返った時、私がいちばんショックを受けました。
確かに、見ている間は家事がはかどります。ラクです。
でも全体としては「こうしたかった育児像」からはどんどん離れ、私は前にも増してイライラし、子どもは「見たい!」と癇癪を起している…。
絵本やカードゲームなどが大好きだった5歳の長女は、ほんの数日ですぐに「パソコン見た~い」と言う子になってしまいました。
――毎日の家事・育児が大変すぎて、私は自分が
「子どもに本の魅力を伝えたい」と思っていたことすら忘れていたのです。
毎日、幼児と向き合うことの大変さ、ワンオペの壮絶さは、信念なんて簡単に吹っ飛ばしてしまいます。
――それでも、デジタルがない時代はみんな、いろいろ工夫して育児をしてきたのでしょう。
けれどもデジタルという選択肢が目の前に簡単にある時代で、それを「まだやらない」と避けて通るのは至難の業だと、私は気づきました。
私は、動画視聴やゲームを否定しているのではありません・・・。
けれど、幼児にはまだ早い。
私がいちばん怖さを感じたのは、マウスを手に次々と器用にパソコンを操作する長女の背中から感じられた「万能感」だったかもしれません。
どこまでも行けてしまう、インターネット。
やろうと思えば幼児でもできてしまう。
けれど・・・、まだ早い。
この子にはまだ、ネットの前に「伝えたい世界」がある。
それで、決心しました。
なんとなく自然にそうなる・・・は(少なくとも我が家では)無理。
――やるなら本腰を入れて、ちゃんとやらなければ。
そうして、それまでぼんやりと考えていた自分なりの本好き大作戦を「今から始めよう!」と思ったのです。
思えばこの時、長女は5歳。
こうした偶然的なタイミングではあったけれど、
ふりかえるとこの「5歳」(年長さん)は、大きな意味があったな・・・
と、今にして思います。
お手紙、つづきます。
〈5歳です時間も心のスポンジも たっぷりあるのでいま本の時〉
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