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【選書】「ミステリーって多すぎて自分に合うのを選べる気がしない」という友達に選書のコツを全力で話してみました〈第五夜〉 ―東野圭吾の選び方―

~「読んでよかった」のために自分の好みを知ろう
分け合いたい! 底知れぬミステリーの魅力~
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〈第四夜〉はこちらから ↓↓↓

 

【主な、ではなく2人しかいない登場人物】

エイミ・・・本、特に推理小説が好き。40代。友人ミキとの会話や子育てを通して「本1冊をスラスラ読めるのは本好きだけの常識」と気づき、ミキが楽しく読書できる「入口」を考えるように。目標は「脱・頑張って読んだのにイマイチ」  

〇友人ミキ・・・大人になり読書に興味を持つが、少し苦手意識あり。ミステリーを読んでみたいと自分で選書するものの「ピンとこない」と苦戦。「読書慣れしていない人が小説1冊読み切る労力」をエイミに訴える

 ※以下、作家名は敬称略。本のデータは最後に記します

※あくまで私が読んだ本、好きなタイトルから話しています。ミステリーの選書に関してはすべて、ただの本好きの個人的な見解です

 ※おすすめの作品名も出しますが、あくまで選書のコツ・考え方がテーマです
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(1)「最高傑作!」は作家と読書初心者との幸福な出会いになり得るか?


エイミ ではさっそく前回からのつづきで、ミキが直観で選んだ東野圭吾『容疑者Xの献身』についての話だね。
ミキ ついにこの話・・・うん、面白くないわけじゃなかったんだけど、なぜかピンとこなかったんだ。

エイミ その理由を考える前にちょっといい? 東野圭吾作品全体についての印象をミキに聞いてみたいんだけど。
ミキ 全体についての印象?

エイミ 東野作品って読書好き、ミステリー好きにとってはあまりに有名で、「このシリーズが好き」「こういうテイストの作品が好き」っていうのが決まってる人が多いんだけど、読書にそれほど馴染みのない人にとってはどう見えてるんだろうと思って。

ミキ そうだな・・・ひと言で言うとだね。
エイミ カベ?

ミキ 読んだことなくてもドラマや映画は観たことあるし、書店にはたくさん並んでるけど、いざ1冊を選ぼうと思うと困る――これは宮部みゆきで迷ったときと同じだけど、それぞれの特徴とかがわかんないから全部ひとかたまりの「壁」に見える。そびえ立ってる。だから負けた気がして、買わずに帰っちゃう・・・てへ。

エイミ なるほど・・・。
ミキ これが本について詳しくない人間の本音です。だから誰かに聞くにしても「東野圭吾でどれがおすすめですか?」「どれが最高傑作?」っていう漠然とした質問になっちゃうんだよ。これ、エイミだったら聞かれて困るやつでしょ?

エイミ ふむ・・・。
ミキ 論理的な謎解きメインの本格が好きかとか、人情系の感動作が好きかとか、後味の良さにこだわるか、SF系の要素が入ってても大丈夫かとか、しつっこく聞かないと選書できないとかエイミはよく言うでしょ?

エイミ う~ん。
ミキ だから私、とりあえず「なんか有名だし、すごい賞も獲ってるみたいだし」と思って『容疑者Xの献身』を選んだんだよ。もちろんそのときはエイミと選書の話をしたこともなかったからね。

エイミ ミキ・・・あくまで個人的な意見だけど、「その作家の最高傑作!」っていう情報は、読書慣れしてない人にとって諸刃の剣になったりするんだよ・・・。

ミキ 諸刃の剣って言葉好きだよね~。第二夜でも言ってたし。

エイミ こないだある本好きの子どもに聞いてみたんだけど、「この本この作家の最高傑作だよ」ってすすめられて読んでみて、感想が自分的に〝イマイチ〟だったら、同じ作家の2冊目を読むか? って聞いてみたの。そしたら「たぶん読まない」って。

ミキ 読まないだろうね。だってそれが最高傑作なんだから。あっそうか・・・。

エイミ 優れた作品なのは間違いないだろうし、本を売る側からすると「〇〇賞受賞の最高傑作」みたいな宣伝は必要だろうけど、読み手一人ひとりにとっては必ずしもそうじゃないから、「傑作」「名作」「受賞作」はあくまで参考程度だと私は思う。もちろんそれがぴったり一致すればお互いにハッピーなんだけど。

ミキ そっか・・・エイミがいつも言う、読書慣れしてる人なら「まぁもう1冊読んでみるか」と思ったりもするけど、読書初心者は「この作家合わない」で終わっちゃう可能性があるってことだね。

エイミ それは本当にもったいない! たとえばお互いにこの作家が好きっていう前提があって、「最高傑作どれだと思う?」みたいな話はいいと思うんだけど。

ミキ じゃあ逆に読書初心者は、人からなんて紹介されるのがベストなんだろう?

エイミ そうだね、「私はこれがいちばん好き」とか、「この作家の最高傑作って言われてるのは別の本なんだけど、ミキちゃんならこっちが好きかと思って・・・合わなかったらゴメンね・・・」とかかな。

ミキ 若干めんどくさいな(笑)。けど「絶対面白いから!」「傑作だから!」よりはいいかも。私は今回『容疑者Xの献身』を自分で選んだからいいけど、人に言われたらそれだけで読むのがプレッシャーになるかもね。

エイミ ちなみに、余談だけど子どもに本すすめるときってそうなの。「絶対面白いよ!」「これ傑作だから」って言うと嫌がられる・・・。まあ、何が言いたいかというと、やっぱり本を読む人には自分の感性を大事にしてほしいってことなんだ。

ミキ 私はつい最近まで、自分にミステリーの好みがあることすら知らなかったけどね。

エイミ 好きなアーティストでも、 あまり有名じゃないけど「このアルバムのこの曲好き!」っていう宝物みたいな1曲ってあるじゃない? 

ミキ あるね。私のために歌ってくれてる! って泣きたくなる曲。

エイミ 本にもそういうのあるんだよ。これは自分のために書いてくれたんじゃないかって思うような1冊・・・と、ここまで話したところで改めてミキさんに『容疑者Xの献身』の感想を聞いてみたいと思います。

ミキ ちなみに、〝ある本好きの子〟ってムスメでしょ。
エイミ サンプル数少なくてすいません。


これはオレの物語だ・・・

(2)科学的な謎解きと人間ドラマの融合が「ガリレオ」の魅力なんだけど・・・


※作品に関して基本的にネタバレなしで話していきますが、内容に触れますので気になる方はご注意ください


エイミ ではお願いします。
ミキ 感想、『容疑者Xの献身』を読んで。私は、ガリレオこと湯川教授に謎を解いてほしくなかったです。

エイミ ははははは。
ミキ いや、率直な感想っていうからさ。

エイミ いいと思う。それで?
ミキ 石神と花岡靖子と娘に幸せになってほしかった。だから最後はちょっとショックでした。

エイミ ピピーーーーッ! ちょっと待ってね。・・・ええと、文庫の裏のあらすじに書いてあるから、ここまではネタバレじゃないみたい。

「天才数学者でありながら不遇な日々を送っていた高校教師の石神は、一人娘と暮らす隣人の靖子に秘かな想いを寄せていた。彼女たちが前夫を殺害したことを知った彼は、二人を救うため完全犯罪を企てる。だが皮肉にも、石神のかつての親友である物理学者の湯川学が、その謎に挑むことになる」 

 ――と、ここまでが表立って言える『容疑者Xの献身』のあらすじだね。

ミキ うん。それで石神が靖子のために何やらいろいろ工作をするんだけど・・・。

エイミ その何やらいろいろが、ガリレオシリーズの読みどころなんだけどね。

ミキ かもしれないけど、私としてはガリレオさんに石神を放っておいてほしかった。

エイミ いやわかる、わかるけども・・・後半でガリレオさん、いや湯川教授が解き明かす、石神の仕掛けた巧妙なトリックについてはどう思った?

ミキ 謎解きの部分を何度か読んでみて、あぁそういうことなのって・・・なんとか理解はしたよ。なんて手の込んだことを、でもそのくらい愛してたんだなって。

エイミ うんそうだね。たとえばなんだけど、こんなトリック初めて読んだ! そういうタイプの引っ掛け問題か、いや新しい、アリバイ崩しかと思いきや、そして倒叙ミステリーと見せかけてじつは・・・という展開か、すっかり騙された!

ミキ はい?
エイミ ・・・みたいに驚いたり、トリックに感動したりはしなかった?

ミキ しなかった。
エイミ 私もいま自分でしゃべってて、途中からそうだろうなと思ったよ・・・。

ミキ ちなみにとうじょミステリーってなに?

エイミ はじめから犯人や犯行の手口がわかってるミステリーだね。それは今度ゆっくり話すけど、ミキ・・・落ち着いて聞いてくれ。ガリレオシリーズは、不可解極まりない謎を、主役の湯川教授が科学的・論理的な観点から鮮やかに謎解きするのを楽しむのが、前提なんだ。

ミキ がーん、って言いたいところだけど、第五夜だからさすがに察しはついてたよ。私はたぶん自分の好みに微妙にマッチしないミステリーを選んだんだろうね・・・。

エイミ もちろん読み方は自由だから、ミキみたいに登場人物に感情移入するのもいいし、私だって石神の真意がわかったときは泣いたよ。そこは同じ気持ちだと思う。

ミキ ほんと!? よかった。

エイミ ただ、そもそもガリレオシリーズは、科学的・論理的な謎解きと人間ドラマの絶妙なバランスが魅力なんだよね。この作品の場合、トリックを成立させるには無償の愛が土台として必要だし、その献身的な愛があるからこそ、この独創的なトリックが生まれてる。両方のパズルのピースがぴたっとハマってて見事だから、各方面で絶大な評価を得たんだと私は思ってる。

ミキ とりあえず、私の感想そのものはおかしくないんだよね?

エイミ ぜんぜん! むしろ素敵だと思う。そもそも小説の感想に正しいも間違ってるもないからね。ただ、選書っていうポイントからすると、ガリレオシリーズはそもそも科学的な謎解きを楽しむもの、っていう前提を知ってたほうがよかったと思う。

ミキ 私の読後感がボヤけてたのは、人間ドラマ部分には心ひかれたのに、本格好きなら「おぉ!」と思うような謎解き部分にうまく反応できなかったからなんだね。

エイミ 第二夜でわかったけど、ミキはトリック重視の本格ミステリーに興味が薄そうだから、ガリレオシリーズは積極的にはおすすめしない。ただ、読書慣れしたらいずれまたガリレオ作品も読んでみてほしいと思うよ。

ミキ そういえば第四夜でエイミが言ってたけど、私って・・・加賀派なんだよね?

エイミ うん。でもその前にもうひとつ、読書慣れしてない人がシリーズものを途中から読むのもあまりおすすめしないから、それも頭に入れておいてほしい。

ミキ そうだった。後から思ったんだけど『容疑者Xの献身』ってガリレオシリーズの3作目なんだよね。

(3)「シリーズものの途中」を読書初心者におすすめしない理由


ミキ シリーズものを途中から読むのってよくないの

エイミ あまり気にしない人もいるけど、すでに出来上がってる人間関係とか、設定についてもう説明されないこともあるからね。『容疑者Xの献身』に関しては、湯川教授と草薙刑事の関係性を理解できれば、だいたい大丈夫だろうけど・・・。

ミキ 確かに複雑な設定が出てきたら私、混乱するかも。今度は調べてから手を出すことにするけど、それってよくある「読む順番」を調べたらいいのかな?

エイミ そうだね。読書慣れしてる人がシリーズ途中の本を手にした場合、「この2人はこういう関係かな」みたいに想像で補って読めたりもするんだけど、そうじゃない場合、余計な謎が増えると読むハードルが無駄に高くなっちゃうし、それで挫折しちゃうこともあるんだよね。

ミキ 素朴な疑問なんだけど、 シリーズものでも基本的に1話完結の話ってあるよね。それでも順番守るのって大切?

エイミ 本にもよるけど、シリーズを通しての大きな謎とか人間ドラマがある場合、後の刊を先に読むと大きなネタバレになっちゃことがあるんだよ・・・あ!

ミキ またなんか思い出しちゃった?

エイミ 加賀恭一郎シリーズは完全にそうだから、気を付けて

ミキ やっと出ました。私の加賀さん。


余計な謎が多いと本の世界に入りづらいことも


(4)「1冊目」「読む順番」に注意が必要な加賀シリーズ

 
エイミ 加賀恭一郎シリーズはガリレオと並ぶ、東野圭吾によるシリーズのもう1本の大きな柱なんだ。この2本柱を頭のなかで整理しておくと、東野作品の分布図がはっきりして、わりと選書しやすくなるよ。

ミキ 加賀さんシリーズは映画化やドラマ化はされてるの?

エイミ けっこうされてる。映画なら『麒麟の翼』『祈りの幕が下りる時』、テレビドラマなら『新参者』『赤い指』『眠りの森』あたりかな。

ミキ そう言われたら観たことがあるものもあるような・・・。

エイミ 映像化されるとぐっと認知度が上がるよね。私は映画『祈りの幕が下りる時』が大好きで、何度観ても泣ける。まぁとりあえず小説目線で話を進めるけど、加賀恭一郎は人並外れた観察力と洞察力をもった刑事でね。

ミキ じゃあ知り合いに相談されるとかのパターンじゃなく、直接的に捜査するんだね。

エイミ 事件が起こると関係者と会話を重ねながらさりげなくいろいろ調べて、人間的な関わりをもちながら最後は起こった出来事を論理的・客観的に組み立てて謎を解明するんだよ。ふだんは淡々としてるけど、心の奥底では情に厚かったりもして。

ミキ さすが私の加賀さん。

エイミ ただ加賀シリーズはガリレオ以上に「読む順番」に注意してほしいんだ。そしてまた、読書初心者または東野圭吾初心者が1冊目として選ぶ作品にも気を付けてほしいポイントがあるんだよ。

ミキ そうなの? なにかネタバレがあるのかな。

エイミ ネタバレというか、途中から加賀恭一郎の人生に深くかかわる出来事がクローズアップされるから、そのセンを追いかけるならむしろシリーズの途中、具体的には7作目『赤い指』から読んでもいいか・・・とも思う。個人的には。

ミキ なんかさっきと言ってること違うけど大丈夫?

エイミ いやそれが加賀とお母さん、いやお父さんもかな? とにかく親子の話につながっててね。個人的にはもう胸打っちゃって打っちゃって大変なんだけど。

ミキ えっお母さん⁉ 親子もの?

エイミ やっぱりそこ食いついてきたか・・・。

(5)6作目まで多彩! 犯人が最後まで明かされない作品も?


エイミ お母さんの話の前に、まず加賀シリーズの流れをざっと説明するね。1作目の『卒業』は1986年とけっこう古くて、このとき加賀恭一郎は大学生、2作目の『眠りの森』では刑事になってる。で、この2作はいろいろ考えずに単体の推理小説として楽しめると思うんだよね。あらすじを読んで興味があれば、という感じ。

ミキ ふむふむ。大学生の加賀さんにも会ってみたいかも。

エイミ で、3作目の1996年『どちらかが彼女を殺した』、1作とばして5作目の1999年『私が彼を殺した』・・・この2冊がかなりクセ者で、間違ってもミキにとっての1作目、いや2作目にもおすすめしない。

ミキ なんで? 小説にクセ者とかあるんだ。

エイミ 謎解き大好きの本格マニアには有名だけどこの2冊、殺人事件の犯人が最後まで明かされないんだ。

ミキ え~っそれでどうなるの?

エイミ もちろん読み手が推理するんだよ。数々の伏線と客観的事実から・・・。で、文庫版には推理の手引きとして巻末に袋とじまでついてるんだ。最近、文庫の新装版が発売されたみたいだけど、それにも袋とじがついてるかどうか、私はまだ未確認。

ミキ 小説に袋とじ⁉ 初めて聞いた。
エイミ 私むかし1冊だけ読んだことある。バリンジャーっていう海外の作家の『歯と爪』って小説。
ミキ 健康チェックの話?
エイミ いや気にしないで・・・。

ミキ とにかく自分で推理するのは無理だって! あ、エイミが第二夜で言ってた、本格ミステリーにたまにある「読者への挑戦状」みたいな感じ?

エイミ そうだね。ただし袋とじを開けても犯人の名前は書いてないけど。
ミキ 無理っす。

エイミ 何が言いたいかというと、「加賀シリーズは面白い」とすすめられても、この2冊だけは自分で推理する気のない人は、うかつに手を出さないほうがいい・・・ってことなんだ。読後の感情がおかしなことになるから。

ミキ 私、探偵が丁寧に謎解きしてる文章読んでも意味わかんないときあるから無理だわ。

エイミ もちろん自分で謎解き、が好きな人にはおすすめします! ちなみにさっき飛ばした3作目『悪意』は単体の推理小説としても楽しめるし、6作目『嘘をもうひとつだけ』は短編集だから、興味があればどうぞという感じ。・・・で、問題は7作目以降なんだ。

ミキ 7作目以降? そこからお母さん出てくる?


加賀恭一郎といえば日本橋(イメージ)


(6)7~10作目は加賀の人生を紐解いたひとつの物語としても


エイミ 残念ながらお母さんは直接的には出てこない。理由は後々わかるけど、7作目の2006年『赤い指』から加賀恭一郎の親子問題が少しずつクローズアップされていくんだよね。その後2009年『新参者』、2011年『麒麟の翼』、2013年『祈りの幕が下りる時』とつづくんだけど。・・・あ、もちろん基本的にはそれぞれ別々の殺人事件を扱った小説だよ。

ミキ 加賀シリーズはそれで終わり?

エイミ じつはこの後2019年に『希望の糸』、2023年に『あなたが誰かを殺した』と2冊出てるんだけど、これらに関してはとりあえず分けて考えて大丈夫。なぜかというと加賀の人生としては『祈りの幕が下りる時』がクライマックスで、長年の謎がいろいろ解けるからね。

ミキ クライマックスではどんなことが起こるの?
エイミ 詳しくはここで言えないけど、お母さんの謎が解けるんだ。
ミキ おお・・・。

エイミ 私は『赤い指』からここまでが、加賀恭一郎と母の物語というひとつの長い小説のような気がして、読み終わったときの満足感がすごかった。なんだか、自分まで救われた気持ちになって。

ミキ そうなんだ! 私が求めてる物語もそこにありそうな気がしてきたよ。

エイミ 長~い読書になるから、『赤い指』からすぐにぜんぶ読めとは言わないけど、この順番は頭に入れておいてほしいんだ。加賀シリーズを最大限楽しむのなら、名作だからと言われてもいきなり『祈りの幕が下りる時』を読むようなことはしないでほしい。お願いします!

ミキ わかった。自分の感動のためにも順番は守るよ。

エイミ 単体の小説として読んでも、『赤い指』から『祈りの幕が下りる時』までの4作はどれも家族や親子の問題がテーマになってて、重い事件もあるけど最後は希望も感じられるし、ミキは好きだと思うよ。

(7)「犯人の工作」と「生きた証」のどちらの謎も満喫できる2大シリーズ


ミキ それにしても東野圭吾ってほんとに作品数多いよね。

エイミ もしミキが『容疑者Xの献身』を読んだって話をしなかったら、私は単体の作品として『秘密』とか『手紙』とかあれとかこれとかを紹介しようと思ってたんだ。1冊目としておすすめの作品はたくさんあるからね・・・ちょっと考えただけでもう、ワクワクがとまらない!

ミキ じゃあ次回はその話をお願いします。

エイミ きっと好きなのいっぱいあると思う! 今日だけで話しきれなかったね、東野圭吾作品・・・ところでさ。

ミキ またなんか思い出しちゃった?

エイミ 今日ガリレオと加賀恭一郎シリーズの話をしたついでに、ミキに「謎の種類」について改めて伝えておきたいことがあるんだ。今後の選書、というかミキの頭のなかで「ミステリー」「謎解き」の整理の手助けになると思って。

ミキ 謎の種類って、第二夜で質問されたの以外で? 論理的な謎解きをする本格系か、感動的な人間ドラマ系か、みたいな。

エイミ それに近いんだけど、謎の種類ってこういう考え方もあるんだよね。

(a)犯人が犯罪の隠蔽のために仕掛けた謎・・トリックや工作

(b)ある人が「何を考え、どう行動したか」が、結果として周囲にとって謎となったもの・・・真相や真実

 もちろんこれらが両方混ざってる場合もあるし、一概には言えないんだけど、傾向として本格ミステリーのなかでも「探偵vs犯人」みたいな話は(a)が多くて、社会派や歴史ミステリー、人間ドラマ系のミステリーは(b)が多い。

ミキ そう言われたら私、やっぱり(b)が好き。

エイミ 私は、東野圭吾作品で(a)を楽しみたいときはガリレオを、(b)を味わいたいときは加賀シリーズを読むんだけど、それでもガリレオシリーズで(b)に感動することもあれば、加賀シリーズで(a)の精度に圧倒されることもある。いずれにしても完成度が高いんだ。

ミキ (a)を満喫するのはエイミに任せるけど、(b)の・・・その人が何を考えてどう行動したかが謎なんだって考えると、私達が生きてるこの世界って、ほぼほぼ謎だらけじゃない?

エイミ わかってくれた? そう、謎解きは沼だから・・・書くにも読むにも人生を捧げる人が多いんだよ(涙)。近々「日常の謎」っていうジャンルの話もするから。

ミキ なんの涙かはわかんないけど、つづきます!

エイミ 次回は東野圭吾のシリーズ外の作品の選び方だね。

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 【読書スキルと好みに合わない選書をしないための・・・今日のポイント】

 ガリレオと加賀恭一郎という2大シリーズの特徴を知ると、東野圭吾作品の分布図が頭に入りやすい 

「最高傑作」「受賞作」等の情報は参考程度にして、自分の好みを知って選書したほうが読後の満足につながりやすい

・加賀恭一郎シリーズを「加賀の人生」に焦点を当てて選書する場合は、7作目『赤い指』からでも大丈夫。ただし7→8→9→10の順番は守ったほうがいい

 【第六夜予告】
東野圭吾の選び方 #2
―人気作家は選書力upの味方―
↓↓↓こちらです

【今夜の本リスト】

『容疑者Xの献身』(著者 東野圭吾/文春文庫/税別629円)
『どちらかが彼女を殺した 新装版』(著者 東野圭吾/講談社文庫/税別760円) 
『私が彼を殺した 新装版』(著者 東野圭吾/講談社文庫/税別870円)
『赤い指』(著者 東野圭吾/講談社文庫/税別660円)
『新参者』(著者 東野圭吾/講談社文庫/税別800円)
『麒麟の翼』(著者 東野圭吾/講談社文庫/税別700円)
『祈りの幕が下りる時』(著者 東野圭吾/講談社文庫/税別780円)

『歯と爪』(著者 ビル・S・バリンジャー、訳 大久保康雄/創元推理文庫/税別920円)

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同じ作家や作品を読んでる人がいると嬉しくなりませんか


最後まで読んでくださってありがとうございます!


すべての始まり・・・〈第一夜〉はこちらから↓↓↓


どんな謎ならワクワクしますか?〈第二夜〉はこちらから↓↓↓


人気作家・宮部みゆきの選書について〈第三夜〉で話しています↓↓↓


↓↓↓推理小説の実写化と原作愛について書いています














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