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【読書感想文】エッカーマン「ゲーテとの対話」岩波文庫

おそらく一昔前なら誰もが知っていた名著である。18世紀から19世紀初頭にかけてのドイツの大文豪ゲーテが、晩年に出会った純朴な青年秘書エッカーマンに語った、含蓄深い対話の集成。いろいろ印象深い対話があるが、私の記憶に1番残っているのは、ゲーテがとある演説で、台詞が全く出てこなくなってしまったが、落ち着き払って10分間沈黙した後、まるで何事もなかったかの如く、演説を続けて、完璧にまとめたというエピソードだ。いかにもゲーテらしい。だが、面白いのは、オリュンポスの神などとも揶揄されるゲーテのコミカルな一面が結構前面に出ているところだ。ドイツ流ヴィッツなのかもしれないが、ゲーテは結構ユーモアのある人だった。ただし、時に毒舌になることもあるが。そんなところも含めて、生きたゲーテの面影を生き生きと伝えているのが本書の魅力である。エッカーマンは他に目立った業績を残していないらしいが、この書物だけで十分お釣りが来るのではないか。ゲーテ本人の著作ではないが、関係書として、興味深く読ませられた。

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